新しい働き方 「OLタレント」ってなんだ?

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近年、YouTuberなど新しい働き方をする人が増えている。そんな中、坪井安奈さんは「OLタレント」という新しい働き方に挑戦している。「OLタレントって?」と疑問に思う人がほとんどだろう。それもそのはず。OLタレントは、坪井さんが自ら編み出した新しい職業なのだ。坪井さんは株式会社グラニで、PR担当としてIT業界誌『Grand Style』の編集長を務めながら、なんとタレント活動も行なっている。今回はそんな坪井さんにいろいろなことを直接聞いてきた。

まずは「OLタレント」について聞いてみた。

【OLタレントとは】


――(ソーシャルゲーム会社)株式会社グラニ所属ということで、もちろん会社員としてのお仕事があるわけですよね。OL業の一方、タレント活動ではどんなことをされているんですか?

「将来的に一番やりたいことはお芝居で、直近では『あしたになれば。』という映画にも出演しています。ただ、今は仕事を選べるような立場ではないので"面白そう!"と思う仕事であれば何でもやりますね(笑)。昨年は『週刊プレイボーイ』で水着グラビアもやりましたし、今年はゲーム『神獄のヴァルハラゲート』のテレビCMにも出演しました。他には、バラエティ番組に出演したり、舞台挨拶の司会をしたりと、仕事は多岐に渡っています」

――OLタレントって具体的にはどうやって両立しているんですか?

「基本的には、平日は会社に出社し、タレントの仕事があるときは適宜そちらに向かう形ですね。例えば取材があったら2時間外出して、その後に会社に戻るとか。」

確かに今はパソコンひとつで仕事が出来る時代に違いない。しかし、「会社に来ないのか」と社内で反発もあるのでは?

「今のところ社内での反発はないですが、両方の仕事をきちんとこなすよう気をつけています。会社では、社員と積極的にコミュニケーションをとったり、しっかりと成果で見せることを意識していますし、入稿期間中は土日や祝日でも関係なく、時には朝まで会社にいたりもします。また、ロケや撮影などで会社にいけない日には、ロケで何を感じ、今後の仕事にどう生かそうと思っているかなど社内に報告するまた、ロケや撮影などで会社にいけない日には、ロケで何を感じ、今後の仕事にどう生かそうと思っているかなど社内に報告するようにしています。
先日、映画出演が決まったことも社内で報告したのですが、社内で喜んでくれる声もたくさん届いた時は本当に嬉しかったですね」

確かにそのようなひたむきな姿を見せられたら文句は言えないだろう。実際に坪井さんが編集長として手掛けている業界誌を見させていただいたが、そのクオリティの高さには驚いた。出演者のヘアメイクや撮影などもプロを呼んで行なう徹底ぶりだ。
ところで、OLの仕事がそこまで忙しいと、タレントとして大切な"美"を保つことは大変なのでは?とお節介ながら尋ねてみた。

「確かに美容面ではいろいろと工夫をしています。職業が2つあると一番大事な"睡眠"がどうしても短くなるので、いかに時短して美容のための時間を作るかが勝負。会社ではダイエットスリッパを履き、デスクにはスチーマーを置いて、顔にスチームを当てながら仕事しています。家でも、半身浴をしながらブログを書き、パックをしながら髪を乾かしたり。1分や2分でも惜しいんです(笑)。また、私の会社はフリードリンク制度があって常時20種類以上のドリンクが自由に飲めるんですが、ジュース類は一切飲まず、基本的にはお茶や朝の豆乳ドリンクだけ。飲食面でも気をつけるようになりました。社内でも、甘いものを我慢していたりすると、社員が「なんか撮影あるの?」「がんばってね」と励ましてくれたりもします(笑)。美容のためにお金をつぎ込んでいた時期もありましたが、結局は日々の小さな積み重ねだと思います。今では何かをしながら美容を心がける"ながら美容"にすっかりハマっていますね」

タレント活動と聞くと華やかな印象を受けるが、このような地道な努力があってこそのことなのだ。

【賛否両論が起こることに対して】


しかし、このように努力をしていても、新しいことを始めようとする際にはやはり賛否両論巻き起こるはず。そこについて、坪井さんはどう考えているのだろう。

「実際、この肩書きになってすぐにインタビューを受けたときには、Twitterや2chなどのネット上で賛否両論が巻き起こりました。見た瞬間はもちろん傷つきました。でも、批判から「そう見えるんだ」と受け止めて改善すべきことって、少なからずあると思うんです。また、とある2chのスレッドタイトルを見たときには、“そのつもりではないんだけどな”と思う一方、皆がついクリックしてしまうようなタイトルのつけ方は、(編集者目線では)上手いなぁと関心してしまったりもしました(笑)」

――ネットで自分に対する意見は積極的に見ますか?

