どこが魅力!? 絶景マニアが「絶景道」ばかりを掲載した写真集

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「この道を行けばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる」アントニオ猪木が引退時に披露した詩、『道』の一節です。どんなに険しい道だとしても、迷わず突き進んでいきたい!でもその道が絶景だったら、なお良いんだけどなぁ……。

というわけで、少し風変わりなコンセプトの写真集をご紹介しましょう。「株式会社パイ インターナショナル」が5月18日より発売しているのは、その名も『人生一度は行ってみたい絶景道』(税別1,800円)。

タイトルが全てを物語ってしまっていますが、やはりその魅力は“画”で伝えたい。まずは、表紙をご覧ください。

……どうですか。まぎれもなく、絶景道でしょ! これ、ネバダ州の直進道路写真なんです。
「実は、全く有名な道路ではありません。ただ本のコンセプト通り、“美しい風景写真”として成立したカッコいい一枚だと思います」
お答えいただいたのは、この写真集製作を主導した同社の諸隈氏。氏がフェイバリットに挙げる“絶景道”が、そのまま表紙となっています。
「元々、クルマやバイクなど乗り物が好きだったのですが、それとは全然関係ないしなぁ……。仕事をしている時に突然、『絶景道を写真集にしてみたらどうだろう?』とアイデアが湧いて出た、という感じです(笑)」(諸隈氏)

このひらめきで全てが始まり、結果、写真集には世界の魅力的な「道」が58も掲載されました。果てしなく続く、まっすぐな道。信じられないような、山奥の断崖絶壁の道。ヘアピンカーブが連続する山岳道路。海上を延々と10キロメートル以上走る橋の道。
「フォトエージェンシーさんの画像を、際限なく見まくりました。美しい風景写真として成立し、それでいて道が入った絶景写真を基準にセレクトしています」(諸隈氏)
もちろん「ステルヴィオ峠」や「トロルスティーゲン」など、ドライビングロードとして人気の“定番”も漏らさず掲載。

そんな中、個人的にグッと来た絶景道を以下にご紹介させてください。
●ナミブ砂漠
世界遺産に認定されている、アフリカ南西部ナミビアの大西洋側にある、ナミブ砂漠。北はアンゴラの国境付近から、南は南アフリカの北端まで面積は約50,000キロ平方メートルにわたる。赤色の砂が美しい砂漠は、約8,000万年前に生まれた世界最古の砂漠と言われている。

●ウユニ塩湖
ボリビア西部ウユニにある塩の大地。広大な湖(約11,000キロ平方メートル)の周辺には、アンデス山脈がそびえ立つ。11月後半〜3月の雨季には表面の水に太陽光が反射し、鏡のような美しい姿に。神秘的な光景は「天空の鏡」と称される。

●ラピュタの道
熊本県の県道149号と339号が通る阿蘇北外輪山の端辺原野をつなぐ道路「市道狩尾幹線」、通称「ラピュタの道」。本来は牧草を運ぶために使われる農道だが、道から眺望できる景観が「天空の道」と呼ぶにふさわしい絶壁の大絶景で、ジブリアニメ『天空の城ラピュタ』にちなんでその名がついた。雲海が発生すると曲がりくねった道が雲の上に浮かんで見え、まさに“天空の道”。

●ハレアカラハイウェイ
ハワイ州マウイ島のハレアカラハイウェイは、島の最高峰・ハレアカラ山(標高3,055メートル)へと登る山道。古代ハワイアンが聖地として崇めた神聖な山の中腹、牧草地が広がる大地を左右に蛇行しながら上りつめていく。

●エアーズロック
オーストラリア大陸にそびえる世界最大級の一枚岩。ウルル・カタジェタ国立公園内にあり、一周できるサーキットドライブと遊歩道がある。陽光に合わせて刻一刻と変化する神秘的な姿を目前に見ることができる。

……どうですか!? まさに、「絶景道」としか表現できない写真群たちでしょう! 

いやぁ、グッと来ました。惹かれます。でも、なぜ惹かれちゃうのか。絶景道の魅力って、何なんでしょう?
「それは、この写真集を見ていただける方々の印象に委ねられると思います。個人的には『旅=移動』とイメージしており、道は旅における移動の象徴のように感じているので魅力を感じるのかもしれません」(諸隈氏)

ちなみにこの写真集、実は後半部分も面白い。様々な映画、文学、小説に登場する「名景道」の数々を、写真付きで紹介してくれてるのです。『ローマの休日』における「ローマ・共和国広場」や『おくの細道』の「羽黒山」、「星の王子さま」の「バオバブ街道」などなど……。
●「ラ・マンチャ地方の風車」(『ドン・キホーテ』から)
10基以上の風車が並ぶ丘からの眺望は絶景で、丘の道を上った高台からは、一面に広がる荒涼とした大平原が望め、地平線まで360°見渡すことができる。

この写真集、裏表紙にはフランシス・ベーコンによるこんな語録が引用されていました。
「人生は道路のようなものだ。一番の近道は、たいてい一番悪い道だ」
決して慌てず、遠回りしたっていいじゃないですか。景色を楽しめるような余裕こそ、実はいちばん欲しいのです。
(寺西ジャジューカ)