上場企業のうち、年間1億円以上の役員報酬を受けた役員氏名および金額を、有価証券報告書に記載するよう義務づけられて2年目。昨年同様、今年の高額報酬の開示結果にも、またゾロ羨望の声が渦巻いた。
 トップは日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼CEOの9億8200万円、大赤字にもかかわらずの2位がソニーのハワード・ストリンガー会長兼社長の8億8200万円、3位が大東建託の多田勝美前会長の8億2300万円と続く。
 だが、公開されている高額報酬に驚いてはいけない。実は世間の注目をほとんど集めない反面、大手を振って懐を潤せるのが、株式配当によるマネー錬金術だ。創業者一族などのように相当数の株式を保有していれば、億単位の現ナマが転がり込んで来る。

 その意味で証券マンが舌を巻くのが、任天堂の山内溥相談役。創業一族の3代目で約1400万株を保有する筆頭株主で、その配当額は実に130億円。しかも既に取締役を返上していることから、開示の対象外だ。
 「山内さんと並ぶ錬金術師と揶揄されているのが『ユニクロ』を展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長です。彼の報酬は3億円あまりで高額報酬のベスト10から外れていますが、これまた創業一族とあって配当収入だけで約70億円ある」(経済記者)

 その点、ソフトバンク孫正義社長は役員報酬が1億800万円、配当収入が約13億円と御両人には及ばないが、関係者は苦笑する。
 「孫さんは関連会社からの報酬や配当収入がたっぷりあり、公表分にカウントされていない。これを含めた実収入は柳井さんといい勝負。だからこそ義援金100億円が出せたのだと思います」

 ことによると政府が決めた高額報酬の開示義務は、ベラボウな配当収入をカムフラージュするための高等戦術だったのではないか。そんな勘繰りさえしたくなる。