巷で論争が続いている「糖質制限食」。2型糖尿病の食事療法としての有用性をめぐる議論だったのが、いつしか痩身ダイエットにまで拡がった次第。ここらで原点に戻り食事療法としての糖質制限食をみてみよう。

 1月中旬、日本内科学会の英文誌に北里大学糖尿病研究センターから糖質制限食vsカロリー制限食に関する報告が掲載された。試験対象は、同センター外来に通院する2型糖尿病患者24人(平均年齢63.2歳、うち男性が12人)。平均BMIは25.8で、糖尿病の指標となるHbA1cは平均7.6%である(6.5%以上で糖尿病と診断される)。

 被験者のうち12人には従来通りのカロリー制限食(体重1キログラム当たり25〜30キロカロリー)を、残りの12人には糖質制限食として1食の糖質量を20〜40グラム、1日の糖質摂取量70〜130グラムに制限してもらった。ちなみに、糖質制限食群には、タンパク質や総カロリー摂取量の制限は課していない。被験者は開始時と、2カ月後、4カ月後の3回、指導を受け食事療法の順守を確認している。

 実は、日本人の被験者を対象にした糖質制限食vsカロリー制限食のランダム化比較試験は初。その結果、試験開始6カ月後に糖質制限食群でのみ、HbA1cが有意に改善したのである。しかも、改善幅はカロリー制限食群よりも大きかった。中性脂肪値も糖質制限食群でのみ、有意に改善している。治療満足度に差はなかったが、「治療の負担感」は糖質制限食で軽い傾向があった。

 昨年、米国糖尿病学会は従来の懐疑的な態度から一転、糖質制限食を食事療法の一つとして認めた。糖質=主食制限による高タンパク・高脂質食が、腎機能や脂質代謝の悪化につながるのではという懸念が払拭されたためだ。

 今回の試験でも腎機能の悪化や脂質異常は認められなかった。研究者は、長期の大規模比較試験の必要を認めながらも「現時点で、カロリー制限食に対するサブ的な食事療法として糖質制限食は安全で有効だ」と結論している。糖尿病の食事療法も自分の好みを考えながら選べる時代になったようだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)