【サムライ通信】長谷部誠、伸びやまない成長力
2008年1月、長谷部誠が移籍した当時のヴォルフルブルグは、ドイツ・ブンデスリーグでの中位に位置するクラブだった。07ー08シーズン名将と言われるマガトを監督に招聘し、親会社であるフォルクスワーゲン社が、本格的なチーム強化に乗り出してからわずか半年、将来性の高い有望な日本人ミッドフィルダーの獲得もそんなチーム強化の一環だった。
チーム合流直後から、マガトは積極的に長谷部を重宝。中盤のポジションは全て経験し、けが人で駒が足りないとなると、サイドバックにまで起用した。要求に対して勤勉な姿勢で取り組み、豊富な運動量と攻守に渡る高いバランス感覚を持つ長谷部は、マガトにとって重要なプレイヤーとなっていく。
そして、長谷部加入後の半年て順位を上げたヴォルフスブルグは、07-08シーズンを上位でフィニッシュし、つづく08-09シーズンでは見事なリーグ優勝を成し遂げたのだ。06-07シーズンを15位だったことを考えるとその飛躍は見事と言うしかない。
しかし、チームが強くなるということは選手層が厚くなり、チーム内のポジション争いも激しくなる。保有ドイツ人選手に制限を設け、外国人選手の数には制限のないブンデスリーガ。ヴォルフスブルグに在籍する選手の国籍は10数カ国に登る。
フェー新監督の下、欧州チャンピオンズリーグ出場を見据え、新たな補強選手が加入しスタートした09-10シーズン。長谷部は負傷でシーズン開幕に出遅れた。2連勝で開幕したもののその後3連敗とチームが苦戦していたことは不幸中の幸いだったかもしれない。長谷部は9月12日今季初出場をレバークーゼン戦先発で飾った。そして9月15日からCLが開幕。CSKAモスクワ戦に途中出場、19日シャルケ戦は途中出場。23日のドイツカップ戦は先発。そして、26日ハノーバー戦では先発出場から今季初ゴールをマーク。30日のCLマンチェスター・ユナイテッド戦では見事なアシストでチームに貢献している。
もともとは攻撃的MFで、ボランチでプレーしていた浦和レッズ在籍中から「攻撃に絡むプレーをしたい」と常に話していた長谷部だったが、チームのバランスを維持するプレーが彼の持ち味となりつつあった。カバーリングの意識が乏しいといわれる欧州の選手の中で、長谷部の存在がチームに安定感をもたらしていたのは事実だ。
しかし、フェー監督は長谷部の“攻撃力”を要求したという。
「監督から、『ディフェンシブにバランスを見ながらプレーするのもいいけれど、もう少し、クロスボールに入っていくとか、ゴールへ入っていくプレーをやって欲しい』といわれた。その後、ゴールを決めたり、アシストをしたりと、結果が出ているので攻撃に対して自信を持ってプレーできている」と長谷部。監督の要求に即座に応えた形になったのは「たまたまです」と笑うが、結果を残さなければ、生き残れないという彼の覚悟が生んだ結果でもあるのだろう。
そんな長谷部が先発出場した、10月8日日本代表対香港戦。開始15分過ぎにはミドルシュートを放ったが、惜しくもゴールは決まらなかった。しかし、その直後には岡崎のゴールをアシストしている。
「今日の相手なら、10点くらい決めなくちゃいけなかった。僕自身、代表でゴールを決めていないので、ゴールを決めたいと思っていたので、本当に残念です。アシストの場面は岡崎がフリーだったけれど、ワールドカップに出るようなチームでは絶対にあそこでフリーになることはないでしょう」
欧州のトップクラスの選手たちと日々を過ごしている長谷部にとって、世界基準そのものが日常なのだ。
「今季は僕のポジションに数多くの選手が補強された。そういう競争の中で、『他の選手よりも自分の良い所は何か?』ということを考えてプレーしている。攻撃が好きな選手が多いので、守備、攻撃の両方をやることが大事。チームが安定することを考えてプレーしている。確かに結果も出ているし、気持ちも持っているけれど、自分の中ではまだまだ満足していない。クラブで定位置を確保できていとも思わない。1試合ダメだったら交代させられる。良い緊張感を持ってやらなくちゃいけない」
