ポルトガル人指揮官、ジョゼ・モウリーニョのプレミア復帰を切望する声がイングランドで高まりつつある。もちろん火付け役はイングランドのメディアで、ビッグマウスと呼ばれるモウリーニョ監督の言動が格好のネタとなるのがその理由だ。

2007年のFAカップ・ファイナルでマンチェスター・ユナイテッドを退け優勝した試合後のインタビューでは、開口一番にペットのヨークシャー・テリアをめぐり警察に逮捕された一件について語り出した。狂犬病対策で注射をすべく担当官から犬の引き渡しを求められたが、これを拒否して犬を逃がしたために、モウリーニョは公務執行妨害で逮捕され、愛犬の行方について様々な憶測が飛び交っていたのだ。FA杯決勝戦には礼儀と敬意が求められるものだが、この時のモウリーニョの談話は”My Terrier’s Not A Terrorist (私のテリアはテロリストじゃない)”とセンセーショナルな見出しで報じられている。ある時は英雄、またある時は悪人として常に注目を浴びてきた強烈な個性の持ち主モウリーニョは、今時希少な存在なのだ。


言うまでもないことだが、優勝請負人としての期待値も非常に高い。彼のサクセスストーリーは、ポルトガルの名門ポルトの再建から始まる。彼らを欧州王者へと導いた後チェルシーへ引き抜かれ、そこでプレミア優勝2回、FA杯優勝2回を含む多くのタイトルを勝ち取った。

イタリアに渡ってからもインテルで優勝トロフィーを集め続け、2009−10シーズンにはセリエA、コッパ・イタリア、そしてCLとイタリア史上初のトレブルを達成。現在指揮を執るレアル・マドリーでもコパ・デル・レイで優勝している。華やかな経歴はもちろんのこと、選手のやる気を引き出して揺るぎない忠誠心を育ませる才能にも長けている。ジョン・テリーやフランク・ランパードが彼の下でワールドクラスの選手に成長したのを見れば一目瞭然だろう。指導を受けた選手たちのモウリーニョに対する信頼は絶大だ。

その名将モウリーニョが、今シーズン限りでレアル・マドリーを去ると噂されている。次に行くのはいったいどこなのか? 終わりなきラブストーリーとして古巣チェルシーへ復帰するか、あるいはサー・アレックスが引退した場合のマンチェスター・ユナイテッドか。タイトルから見放され続けるアーセナルや来季のCL出場権を手に入れそうなトッテナム・ホットスパーに行く可能性も考えられる。いずれにしろ、モウリーニョは知っているのだ。たとえどこに行こうとプレミアリーグが心の故郷であることを。そして、多くの人々がモウリーニョのプレミア復帰を待ちわびていることを。

【鷲津正美/ Masami Washizu】