「今お話した理由から、エゴサーチは積極的にします。批判は、無関心よりも大きな一歩だと思うんです。少なくとも、その人は私を批判するために貴重な時間を使ってくれているんですから、むしろ感謝すべきことだと思っています。そう思ったら、批判を見ても結構冷静に受け止められます。また、周りの社員もこの働き方を理解してくれたり、応援して取り上げて下さるメディアの方もいますから、頑張ることが出来ます」

【転機となった大学生時代】


なるほど、どうやら批判も自分の成長に繋げるらしい。
ところで「OLタレント」として活動する坪井さんの原点はどこにあるのだろうか。話を聞いてみると大学生時代にあるらしい。

「入学した慶應のSFCには、起業する人やNPOを運営している人など、学校外でも積極的に活動している人が多く、(大学入学まで)今まで勉強しかしてこなかった自分を歯がゆく感じていました。そこで、私は表に出て発信する事をしてみたいと思い、そこからオーディションを受けて、テレビ番組の女子大生リポーターや学生キャスター、横浜ベイスターズ(球団名は当時)のチアチームに所属したりと、学校外でも活動するようになりました」
これらの経験を通して、発信する面白さを感じた坪井さんは小学館に入社した。

小学館時代の経験】


しかし、その小学館を坪井さんは1年9カ月で退職。経緯も含め、小学館時代のことを詳しく伺ってみた。

――小学館では何をされていたんですか?

「雑誌の編集者として働いていました。大変だったことは、終わっても終わっても次の締め切りがあり、企画を出し続けなければならないことですね(笑)」

――では、編集の仕事を通じて一番身についたことは?

「一番は、スピード。それから、スピードとクオリティのバランスを意識するようになりました。時間は有限の中で企画を生み出していかなければなりません。面白いアイデアを考えるのにも、期限と折り合いをつける必要性があるとも知りました。また、編集の仕事は"ここからここまで"と決まった仕事がなく、同時並行の作業が常に発生するので、マルチタスクも苦ではなくなりました」

どうやら小学館での経験は今のOLとタレント2つの仕事をこなす上で生きているようだ。しかし、そんな小学館を坪井さんは2年足らずで辞めてしまう。大きな決断に迷ったのではないかと思ったが、どうやら決断は早かったらしい。

「25歳の誕生日を迎えて、ふとこの先を考えたんです。結婚や出産など今後の人生を考えると、がむしゃらにやりたいことが出来るのは今しかないと思いました。そこで、(学生時代の)出演側と(小学館時代の)制作側の両方を経験したからこそできる働き方はないかと考えたんです」

――それは小学館に勤務したままでは出来なかった?

「実は、ダメ元で聞いてはみたのですが、やはり難しいとのことでした。一般的に、ほとんどの企業が副業禁止ですよね。そんなときに、丁度現職のグラニの役員と会う機会がありました。そこで自分のやりたいことを話してみたら、"面白いね"とOLとタレントの二足のわらじを認めてくれるとのことだったのですぐに決断し、退職願を出しました」

この退職がきっかけで「OLタレント」が誕生したというわけだ。

【今後の抱負は】


――今後どうなりたいという夢はありますか?

「そうですね。まだほとんどの企業が副業を禁止していますが、今は個人でも活躍できる手段が沢山ある時代。個人の活動を制約しないことで、結果的に個人としても企業としてもwin-winの形を作れる可能性は広がっていると思います。私自身がそのロールモデルにもなれるように努力し、少しでも社会を変えていけたらと思いますね。年老いてもなお、さまざまなことがチャレンジ出来る人でいたいなと思います」
どうやら落ち着く予定はないらしい。これからも常に走り続ける坪井さんから目が離せない。