エスカレーターの追い越し、大阪ではなぜ左側?

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今や多くの商業施設や駅に設置されているエスカレーター。

関東方面の人の多くは左側に立って、右側を優先追い越しにしているらしい。

ところが、大阪人はその真逆を良しとしていて、右側に立ち左側を優先追い越しにしているのだ。

これはいつから、またなぜ違いが生まれたのだろうか。

実際にエスカレーターの前に立ってその様子を観察してみた。

検証に出向いたのはビジネスマンや買い物客、旅行者が行きかう大阪駅。

確認するまでもなく、ほとんどがエスカレーター右側に立っている。

2人連れや3人連れも分かれて右側に立っている。

そこで中年のサラリーマンに声をかけてみた。

「え? エスカレーターが何? 俺は右に乗るで、右!!」とだけ答えて足早に去って行った。

これを大阪弁でいうと「いらち」。

「いらち」とはせっかちのことで、この「いらち」っぷりは歩くスピードにも現れていて早い。

国際交通安全学会が行った調査によると、大阪人の歩くスピードは秒速1.6メートルで日本一なのだという。

次に声をかけてみたのは20代の女性。

「利き手が右の人が多いからちゃうの? 右に立つとベルトが持ちやすいねん」。

なるほど、なかなか的を射た発言だ。

さらに取材をしていると40代の女性がこんなことを言ってきた。

「だいたい東京が間違っているねん。

世界的に右に立つのが正解で、外国ではな、左に立つのは田舎もんやと思われるねんで」。

実際に海外出身の英会話教室講師をやっているという男性に話を聞いたが、「確かにアメリカやフランスなどでは右側通行が正解です」とのこと。

どうやら大阪人は知らない間に国際ルールに合わせていたのか(笑)。

次に私鉄阪急電車の梅田駅に場所を移して再度エスカレーターを観察してみたが、やはりほとんどの人が右側に立っている。

ここで新たな情報をキャッチした。

60代男性が言うには「昔、阪急梅田駅が今の場所に移動した時にエスカレーター乗っていたら、急いでいる人のために左側を空けてくださいっていうアナウンスが流れていたような気がする」と。

これは本当か? そこで中高年の方々に片っ端から声をかけてみる。

昭和42年ごろにこのアナウンスを聞いたことがあるという人が多くいた。

そのほかにも「万博の年から急にアナウンスを聞きはじめた気がする」という1970年の万博説が浮上してきた。

万博開催時に国際基準に合わせた右立ち、左空けルールが制定されたというのだ。

ところで万博で普及したものといえば、阪急梅田駅に設置されている日本最大規模のムービングウォークだ。

そこで番外編として日本で初めて設置されたムービングウォークに関しても調べることにした。

ムービングウォークとは「動く歩道」とも呼ばれており、阪急・梅田駅になくてはならないものとなっている。

そしてこのムービングウォークもやはり右立ち、左空けルールになっている。

通りがかった30代女性に話を聞いたところ「え? 前の人が左を空けていたからやけど」となんとも簡単な返事。

前の人に倣うのは日本人ならではの感性だから納得はしたが……。

とにかく諸説あるものの、この文化は一体どこまで浸透しているのだろうか。

東京と大阪の真ん中あたりに位置する愛知県名古屋市出身の人に話を聞いたところ、左立ち右空けという大阪寄りではなく、東京寄りの意見が得られた。

大阪に少し近づいた三重県津市出身の人からもやはり東京寄りの意見が得られた。

それならば関西圏の滋賀県出身者に取材。

「近畿なのだからきっと大阪寄りだろう」とたかをくくっていると、なんと東京寄りという!おや、同じ関西圏でも違いがあるではないか。

では京都ではどうなっているだろうか。

ドキドキしながら電車に揺られること45分。

到着した京都駅には降りたつと、改札の外では多くの人がエスカレーターの左側に立っていた。

おお、東京寄りだ!調査結果、大阪人がエスカレーターの右側に立つようになったのは昭和40年代。

理由は「利き手優先説」、「国際基準説」、「阪急電鉄アナウンス説」、「万博アナウンス説」、「前の人にならえ説」など様々ながら右立ち左空けは大阪人のみの常識となっているようだ。

最後にこんな話も。

実は、エスカレーターの安全基準はステップ上に立ち止まっている場合を想定して設計されており、利用者が片側に立ってしまうとバランスを崩す場合があり危険。

そのため、現在歩行を禁止する呼びかけが少しずつ始まっている。

くれぐれも安全第一の利用を心がけていただきたい。



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