【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「ミランの新機軸4-3-1-2で本田の生きる道は?」
しかし、4-3-1-2採用でサイドアタックというポジションがほぼ消滅したあと、彼に残されたポジションはトレクアルティスタ(トップ下)しかない。言うまでもなく、それは彼本来のポジションでもあり、彼はクラブでも代表でも、長きに渡ってトップ下でプレーしてきた。欧州で彼がその名を知らしめたのも、このポジションで、だった。
ならば、「本田が彼本来のトップ下に戻る。全てはそれで解決するではないか」と思われるかもしれないが、物事はそうは簡単にはいかない。
まず、ミランのこのポジションには、すでにジャコモ・ボナベントゥーラがいるからだ。ビッグネームではないが、すでにこのポジションで結果を出してきているし、プレーのビジョン、謙虚さ、自己犠牲の精神と、持っている武器も本田とほぼ同じである。
また、イブラヒモビッチにも注意しなければならない。今、ミランはどんな手を使ってもでも、彼をミランに呼び戻そうと必死になっている。
そのイブラヒモビッチは、型にはまらない動きをするストライカーだ。ラインとラインの間でプレーし、自由に動けるスペースを探す。ということは4-3-1-2の場合、トップ下として置かれる可能性が大いにある。
とにかく本田は、新シーズンでもライバルには不自由しないということである。もちろんビッグクラブならば、それは当たり前のことなのだが……。
それでも、本田のことを知っている私は、実はそれほど心配してはいない。本田がミランに来てから、実に多くの監督が来ては去っていったが、その誰もが本田のことを評価し、信頼してきたからだ。ミハイロビッチも多分、その例に漏れることはないだろう。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
協力・翻訳:利根川晶子
Marco PASOTTO/Gazzetta dello Sport
マルコ・パソット
1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。