昔ながらの趣が感じられる内子座の内部。

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愛媛県の西部、喜多郡内子町という人口1万5000人程度の町にある「内子座」をご存知ですか? 来年でなんと、創建100周年を迎える芝居小屋のことで、国の重要文化財にも指定される予定の場所です。

さすがの風情が漂う内子座。という私も、実はつい最近までその存在を知らなかったのですが……。内子座は大正5年、地元の芸術や芸能を愛する17名の有志によって建てられた後、老朽化で取り壊しになるところを、住民の熱意によって復原。昭和60年に劇場として再出発したんだそうです。

内子町長・稲本隆壽さんの「何もしなかったら駐車場になっていたかもしれない場所ですが、みなさんの応援で立て直せました」とのお話からも、内子座が地元の方々に愛され、大切にされてきたことがうかがえます。

内子座では、これから100周年に向け、様々な催しを予定しているとのこと。その詳細が発表されるというので、先日行なわれた「内子座創建100周年記念事業」記者発表を取材してきました!

記者発表に登壇したのは、狂言師の大蔵流・茂山千三郎さん、和泉流・野村万蔵さん、そして俳優・ダンサーの森山未來さん。

え、森山さん? しかもダンサー? と不思議に思った方もいるかもしれませんね!? 森山さんといえば、やはり俳優という印象が強いと思いますが、特に近年はダンサーとしてもご活躍中。2013年10月から2014年10月までの1年間は、文化交流史として、イスラエルのダンスカンパニー等で活動を経て帰国されました。

実は、昨年の帰国後に森山さんを取材する機会があったのですが、イスラエル滞在中はダンスに明け暮れる毎日だったとか。俳優さんというより、すっかりアーティストのような独特の存在感を放っていました。この日も同じオーラが!

そんな森山さんは『内子座創建100周年記念事業』のため、本日、12日から内子町に一ヶ月滞在し、自ら企画した滞在型創作ダンス公演をすることになっているのです。あえて滞在型の創作に取り込む理由については、こんなお話を。

「1年間、日本の外でクリエーションやパフォーマンスをしてきて、そこにいる人の空気を受けて、作品が出来上がることを感じたんです。日本でも都市部と地方、場所が変わることで作品の空気感が全部変わってくる。今回は1ヶ月滞在して、町の人たちともしっかり関わりながら、作品を作れればいいな、と。すごく楽しみです」

公演する演目は、太宰治の『駆込み訴え』をベースに制作した「Judas, Christ with Soy」という作品。イスラエル人アーティスト、エラ・ホチルドさんと共に、既にイスラエルで公演したことがある作品だそうですが、「もともと20分の作品でしたが、今回はいろんな要素を含めて60分くらいの作品にしたいです。いいパフォーマンスは作品として残していくべき。内子ではじまったこの作品を次に繋げていけたら」と森山さん。

7月11日、12日に内子座で開催が決定している同公演のチケットは、10分で完売! という人気ぶり。とはいえ、この公演以外に、ワークショップなどの予定もあるかも? ということなので、気になる方は内子座のFacebookを是非、こまめにチェックしてみてはいかがでしょうか。

さらに! 森山さんの公演以外にももちろん見どころは盛りだくさんです。流派の異なる狂言師の茂山さん、野村さんによる「東西狂言の競演」も、とても興味深いもの。

万蔵さんのお父様にあたる人間国宝・野村萬さんの狂言を15才くらいときに初めて見たという茂山さんは、「恐いと、恐怖感を持ちました。というのも、うちの父は笑いさえあればいいと、適当な狂言をやる人間でしたから(笑)。逆に万蔵くんはうちの父の狂言を見て“ふざけた狂言しやがって!”と思ったと思いますが(笑)」なんてお話も。

野村さんは「そんなことはないですよ(笑)!」と返していましたが、大蔵流と和泉流、流派によっての違いは大きいようで、「東西狂言の競演」が、貴重なものになること必至です。

ちなみに、茂山さんは内子町の小学生を対象に「茂山狂言クラブ」を発足。現在、小学2年生〜6年生の31名が100周年の記念公演に向けて練習に励んでいるそう。その他にも、「内子座創建100周年記念事業」では野村万蔵さんが、ウッチャンナンちゃんの南原清隆さんらと行なう「現代狂言」など、今年から来年10月にかけてお楽しみ公演が目白押しです。

「あの舞台に立ちたいと思わせる力がある」(茂山さん)、「今も生きている、交流していく空間というのを感じた」(森山さん)というように、100年続く内子座の魅力は、いつか体験したいものです。内子町のホームページでは、内子座の内部の写真などがいろいろ見られるので、まずはバーチャルで楽しむのにおすすめですよ!