ようやく試験放送が始まったばかりの4Kテレビ。本放送は4年後の2016年に予定されているが、家電量販店の店頭ではすでに猛プッシュされている。

いったいなぜなのか? 国産中堅家電メーカーの4Kテレビ開発部門を率いているA課長に説明してもらった。

「4Kを強引にでも盛り上げようというのは、個々のメーカーの方針というより、いってしまえば“国策”に近いんですよね。世界市場をリードするアメリカでは4K試験放送が来年から始まるし、インターネットを介した有料の“クラウド4K放送”も予想以上のスピードで実現に向かっていて、今年中にも商業化されそうな勢いです。

4K放送はデータ量が格段に増えるので、単純に画質を追求するという方向性だけでなく、例えばライブコンサートやスポーツの有料中継で、4チャンネルのマルチアングルハイビジョン映像を同時に見るようなことも可能です。おそらく4K放送は、画質も内容も満足度の高い有料プレミアコンテンツという位置づけで広まっていくんでしょう」

“国策”だけに周辺国に負けるわけにはいかない、という事情もあるようだ。

「フルハイビジョン(HD)市場でサムスンなど韓国・中国メーカーに惨敗した日本の各メーカーは、今度こそ絶対に負けるわけにいかないんですよ。だから国も後押ししてくれるし、4K開発のためといえば、銀行もけっこうすんなり金を貸してくれるんです」(A課長)

試験放送では指定の番組が1日6時間程度、視聴でき、番組数も順次増えていく予定だ。しかし、「買うべきではない!」というのは、家電ジャーナリストのじつはた☆くんだ氏。

「国の旗振りもあって家電メーカーは4K一直線ですが、現実的に考えれば、少なくとも東京五輪までは現行のフルHDが放送の主流であり続けることは明らかです。テレビのみならずレコーダー、さらにはムービーカメラなどなど、関連商品を一気に4K化して単価をアップしたいメーカーに付き合う必要などない。技術が熟成され、しかも激安な極上のフルHD家電を今こそ買うべきなんです」

消費税も上がった今、“激安”とは気になる言葉。前出のA課長も4Kテレビの波でフルHDに価格破壊が起きているという。

「いずれにしても、動きだした列車は止まりません。すでに北米市場では、4Kテレビへの規格移行が急激に進行中で、60インチ以上のフルHDテレビの価格崩壊は目を覆(おお)わんばかりです。例えば、シャープの60型はなんと7万円前後。こんなんじゃ、もうフルHDテレビなんてバカバカしくて作っていられません」

しかし、フルHDテレビの価格破壊は消費者にとっては嬉しい情報でもあり、この機会を逃す手はない。結局、4Kテレビは「今、買うべきでない」ということ?

「というより、言ってしまえば4Kなんて、しょせん“腰かけ”にすぎない可能性すらあります。すでにNHKが公言しているように、将来的には8Kというスーパーハイビジョン放送が実現する見込みですからね」(じつはた氏)

8Kが実現するのは、2020年東京五輪の頃と予想されている。ただ、そうなるとその先は16Kや32Kが来るのでは?

「そこまで心配する必要はありません。フルHDでも『十分キレイじゃん』と思う人が多いと思いますが、4Kの画質はその4倍。画面ギリギリまで近寄っても、80インチクラスまでなら、ほぼ粒子を感じることはありません。これが8Kになると、120インチクラスまで広げても、普通の人間には粒子を感じられなくなる。120インチというと横幅260cm以上の大画面ですから、巨大スポーツバーを開業する予定でもない限り、これ以上のサイズのテレビは一生使わないでしょう」(じつはた氏)

つまり家庭用テレビの“終着駅”は8Kのスーパーハイビジョン。今が底値投げ売りのフルHD家電を2020年まで使い、その後8Kに切り替えるというのが賢い選択というわけだ。

(取材/近兼拓史)

■週刊プレイボーイ27号「W杯&ボーナス商戦の“敗残兵”『フルHD家電』を激安ハゲタカ買いだ!!」より