ピエール瀧の自宅や地元周辺で取材してわかった「本当の評判」
「今までみなさまに支えられてきたのに……。突然、このようなことになったものですから、親としても残念です」
3月中旬、静岡県静岡市にある実家で、正座をしたまま、絞り出すように言葉を発した瀧正臣さん。12日の夜、コカインを摂取したとして麻薬取締法違反(使用)の疑いで逮捕されたピエール瀧こと瀧正則容疑者の父親だ。
「普通に育ち、音楽活動でスタートラインに立ち、映画やテレビで活躍するようになるまで頑張ってきたのに……。なぜ崖から落ちてしまったのか、残念無念です」
'89年、瀧容疑者は石野卓球とテクノバンド『電気グルーヴ』を結成し、'97年には『Shangri―La』が大ヒット。その後、役者としても活躍の場を広げ、'13年に死刑囚役を演じた映画『凶悪』などでブルーリボン賞助演男優賞を受賞。'15年には、『64(ロクヨン)』でNHKドラマ初主演も果たした。
「現在放送中のNHK大河ドラマ『いだてん』、今年公開の映画4本に出演と、まさに引っ張りだこ状態。さらに、電気グルーヴとしての30周年ツアー中でした」(芸能プロ関係者)
実家周辺(静岡)での評判
妻と13歳の長女がいて、仕事も順風満帆だっただけに、瀧容疑者を知る人は困惑するばかりだ。静岡の実家周辺でも彼の評判はすこぶるいい。
「マサくんは今でも帰省すると、立ち寄って挨拶してくれます。子どものころは近所のソフトボール大会でよく後輩たちの面倒を見ていました。
ウチの子は彼の4つ下で、中学で野球を始めたんです。ポジションがマサくんがやっていたキャッチャーだとわかると、キャッチャーミットをくれたんです。本当にやさしい子でした」(鮮魚店の店主)
瀧のサインがたくさん飾られた店もあった。
「マサくんは今でもよく来てくれます。本人やお母さんにお願いすると、快く書いてくれるから、サインだらけになっちゃいました(笑)」(酒店の店主)
自宅近所の評判
瀧が住む東京・世田谷区の家からほど近い商店街でも、聞こえてくるのは“いい人”エピソードばかりだ。
「とにかく気取らない人。道で会っても向こうから、“こんにちは”って元気に声をかけてきますよ」(瀧容疑者が行きつけの喫茶店の店主)
瀧のラジオが好きで、本人に「よく聴いてます」と声をかけると、満面の笑みで返されたという近所に住む男性は、
「娘さんが小さいころはよくラーメン屋で見かけて、カウンターで肩を寄せて食べている姿が微笑ましかったです」
語られてこなかった子煩悩な一面も見られた。
「娘さんを自転車に乗せて買い物に行く姿をよく見かけました。仲よさそうに話していて、いい親子だなって思いました」(近所に住む男性)
瀧が逮捕された当日は、神奈川県内の緑山スタジオで『いだてん』の撮影が行われていたという。
「瀧さんが監督に“もう夕方5時だから帰らせてよ〜”と冗談を言っていましたが、自宅に帰った直後に逮捕されたことに共演者も驚いてます。
彼は、花粉症の季節ではない夏の現場でよく鼻をかんでいました。今思うと、コカインの副作用だったのかもしれません」(テレビ局関係者)
近所の評判もよく、子ども好きで家族思いの“働くパパ”が、なぜコカインに手を染めてしまったのか。薬物に詳しい『ヒガノクリニック』の日向野春総院長は、こう話す。
「コカインというのは精神的な疲れと肉体的な疲れが重なっていると払いのけてくれる薬なので、バリバリと働く人たちが手を出す傾向があります。プレッシャーに打ち勝つための薬剤なんでしょう」
コカイン摂取は“勘違い”から始まるという。
「有名人やお金持ちな人ほど引っかかりやすいんです。仕事が増えたせいで、日常生活のリズムを壊しても、仕事の歯車はどんどん回してしまう。そんなとき、コカインを1、2回使ってみて、“すごいイイ”と思ってしまうのです」(日向野院長、以下同)
効き目の個体差がほかの違法薬物より比較的、少なく、つい手離せなくなるのもコカインの特徴だ。
「マリファナは何も効かなかったり、眠くなったりする場合もありますが、コカインは即効性があり、確実に気持ちが高揚します。夜中まで仕事した翌日も摂取すれば朝からスッキリして仕事ができてしまう。その異常な働きぶりから露見するケースが多いです」
日本にはあまり出回っていないといわれているが、
「大半は外国で手に入れてくるようです。いちばん多いのはハワイで、その次がオランダやドイツなど。セレブが集まって大騒ぎするようなイベントで、つい摂取してしまいハマる人が多いようです」
現在、取り調べを受けている瀧容疑者は「20代のころからコカインや大麻を使っていた」と供述。ただ、「使っていない時期もあった」とも話している。
「バンドでデビューする前後にライブハウスに出入りしていたころに薬物を覚えたのでしょう。その後、結婚して、子どもが生まれて、薬物からは遠ざかっていた。だが、年をとってから多忙になったことで、若いころに体験したクスリを思い出して、再び試したら手放せなくなっていたようです」(警察関係者)
彼はどんな罪に問われるのか。弁護士法人・響の西川研一代表弁護士によると、
「営利目的ではなく、コカインの使用の場合の量刑は最大で懲役7年。瀧容疑者の場合は初犯で反省も見せているとなれば、懲役1年から1年6か月、執行猶予3年が妥当かと思います。容疑者の収入や資産状況を考慮すれば、保釈金は1000万円を超える可能性もあります」
だが、これだけではすまされない。彼を待ち受けるのは、多額の損害賠償請求だ。
「俳優の小出恵介さんが未成年女性との飲酒トラブルで生じた違約金などの損害は約5億円といわれています」(西川弁護士、以下同)
その損害は、電気グルーヴの公演中止をはじめ、ドラマや映画など多岐にわたる。
「損害賠償請求の総額は10億円、30億円と報じられていますが、そのぐらい高額となる可能性はあるでしょう」
莫大な損害賠償請求額からもわかるとおり、仕事量は彼のキャパシティーをこえていたのだ。父・正臣さんも、こう話した。
「音楽以外に、ドラマやバラエティーと、ちょっと持ちすぎだったかな……。『いだてん』、地元のテレビ番組、CMは知っていたのですが、それ以外にも撮っていた映画がいくつもあったと初めて知った。
違約金のことを報道で見て、あんなに出ていたのかと……。胸が痛くなるほど切ないです。この年老いた父親がどうしたらいいものか、言葉がありません」
彼の妻と子どもに対しては、
「元気でやってもらいたいです。大変なことはあると思いますが、私のような老人でも何かできることがあればと。大したことはできないですが、私も彼らの力になれるように頑張っていきたいです」
世間の期待に応えるために家族のために、ガムシャラに働いたパパが、再び手を出してしまったコカイン。支払う代償は計り知れない―。