18時間にわたる緊張を経て、ビー・タエチャウボル氏の顔に笑顔が戻った。1日午後、同氏はミランの買収に関して話をまとめるために、シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長の邸宅を訪れている。

当初、電話がなかったことで、タエチャウボル氏の周辺には緊張が高まっていた。

4月30日という日は、買収をまとめるうえでの事前合意に関する期限の最終日だっただけではなく、ミランの株式51%を取得するための約5億ユーロ(約673億円)の資金につながる銀行への保証も切れる日だったからだ。特にUAEの「Ads Securities」は、14時(現地時間)をデッドラインとしていた。

だが、ベルルスコーニ氏は最終的な兆しを出していなかったのだ。むしろ、一晩おいただけではなく、翌日も時間をかけて考え、アドリアーノ・ガッリアーニ代表取締役とランチをともにしていた。

その間、アドバイザーや法律関係者は、それぞれの役割に関するあらゆるチェックを行っていた。そして午後、ベルルスコーニ氏は待ち望まれていた回答を出したようだ。売却を了承したようである。

バルバラ・ベルルスコーニ氏が出した発表も、その方向で解釈すべきだろう。バルバラ氏は先日まで反対していた取引の邪魔をしないと明かしている。3月5日の交渉の際、バルバラ氏は交渉のテーブルにつかず、あいさつするにとどまっていた。だが、先日29日にタエチャウボル氏が再びベルルスコーニ会長と会ったときには、交渉のテーブルに同席している。

まだ正式な発表はない。だが、タエチャウボル氏周辺から伝わる楽観は、これ以上のサプライズがないことを示している。遅くとも2日には、発表があるはずだ。つまり、2015年5月2日は、分水嶺となる一日になるはずである。1986年2月20日に、ミランを破産から救い上げたベルルスコーニ氏が、29年2カ月12日でその時代に終止符を打つのだ。