こんなバーレーンに勝っても威張ーれーん!

22日に行なわれた男子サッカー・ロンドン五輪アジア最終予選のバーレーン戦。バーレーンの首都マナマに乗り込んだU-22日本代表は、バーレーンを2-0で撃破。アジア最終予選は4チーム×3グループでそれぞれリーグ戦を行ない、各グループの1位が本大会に出場する仕組み。グループ2位となってもまだ本大会出場のチャンスはありますが、2位チーム同士でのプレーオフを勝ち、なおかつアフリカ予選組とのプレーオフに勝つという長い道のりが待っています。実質的に「予選突破はグループ1位だけ」と考えておきたいところ。なかなか緊張感のある予選だけに、アウェーで勝点3を取れたことは幸いでした。

それにしても残念だったのはバーレーンの出来。前の試合から大きくメンバーを入れ替えたこともあり、何度もお手玉するGKなど「本当にこの人でいいの?」と思う選手を起用。集中力を欠く場面も多く、雑なファウルや審判への半ギレ、あまつさえ無用に日本の選手を踏みつけて出血させるなど、喧嘩でもしにきているのかと思わせるようなプレーぶり。観客がいないとか、時計が動かないなどの細かな部分も含め、せっかく最終予選まで駒を進めたにしては勿体ない試合となってしまいました。

バーレーンとは近年さまざまな場面で顔を合わせ、死闘を演じてきました。2004年アジアカップで、あわや敗戦まで追い込まれながら中澤佑二のゴールで追いつき、延長で勝ち越した死闘。アテネ五輪予選ではUAEラウンドで引き分け、日本ラウンドでは敗戦と大苦戦。2008年にはワールドカップアジア3次予選で対戦し、誤審の影響もあったとは言え0-1で敗れるということもありました。対戦回数の多さと、勝負の際どさで「好敵手」といった感じさえ覚えていたところ。

しかし、今は正直サッカーなどやっている場合ではないのでしょう。バーレーンでは同じ宗教を信じているはずの人たちが、考え方の違いで衝突している状況。スンニ派(バーレーンでは少数派。ムハンマドの後継者は合意のもと選ばれるべきと考えている)による王族支配に対して、シーア派(バーレーンでは多数派。ムハンマドの後継者はムハンマドの血族であるべきと考えている)が抗議行動をつづけており、首都マナマでは試合開始直前にも反政府デモが起きていたとか。F1でも予定されていたバーレーンGPが中止になるなど、国内の情勢は極めて不安定。サッカーの五輪代表もシーア派の選手が離脱し、スンニ派だけで構成されているとも聞きます。

「支えてくれているみなさんのおかげで」じゃありませんが、サッカーのような戯れに興じられるのも、安定した生活・安定した環境があってこそ。日本では「バイトをしながら公園で練習する」より後退することはまずないでしょう。しかし、内戦の気配漂う街では、サッカーに集中すること自体が難しいもの。試合中も落ち着かない国内情勢に心を痛め、喧嘩の余韻で苛立っているとしたなら。今のバーレーンは近年見てきた好敵手ではない、そんな感じで一回忘れたほうがいいのかもしれません。フェアでしぶといチームに戻った頃、また別の機会に対戦できるよう祈りたいものです。

ということで、逆に言えばそういうタイミングでなかったら負けてたね、という「ロンドン五輪アジア最終予選 日本VSバーレーン戦」についてチェックしていきましょう。



◆あらゆるものが滞り、元気がいいのはスタンドから流れる音頭だけ!


スタジアムは見渡す限りのがらんどう。危険なので無観客試合にでもなったかと思いきや、メイン側にはパラパラとサポーターの姿が。どうやら単に客がいないだけのもよう。サッカーなんか見ている場合じゃないのか、サッカー好きな層はみんなデモに行っちゃっているのか、アウェーなのに日本人サポーターのほうが多いんじゃないかという雰囲気。

日本はこの世代の中心選手となる香川や宇佐美はもちろん不参加。さらにA代表に選ばれている清武や原口はおらず、前回の試合でキャプテンマークを巻いた山村も怪我で不在。中盤の顔ぶれがだいぶ寂しい感じになってのアウェー戦となりました。グループ1位だけが勝ち抜ける予選だけに、アウェーでも勝点3、できれば総得点も伸ばしたいところ。27日のシリア戦を前に、不安を払拭できるのか、逆に不安が募るのか注目の試合です。

↓無駄に荘厳な君が代の調べに、若き代表も緊張の面持ち!


荘厳すぎる君が代、赤丸が控えめな日の丸、撮影カメラを背後から撮影する中継スタッフ…何かスッキリしないことだらけ!

それはスッキリしない試合の前触れ!






