三越は財務体質の改善が急務だ

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   百貨店業界第4位の三越と同第5位の伊勢丹が経営統合を視野に資本提携の交渉に入ることが、明らかになった。実現すれば、売上高で1兆5800億円(両社の単純合計額)となり、9月に誕生する大丸と松坂屋の持ち株会社、J.フロントリテイリングの1兆1737億円を抜いて業界トップの百貨店が誕生する。

「何も決定した事実はございません」とコメントするが

   2007年7月25日付の日本経済新聞によると、今年度中に共同で持ち株会社を設立することで本格調整し、三越と伊勢丹は8月中の合意をめざして協議を進める、としている。日本一の老舗百貨店で、戦前の三井財閥の礎を築いた三越も、競争の激化で単独での生き残りがむずかしくなった。

   ちなみに、日本経済新聞の報道を受けて三越は「当社が、伊勢丹と資本提携、或いは経営統合云々の報道がなされました。これらの一連の報道は、憶測或いは推測に基づくもので、当社としては決定した事実ではありません」とコメント。また、伊勢丹も「三越 伊勢丹と資本提携交渉へ との報道は、当社として発表したものではございません。また弊社として何も決定した事実はございません」と、報道を打ち消している。

   三越は、1673年創業の「越後屋」がルーツ。1904年に越後屋と三井家から一文字ずつをとって、「三越呉服店」の商号で、日本で初めての百貨店としてオープンした。しかし、ここ数年は業績不振に苦しみ、05年に大阪店など4カ店を閉鎖するなどリストラ策を進めていた。07年2月期連結決算の売上高は8014億円だった。

   伊勢丹は、1886年創業の伊勢屋丹治呉服店が前身。1930年に商号を「伊勢丹」とし、東京・新宿に本店を据えた。07年3月期連結決算の売上高は7817億円。健全な財務体質には定評があり、新宿本店は店舗売上高で日本一ともいわれる。

不振三越の優先課題は財務体質の改善

   1996年には阪急百貨店と包括業務提携を締結。03年には名鉄百貨店や井筒屋を支援し業務提携。05年には福岡県の岩田屋を連結子会社化し、北海道・札幌の今井丸井を支援した。07年3月には東急百貨店との業務提携を発表している。

   三越を突き動かしたのは、大丸と松坂屋の老舗百貨店同士の経営統合だろう。「西武−そごう」や「阪急−阪神」(10月に統合予定)のような電鉄系百貨店の経営統合が進むなかで、老舗百貨店は、その「のれん」に顧客が付いていることもあって、これまでは単独での生き残りを模索し続けてきた。それが「大丸−松坂屋」の経営統合によって、老舗百貨店を巻き込んだ「メガ百貨店」への道が開いたのだ。

   大丸の奥田務会長が松坂屋との統合を発表した記者会見で、「将来、志を同じくするものたちの参加を、なるべく多く求めていきたい」と語ったように、三越の選択肢としては「老舗連合」と手を結ぶ道もあったが、優先する課題が財務体質の改善にあったとみられる。

   全国展開で、富裕層に強みをもつ三越と、首都圏に店舗網をもち、ファッション衣料を中心に若年層の支持を集める伊勢丹は、お互いの補完関係が成り立ちやすい。さらに共同持ち株会社による経営統合で、双方の「のれん」を生かしていく。