村上世彰被告(資料写真:常井健一)

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異例の逮捕直前会見で投資の世界から“退場”した村上世彰被告の転落劇から1カ月──。

 農林中央金庫や石油資源開発など大口の機関投資家の相次ぐ「引き上げ表明」で、同被告が先導し、4400億円の運用資産を誇っていた投資ファンド(通称・村上ファンド)の保有株の現金化に奔走(ほんそう)する状況が、4日までに関東財務局に提出された大量保有報告書から浮き彫りになった。

 12.05%保有していた東京ソワール株は、大半を東京ソワールが行う自社株公開買い付け(TOB)に応募し、6月23日までに保有比率は0.2%となった。売却額は12億7200万円だが、取得に12億8600万円を投じてきたため、残りを売却しても運用益は1000万円強にとどまる。

 47%保有していた阪神電気鉄道株は、阪急ホールディングスによるTOBに応募し、保有比率は6月27日時点で0%になった。約1300億円を投じ、TOBで約1800億円を得たため、運用益は約500億円。

 日清紡が先行したTOBに、同ファンドも“対抗的TOB”を実施して争奪戦を繰り広げた新日本無線株式は6月27日、保有する8.57%のうち7%分を約22億円で、日清紡に譲渡した。5月10日時点で5.79%保有していた東京放送(TBS)株も、同月中旬以降は売却し続け、6月27日までに保有比率を4.98%に低下させた。

 そのほか村上ファンドが保有する10以上の主要銘柄の多くが、事件発覚以前の株価水準に戻っていない。9.9%保有の松坂屋の5日の終値は発覚直前の6月1日の終値より92円(10.8%)安い758円、5.76%保有の中村屋は同67円(9.7%)安の625円だった。【了】