前回はポジションとチャンネルという視点からドラフトを大まかに捉えました。チーム編成の肝ともいえるドラフトをさらに掘り下げていきましょう。今回はドラフトの指名順位についてです。ドラフトは有力選手から指名していきますが、1位と下位指名ではどれだけ選手が成功する割合が異なるのでしょうか。また、各チャンネルで獲得した選手にどれくらいの期待をかけるべきなのかまとめてみていきましょう。

1.投手の指名

 現在のドラフトでは上位で投手を指名する割合が高く、投手の指名がある程度上手くいかないとチームを効率的に強くしていくのは難しくなります。今回はチャンネル(高校・大学・社会人)と指名順位別に選手の貢献をまとめてみました。貢献については、チームの勝利にどれだけ貢献したかを現すWin Shares(WS)を使用しています。大まかにWSが0の選手は指名の失敗、0〜25は上位指名ではそれほど良い指名ではありません。WSが50を超えればレギュラークラスの選手とはいえ一つの基準としてみました。さらに100を超える選手をスターとして指名の成功としています。ドラフト評価のため、移籍があった選手は最初の所属球団への貢献のみを評価の対象にしています。



 まず全体を見て分かることは指名順が高いほど失敗をする割合が小さくなります。逆に言うと上位指名で貢献できない投手を選択することは大きなマイナスを生み出すことになります。さらに高校生投手のリスクの高さが失敗率から読み取れます。高卒選手はドラフト1位でも4人に一人はチームに全く貢献できない投手になっています。よほどの逸材でない限り大学・社会人投手を指名したくなるのもうなずけます。指名順位が下位になっても高卒投手のリスクは高いままです。
 高卒投手最大のメリットは当たった場合のリターンです。スター選手が出現する数はやはりキャリアが長くなる高卒選手が有利です。もうひとつ高卒投手の指名で特徴的なのは、野手としての指名です。ドラフト中位でイチロー・松井稼・中村紀などが指名され、野手に転向して成功を収めています。高校生のうちに潜在的な能力を見抜き、野手に転向させるのは確かに魅力があります。

 大学生は上位指名投手にハズレが少ないのが最大の魅力です。大学時代に活躍し上位指名される人材は、高校・社会人に比べスケール面で劣るかもしれませんが、チームとして計算できる投手が多く存在するようです。投手の頭数を確保するにはやはり有力な選択肢で、大学生投手の指名数が上昇しているのは球団にとってリスクが少なく、リターンも見込めるからのようです。

 社会人投手もリスクの少ない指名先になります。時代背景によって異なりますが、古くは今の大学生が果たしていた役割、現在では少数の即戦力投手の排出先となっており、投資先としてまだまだ魅力があります。

2.捕手の指名

 次に人材の確保が難しい捕手についてです。捕手はどのチャンネルでもプロで活躍できる人材は少なく、有力捕手を確保できた場合は大きなメリットを享受できます(有力捕手を獲得できたメリットは蛭川氏のコラムを参照「70年代以降の捕手総合評価」)。しかし、上位指名で失敗するリスクも高く、正捕手を獲得するには忍耐が必要です。

 高校生の指名はここでもややリスクが高いようです。1位で指名したケースはよほどの素材だったのでしょうが、2/3は正捕手にならずに引退しています。さらに高校生捕手の下位指名は本当に一握りしかレギュラーをつかめません。
 大学・社会人捕手の指名はある程度計算はできますが、レギュラー獲得の割合もそれほど大きくありません。チームにとって捕手の指名はある段階で必ず上位指名をしなければならず、失敗すれば重ねて指名しなくてはならなくなる難しいポジションに見えます。



3.内野手の指名

 投手や捕手に比べ内野手の有力選手の指名はリスクが軽減します。高校レベルでも1位指名を検討される選手は、大きなリターンをもたらす可能性を秘めています。また、素材の良い高校生を中位で獲得して主力として育て上げる割合も高いようです。内野手に関してはどのチャンネルでも上位指名をした段階で主力としての成功率が高く、見立て通りにいかないと編成のやり直しを強いられます。捕手よりも失敗が出来ない指名とも言えそうです。



4.外野手の指名

 もっとも指名割合の少ないポジションです。プロに入るには必然的に高い打力を発揮しなければならず、高校生にはかなりハードルの高いポジションといえます。高校生内野手の指名に比べてややスケールの小さい指名となりそうです(早い段階で高校生外野手を指名するのは指名権がやや勿体ない可能性があります)。実際に高卒ドラフト1位で数字を残せたのはロッテ・サブロー選手くらいかもしれません。逆に大学・社会人で外野手ながら指名される選手は即戦力として計算できる選手が多いようです。



5.まとめ

 ポジション別に指名傾向をまとめてみましたが、高校生選手は見立てが難しく、高順位で指名するのはリスクがありました。同じ高卒内野手でも、上位指名を検討される選手は大学・社会人選手と比べても指名に旨味があり、ある程度の成績を残す選手が多かったようです。

 大学・社会人選手に関しては、指名に対して結果を残している割合が高いようです。こういった実績からの評価を見ると、先日まとめた指名ポジションや獲得チャンネルの傾向に合致しています。

次回は指名順位のまとめと抽選について検討していきます。