世界的権威レイ・カーツワイルが、グーグルで目指す「究極のAI」

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昨年、AI(人工知能)研究の分野で世界的権威のひとりとされるレイ・カーツワイルグーグルに加わったが、同社が長らくAI研究を進めてきたことを考えると、これはそれほど意外なことでない。



しかし、カーツワイル氏が「ハードなAI(人工物に意識や精神を生じさせることができるとする考え方)」の立場をとる代表的な研究者であることから、一部にはこの動きに注目する人たちもいた。また、グーグルが人工頭脳開発のために「ディープ・ラーニング」(日本語版記事)と呼ばれるニューラルネットワーク技術の研究を進めており、カーツワイルの後にはニューラルネットワークの第一人者であるジェフリー・ヒントンも雇い入れている



これらの動きを考え合わせると、グーグルは誰よりも真剣にAI開発に取り組むつもりのようだ。これはスリリングだが、末恐ろしいことでもある。



WIREDでは、そのカーツワイル氏に話を聞くことができた。この記事では、そのインタヴューのなかから彼のグーグルでの研究やそのヴィジョンについて、いくつかのQ&Aを抜粋して紹介する。(カーツワイル氏は米国時間23日にグーグルのGoogle Hangoutで行われたウィル・スミス主演の映画『After Earth』をめぐるセッションのモデレータ役を務めた。このインタヴューはそのセッションの後に行われた。)



──いましがた終わったセッションのなかで、これまで数多くのSF映画に出演してきたウィル・スミスは、あなたの著書を枕元に置いていると言っていました。あなたはSFをどうみていますか。



カーツワイル SFは、どんなことが可能かを憶測するための素晴らしい機会です。SFは未来学者としてのわたしに、さまざまなシナリオを与えてくれます。SF小説の作家や映画の制作者は、現実的なタイムフレームをあまり気にかける必要はありません。例えば『After Earth』のなかでは、宇宙に出かけた主人公らが1,000年後に地球に戻ってくることになっています。その間に生物は大きな進化を遂げ、動物はまったく異なる姿になっています。ただし、そんなことは現実的ではありません。また、暗い未来の姿を描いた映画も少なくありませんが、これは科学の生み出す危険が恩恵よりもはるかに大きいとみられているためで、またおそらくそのほうがよりドラマチックなストーリーになるからでしょう。人工知能を扱った映画では、AIを大変に知的だけれど人間の感情に関する重要な特質を欠いた存在、そのためにとても危険な存在になるものとして描いている作品が多くあります。



──未来を予言する上で重要なことはなんですか?



カーツワイル 成功の鍵はタイミングにある、ということを30年ほど前に気づきました。わたしのところには新しいテクノロジーに関するたくさんの提案が寄せられてきますが、そのうちの95%は十分なリソースが与えられれば主張通りのものができあがるはずという提案です。同時に95%のプロジェクトが失敗に終わりますが、それはタイミングが間違っているからです。その点では、15年ほど前にサーチエンジンを開発したラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンのふたりは、いいタイミングで絶好の場所にいいアイデアを携えて登場した、といえるでしょう。



──あなたはサーチエンジン(の登場)を予想していましたか?



カーツワイル ええ、1980年代にまとめた書物『The Age of Intelligent Machines』のなかにそうしたことを書いていました(同書籍は1990年に刊行された)。









──あなたは、いずれ自分がサーチエンジンの会社で働くことになると予想していましたか?



カーツワイル いえ、それこそまさに予想がつかない事柄といえます。スタンフォード大学に籍を置くふたりの若者が検索の世界を支配することになると予見するのは、とても難しいことでしょう。しかし、情報処理技術の単価あたりの処理能力の向上といった重要な指標を調べれば、その軌跡が驚くほどなめらかな指数関数曲線を描いていることがわかります。単価あたりの処理能力の増加は1890年以来、とてもなめらかなカーブを描いて上昇してきています。さまざまな出来事があっても、このペースは常に変わっていません。わたしは2050年にこのカーブが天井を打つと予想しています。そして2013年のいま、われわれはまったく想定通りの地点にいることも事実です。



──あなたは現在、グーグルで何をしているのですか?



カーツワイル グーグルでのわたしの使命は、社内のメンバーと協力し、自然言語理解のためのシステムを開発することです。検索はいまや単なるキーワードの発見という概念を超えるものになっています。ただし、膨大な数のウェブページや書籍がそれぞれどんな意味をもつかといった内容(semantic content)までを把握できるわけではありません。例えば、ある人がブログ記事を書けば、そこには何らかの主張が込められているはずで、それは単なる言葉の羅列ではないのです。われわれは、この内容の意味を理解できるようなコンピューターの開発を目指しています。わたし自身、これは可能だと考えていますが、実現すれば、人々はより複雑な質問をしてコンピューターから答えを得ることができるようになるはずです。



──グーグルでは、ジェフ・ディーンの人工頭脳「Google Brain」開発プログラムにも参加していますか?



カーツワイル そうですね、ジェフ・ディーンも共同研究者のひとりです。彼は主任研究者を務めており、われわれはディープ・ラーニングに関わる彼のシステムや技術を利用するつもりです。わたしがグーグルにいるのは、そうした研究リソースがあるからです。また、グーグルにはナレッジグラフや非常に優れた構文分析技術など多くの最先端技術がありますが、これらは自然言語理解のプロジェクトのために本当に必要なものです。わたしのグーグルでの成果は、こういった最新技術の存在なしに語ることはできません。



──開発したシステムが複雑な自然言語を本当に理解できるようになったとき、それは「意識」であると言い切れますか?



カーツワイル そう呼ぶでしょう。わたしは以前から、2029年にはそのようなシステムができると予想してきました。そして、このシステムは単なる論理的知能(logical intelligence)ではなく、感情的知能(emotional intelligence)を意味します。つまり、ふざけたり、ジョークを言ったり、魅了したり、何かを愛したりし、人間の感情を理解するものです。実際、われわれの研究でもっとも複雑なのは、この部分です。これは今日のコンピューターと人間を分かつものですが、わたしはこの溝が2029年には縮まると考えています。



※この翻訳は抄訳です。




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