「投げ技・大外刈り・乱取り」禁止の(呆)教育方針「“ゆとり柔道”なら止めたほうがマシだッ」
「“柔道のようなもの”を必修化と称して中学生に教える。柔道とはこんなものなのかという誤った理解を植え付けることになるのですから、心ある武道家なら穏やかではいられないでしょう」

 こう憤るのは、思想家にして合気道・居合道の段位を持つ武道家でもある内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授)。新学習指導要領の全面実施に伴い、この4月から中学1・2年生で武道が必修化された。6割以上の学校が柔道を選択しているが、安全性を懸念する教育現場では手探りの対応を余儀なくされている。

 静岡県教育委員会では、新学期を前に「柔道安全指導指針」を定め、県内の公立中学校に通知した。「柔道事故」が多いことを受け、防止を図るよう促したものだが、内容にはいささか面食らう。「大外刈りを取り扱わない」「投げ技を用いた試合は実施しない」などの計9項目が定められ、試合は座った状態で始まり固め技に限定されるのだ。田中潤・学校教育課長は「礼などの6つの基本技についても「あくまで例示であり、必ず全ての技を取り扱う必要はない」と明記した。

「もともとは安倍元首相が推し進めた教育改革の一環で、文科省も予算と権限を獲得できる好機と捉えた。中学校の武道場整備費や指導者招請などの事業に約60億円が使われています。ただ、民主党政権下の現在では文科省もそれほど熱を上げているわけではない。だから、現場からの不安の声が強くなってくると急遽“セーフティネット”として手引きを作成したんです」(文科省担当記者)

 前出の内田氏もアキレ顔でこう警鐘を鳴らす。

「礼節を教えるのが目的なら『礼儀』や『日本文化』といった授業科目を設ければいい。武道を手段に使うというふざけた発想をしちゃいけない。文科省、教育現場ともにやりたくない授業を、決まったことだからと続ける必要はまったくない。今からでも遅くはないから、おやめなさいと言いたいですね」