そして、始まった試合。過ごしやすい気候ながら、一雨きて一層滑りやすくなったピッチと、上空で強く吹きつける風。そのあたりを心配してか、テレビ朝日の中継で解説をつとめるセルジオ越後氏は「風が強いね」「風に気をつけないと」「風が影響してますから」「風が…」と90分間ひたすら風について解説。気象予報士か風力発電所のオヤジのような口ぶりには、僕の中の辺境の剣士・ユパも「よく風を読む」と感嘆。

ボールを持てば中盤は無視して縦に長く蹴ってくるバーレーンと、中盤でゲームを作りたいものの誰がそれをできるのか不明瞭な日本という構図で、試合は前半からもやもやした展開。ピッチで滑ったり、あらぬ方向に蹴ったり、目の前にいる敵に渡したり、相手DFを完全に抜き去ってから味方にバックパスしたりとミスも頻出。ボールがあっちいったりこっちいったりする間に散発のチャンスが訪れるといった感じ。

日本は前半19分にようやく初シュートを放つなど、攻撃は仕掛けるもののシュート・ゴールに結びつくような効果的な形は作れないまま。むしろバーレーンのほうが、風上から適当に長いボールを蹴ってくるぶんゴールに迫る場面がチラホラ。セットプレーからゴール前で混戦となったり、前半39分にはやけくそ気味の距離から蹴ったボールが、風で伸びてポストを直撃する場面も。

そんな中、うっかり先制点をあげたのは日本。試合中、ゴールキックを目の前の敵に渡したり、ボールをお手玉したりと不安定な動きを見せていたバーレーンのGKが日本を助けてくれます。右サイドのCKからゴール前に高いボールを送ると、バーレーンGKはこれを華麗にオーバーハンドでトス。ちょうどいい感じに勢いが弱まったボールは、何とファーサイドで待つ大津の足元へ行ってしまったのです。

↓バーレーンのGKさんにはお車代5万円くらい渡しておきたい日本の先制点!


「電光掲示板に時間が出ない」って文句言ってる間に決まったwww

電光掲示板解説者兼風予報士だなwww






しかし、このままではおさまらないバーレーン。前半途中からスタンドで鳴り響いていた謎の音楽はますますヒートアップし、ヘビ使いの笛のような魔性の音色を奏で始めます。ペポリピーペロペポーと一定のリズムで吹かれる笛と試合内容で、こちらの眠気も加速。解説のまつきやすたろうクンも、「ひょっとしてあくび?」「あくびしませんでした?」「これはふざけたあくびですね」という疑惑を視聴者に抱かせるアヤしい動きも見せます。

選手たちにも悪い形で影響が出始めたか、試合は徐々に荒れ模様に。明らかにアフター気味に蹴ってきたり、突き飛ばしたりとバーレーンの雑なプレーが目立ち始めます。そのムードを加速させることになったのは、日本の追加点。後半22分に左サイドから扇原がクロスを入れると、山田のシュートをGKが弾いたところを東が押し込んで2点目。

↓よし勝った!ロンドンに一歩近づく日本の追加点!


ていうか、電光掲示板だけでなく、バックスタンドの時計も試合開始からずーっと10時33分を指してるwwwww

何分のゴールかわかりにくい会場だなwwww



勝負が決すると試合が荒れるのは人情か。どうでもよくなっちゃったバーレーンは無駄にボールを蹴り出したり、言い合いを始めたり、あまつさえボールと日本を半々くらいの感じで蹴り始めるなど、もはやどうでもよくなっちゃったご様子。そんな苛立ちのターゲットになったのは、ナチュラルに不機嫌に見えることで損しているっぽい山田直輝クン。すでに後半17分に足首をガッツリと蹴られていた山田クンでしたが、それでは足りないとばかりにさらなる追撃を浴びせられてしまいます。後半35分、バーレーンのアブドアヘリは山田クンを倒すと、ついでに顔面への踏みつけを敢行。スパイクでえぐられた山田クンの額は3針を縫う怪我を負い大流血することに。

↓いろいろな意味でキレてしまったバーレーン!



まつき:「キレてますよ!キレてます完全に!」
まつき:「これはヒドイですよ!」
まつき:「レッドカード3枚くらい必要だ!」






結局試合はこのまま2-0で日本が勝利するも、頭を切った山田クンはパイナップルのようにぐるぐる巻きにされるなど、後味の悪い結果に。相手のGKが不安定だったから勝てたような部分もあり、次戦に向けての不安は増す形となりました。まぁそれもまた最終予選の楽しみ。ラクに勝ち抜ける予選よりは、厳しい戦いをくぐり抜けてこそ成長もあるというものです。向こうのGKとの対比で一層頼もしく見えたGK権田も「ホームではたくさんの応援の中でできると思うので、みなさんの後押しでしっかり勝ちたい」と、「長谷部か!」とツッコミたくなるような頼もしい営業活動をしてくれましたし、引き続き応援していきたいものですね。



バーレーンさんもいろいろと大変だと思いますが、頑張ってくださいね!