浦和レッズで不動のレギュラーポジションを手にし、アジア王者にも輝いた。しかし、そんな毎日に安心してしまうことがイヤだった。さらなる刺激を求めて渡欧した。厳しく高いレベルの中で繰り広げられるサバイバルが、彼の成長を促した。その結果、日本代表においての長谷部の存在感が日々増している。
文=寺野典子
チーム合流直後から、マガトは積極的に長谷部を重宝。中盤のポジションは全て経験し、けが人で駒が足りないとなると、サイドバックにまで起用した。要求に対して勤勉な姿勢で取り組み、豊富な運動量と攻守に渡る高いバランス感覚を持つ長谷部は、マガトにとって重要なプレイヤーとなっていく。
しかし、チームが強くなるということは選手層が厚くなり、チーム内のポジション争いも激しくなる。保有ドイツ人選手に制限を設け、外国人選手の数には制限のないブンデスリーガ。ヴォルフスブルグに在籍する選手の国籍は10数カ国に登る。
フェー新監督の下、欧州チャンピオンズリーグ出場を見据え、新たな補強選手が加入しスタートした09-10シーズン。長谷部は負傷でシーズン開幕に出遅れた。2連勝で開幕したもののその後3連敗とチームが苦戦していたことは不幸中の幸いだったかもしれない。長谷部は9月12日今季初出場をレバークーゼン戦先発で飾った。そして9月15日からCLが開幕。CSKAモスクワ戦に途中出場、19日シャルケ戦は途中出場。23日のドイツカップ戦は先発。そして、26日ハノーバー戦では先発出場から今季初ゴールをマーク。30日のCLマンチェスター・ユナイテッド戦では見事なアシストでチームに貢献している。
もともとは攻撃的MFで、ボランチでプレーしていた浦和レッズ在籍中から「攻撃に絡むプレーをしたい」と常に話していた長谷部だったが、チームのバランスを維持するプレーが彼の持ち味となりつつあった。カバーリングの意識が乏しいといわれる欧州の選手の中で、長谷部の存在がチームに安定感をもたらしていたのは事実だ。
しかし、フェー監督は長谷部の“攻撃力”を要求したという。
「監督から、『ディフェンシブにバランスを見ながらプレーするのもいいけれど、もう少し、クロスボールに入っていくとか、ゴールへ入っていくプレーをやって欲しい』といわれた。その後、ゴールを決めたり、アシストをしたりと、結果が出ているので攻撃に対して自信を持ってプレーできている」と長谷部。監督の要求に即座に応えた形になったのは「たまたまです」と笑うが、結果を残さなければ、生き残れないという彼の覚悟が生んだ結果でもあるのだろう。
そんな長谷部が先発出場した、10月8日日本代表対香港戦。開始15分過ぎにはミドルシュートを放ったが、惜しくもゴールは決まらなかった。しかし、その直後には岡崎のゴールをアシストしている。
「今日の相手なら、10点くらい決めなくちゃいけなかった。僕自身、代表でゴールを決めていないので、ゴールを決めたいと思っていたので、本当に残念です。アシストの場面は岡崎がフリーだったけれど、ワールドカップに出るようなチームでは絶対にあそこでフリーになることはないでしょう」
欧州のトップクラスの選手たちと日々を過ごしている長谷部にとって、世界基準そのものが日常なのだ。
「今季は僕のポジションに数多くの選手が補強された。そういう競争の中で、『他の選手よりも自分の良い所は何か?』ということを考えてプレーしている。攻撃が好きな選手が多いので、守備、攻撃の両方をやることが大事。チームが安定することを考えてプレーしている。確かに結果も出ているし、気持ちも持っているけれど、自分の中ではまだまだ満足していない。クラブで定位置を確保できていとも思わない。1試合ダメだったら交代させられる。良い緊張感を持ってやらなくちゃいけない」
浦和レッズで不動のレギュラーポジションを手にし、アジア王者にも輝いた。しかし、そんな毎日に安心してしまうことがイヤだった。さらなる刺激を求めて渡欧した。厳しく高いレベルの中で繰り広げられるサバイバルが、彼の成長を促した。その結果、日本代表においての長谷部の存在感が日々増している。
文=寺野典子