■ マーケティング委員会

ガイナーレ鳥取のJ2昇格が決定したことで、J2は20クラブにまで拡大した。もともとJ2は22チームがリミットとされているので、そろそろ、定員オーバーとなる時期が迫ってきた。また、観客動員動員の問題や、経営難に苦しむチームの増加など、いくつかの問題が生じてきてる。

当然、Jリーグも改革を考えているようで、朝日新聞によると、検討を行うのは「マーケティング委員会」と呼ばれる組織で、具体的には、

 ・2ステージ制の復活(年間王者決定戦の再導入)。
 ・参加基準の高い新たなリーグ(=プレミアリーグ)の設置。
 ・3部制の導入。
 ・話題性や収益性を重視した新たなカップ戦の創設。
 ・リーグ開幕・閉幕の時期。(秋-春制の導入)

といった内容について話し合いを行うという。

■ 2ステージ制の復活は??

この中では、「2ステージ制の復活」に関しては、メリットを感じない。過去に、年間王者を決定するためのチャンピオンシップは地上波でも中継されており、それなりの視聴率を稼いでいたが、今、チャンピオンシップを復活させたとしても、どれだけの視聴率が見込めるだろうか?どれだけのメリットが得られるだろうか?

テレビ局側から、「コンテンツとしての魅力が足りない。」という意見もあるようで、その対策として考えられているようであるが、時代は変わってきている。象徴的だったのは、2010年のプロ野球の日本シリーズが地上波で全試合生中継されなかったことである。数年前まではキラーコンテンツだった日本シリーズでも全ての試合で生中継されない時代になっている。広告収入も減ってきているといわれており、残念ながら、「Jリーグのシステムを変えてまで、テレビ局側の意向を組み入れるほど、テレビ局(特に、地上波)に魅力を感じない。」を言うしかないのが現状である。

サッカー界には「日本代表」というコンテンツもあって、15%〜20%程度は安定して稼ぐことができる。仮に、チャンピオンシップの2試合がゴールデンタイムで中継されて、10%程度の視聴率を獲得したところで、Jリーグ全体にどれだけのメリットが生まれるだろうか?

■ 2ステージ制の復活は??

世界的に2ステージ制が特殊であるというのも、否定的に考える理由である。主要リーグのほとんどが1ステージ制であり、2ステージ制を採用しているのは、アルゼンチンリーグくらいである。

2ステージ制にすると、1年間に2度、優勝争いが佳境になる時期が訪れるので、伝える側にとっては伝え易いかもしれないが、サッカーの基本であるホーム&アウェー方式を無視した形になって、イレギュラーなものであるということは、2ステージ制だった頃、日本でもよく議論されていた。

2002年にジュビロ磐田、2003年に横浜Fマリノスが両ステージを制覇したことで、1ステージ制移行への機運が高まって、2005年から1ステージ制を導入したわけであり、この段階で、元に戻すというのは、得策ではないように思う。

■ コンテンツとしての魅力?

もちろん、各クラブにとっては、テレビ放映権というのは貴重な財源の1つであり、今後、テレビ放映権を拡大していかないと、収入が大きく増えることはないので、大切なものであるが、今の日本の場合、Jリーグの試合を中継したところで、視聴率は見込めない。2ステージへの変更を行って、チャンピオンシップを復活させたとしても、その場しのぎの変更であり、一般の視聴者は、すぐに飽きてしまうだろう。

テレビ局側の「コンテンツとしての魅力が足りない。」という気持ちも分からないでもない。チーム数が多くなって、各地方にクラブが出来たことで、全国区の人気を誇るビッグクラブと呼ばれるクラブはなくなってしまった。かつてのヴェルディ川崎のようにスター選手が揃っているクラブがあれば取り上げやすいが、そういうクラブはなくなってしまった。

■ コンテンツとしての魅力?

ただ、一方で、テレビ局側が、現状の「魅力」を十分に伝えきれていない部分もある。「やり方次第では、もう少し上手く伝えられるのでは?」という気持ちはほとんどのサッカーファンが思っていることだろう。例えば、「アジアチャンピオンズリーグ」というコンテンツである。Jリーグのクラブがアジア制覇をかけて戦うグレードの高いステージであるが、現状、BS朝日やCSのテレ朝チャンネルで試合が生放送されている程度で、一般にはほとんど知られていないままである。「話題性や収益性を重視した新たなカップ戦の創設」という話にもつながるが、テレビ受けするような改革を行う前に、出来ることはあるのではないか?という気もする。

テレビ中継に関しても同様であり、民放の中継は視聴者が満足するレベルにあるだろうか?Jリーグが誕生して、日本代表に注目が集まるようになってからもう20年が経過しており、(普段、Jリーグの試合を観ない人であっても)「自分はサッカーの事は分かっている。」と自分で考えている人がほとんどである。今の時点で、そういった人を十分に満足させるような中継になっているかと言ったら、そうではないだろう。

今後は、もう一歩踏み込んだ「サッカーという競技の魅力」を伝えられるような放送を期待したいところである。それが日本代表だけに関心のある層をJリーグに引き込むことにつながる可能性がある。

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