5月23日発売の松本育夫著『人の心に火をつける』(カンゼン)

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 どの社会でも組織やコミュニティを形成するうえで“リーダー”の存在は必要不可欠だ。サッカーで言い換えれば、それは“指導者”にあたる。

 では、いい指導者になるためにはどうすればいいのか。
 今回紹介する、松本育夫著『人の心に火をつける』(5月23日発売・カンゼン)には、世の中の指導者、ビジネスパーソンにとって目からウロコの人財育成論、人と組織を動かすチームマネジメントの極意が実践論をまじえて記されている。
  川崎フロンターレをJ1へ導き、サガン鳥栖のJ1昇格の礎を築きあげた情熱の指導者・松本育夫氏は、いい指導者になるための心構えを著書にてこう説いている。

「松本育夫ーサッカー=パンツ一丁ではいい指導者にはなれない」

 この言葉の真髄は何か。以下、松本氏の著書より一部引用する。

■「松本育夫−サッカー=パンツ一丁」ではいい指導者にはなれない

  いつの時代もサッカーの指導者はボールを中心に物事を考える。チームの勝利を目指し、選手の成長を促し、さまざまな困難に打ち克てる人間を育てようとする。究極、指導者の仕事は人間を作ることだ。
  私はサッカーと二人三脚の人生を歩んできたが、「松本育夫−サッカー=パンツ一丁」ではダメなのだと知った。自分からサッカーを取り除き、はたして何が残るか。選手として、監督として、どれほど輝かしい成果を残したところで、人間的な成熟に達していなければ虚しいだけだ。
  人との助け合い、目標に向かって団結する尊さ、ひとつのことに打ち込む集中力。サッカーを通じて学べることはいくらでもある。指導者はグラウンドで選手を鍛えつつ、それら内面の充実につながる事柄にも目を向けなければならない。サッカーでしか学べないことをできるだけ多く授けることだ。
  サッカーは人間の本質をあぶり出す。ある選手が目覚ましい成長を遂げたとすれば、そこにつながった要素がふだんの行動に表れる。単にプレーを称賛するだけではなく、起因する人間的な成長を見つけ出し、選手に気づかせてあげるといい。
  1968年のメキシコオリンピック、私はチームメイトの素晴らしい活躍により、銅メダルを獲得できた。あるとき「オリンピックのメダルをどう評価しますか?」と訊かれ、「メダルを獲るまでのあらゆるプロセスが人生に役立った」と答えている。

※『人の心に火をつける』P153-155より一部抜粋

■サッカーへの愛情と情熱を熱く語る男、松本育夫

  松本氏は、どんな人だろう!? 書籍の編集を担当した森哲也氏(フットボールサミット議長、サッカー批評編集長)に聞いてみた。

「本の中ですごく印象に残っているのは、『上、三年にして下を知り。下、三日にして上を知る』という松本さんの言葉です。監督が選手を観察するように選手もまた、その監督がどういう人なのかを観察している。しかも、監督の目が2つしかないのに対して、仮に50人の選手がいれば、100個の目で監督が見られている、という意味の格言ですね。そこで、小手先だけの指導をしようものならば、簡単に見抜かれて、誰もこの監督についていこうとは思わない。だからこそ、松本さんはひたすら選手とチームのことを本気で考え、自ら全力を尽くし、その上で選手にも全力を求める。サガン鳥栖の選手たちが今、一切の妥協なく全力でプレーしているのを見ると、間違いなく松本さんの指導が土台になっているのだと思います。この本には魔法の言葉も奇をてらったような指導論も載っていません。松本さん自身が試行錯誤して、成功と失敗を繰り返しながら磨き上げてきた普遍的なマネジメント論になっています。だからこそ、フツーの人にも参考になると思いますし、読んでいる方の心にも火がつけられるのではないかと思っています」

 確かに松本氏の著書には、単なるサッカーの指導書にはない、企業で働く人や部下を持つ管理職の人が読んでもタメになりえそうな言葉が散りばめられている。自分のやる気を上げたい、誰かのやる気を出させたいと思っている人は一度手にとってみる価値はあるだろう。

 また、松本氏は、現在発売中の『フットボールサミット第6回』にて新連載「炎の説教部屋」をスタートしている。70を過ぎても名伯楽のサッカーへの愛情と情熱は衰え知らず、ざまざまなサッカー時事問題を松本育夫節全開で熱く語っている。


『フットボールサミット第6回』(カンゼン)