ケンタッキーフライドチキンが期間限定で販売した500円ランチ。お得感を訴求して客数増につなげた(写真:日本KFCホールディングス)

客数減に苦しんでいた「ケンタッキーフライドチキン」に一筋の光明が差し込んだ――。

ケンタッキーを運営する日本KFCホールディングスは9月7日、8月の月次動向を発表した。直営店の既存店売上高は前年同月比11.4%増、客数も同9.0%増と高い伸びを示した。既存店売上高が2ケタ以上の伸びを記録するのは29カ月ぶり。7月の既存店売上高と客数もプラスで着地したことから、2カ月連続で前年同月を上回る結果となった。

920円相当の商品を500円で提供

急回復の火付け役となったのが、ワンコインランチだ。オリジナルチキン1ピースに、ビスケット、カーネリングポテト(Sサイズ)、ドリンク(同)。それぞれ単品で注文すると920円のところを、7月23日〜9月5日のランチタイム(10〜16時)限定で、500円で提供したのだ。

会社側によると、「女優の高畑充希さんを起用したテレビCMも好評で、すべてうまく回ってくれたワンコインランチの呼び込み効果は想定以上だった」という。


ケンタッキーといえば、収益の大部分をクリスマスで稼ぐことで知られる。店舗売り上げが通常時の6〜7倍に拡大するクリスマスキャンペーンは最大の商戦期だ。昨年の12月23〜25日の店頭売上高は過去最高の60億円を記録した。

一方で、クリスマス以外の時期の売り上げを伸ばすことが、長年の課題とされてきた。今春には、”ちょい飲み”需要を取り込むためにビールとのセットを発売したほか、水曜日限定でオリジナルチキンを9ピース1500円で販売するといった施策で”日常使い”を訴求してきた。だが、月次動向を見るかぎりでは、いずれも効果はいま一つだったようだ。


このような状況下で投入した今回のワンコインランチだが、誕生のきっかけは意外なところにあった。日本KFCホールディングスは例年、秋から冬にかけて大学生向けのインターンシップを行っている。そこで参加した学生にケンタッキーのイメージを尋ねたところ、「価格が高い」といった声が多く上がったという。

そうした声があることは以前から社内でも認識されていたものの、ケンタッキー好きが集まった学生からも突き付けられたことは、今回のワンコインランチ投入のきっかけの1つになったようだ。若い世代の食事の選択肢としてケンタッキーを根付かせることは、今後の成長に欠かせない。

待ち時間短縮が課題

今回のワンコインランチをきっかけに店内利用を促進したいという思惑もある。ケンタッキーでは前出のクリスマスなどにまとめ買いをする客が多く、持ち帰り客の比率は7割に上る。

他方、会社側は「揚げたてを食べてほしい」という思いから、これまで店内飲食を促すべく全席禁煙化や充電用コンセントの設置を推進してきた。今回のランチの取り組みにも、そうした狙いが垣間見える。


キャンペーン期間中、店頭では「ケンタのランチが500円から!」という垂れ幕が存在感を放っていた(記者撮影)

一定の成果が出たワンコインランチだが、課題もある。揚げ物という商品を提供することもあり、ほかの外食チェーンに比べてケンタッキーは商品提供まで時間が長くなりがちだ。

ましてや今回のように客数増の施策を実施すれば、待ち時間が長くなり販売機会のロスにもつながりかねない。実際、8月下旬に東京都内の店舗に足を運んでワンコインランチを注文すると、入店から提供までに10分程度を要した。

会社側は5月の決算説明会で、待ち時間短縮などを目的に注文と提供とでカウンターを2つに分けるなどの改装を進めると強調。アプリを通じたネット注文の拡大にも力を入れており、このような施策が待ち時間短縮のカギとなりそうだ。

今回の盛況を受け、10月以降にワンコインランチの再投入を検討しているという。外食業界では人件費や原材料の高騰を理由に値上げの動きが相次ぐ。収益への影響を考慮すると、割引キャンペーンを実施するうえでは、売り上げ増や客数増の継続が重要となる。クリスマスだけに頼らないビジネスモデルを構築することはできるか。