日本勢のメダルラッシュに期待が掛かります。アジア大会を伝えるテレビは、視聴者の関心を引くことができるだろうと、メダルラッシュというフレーズをこれでもかと決め台詞のように浴びせかける。メダル、メダルと騒ぐことに躊躇いはないのだろうか。少し格好悪いと思わないのだろうか。他に宣伝文句が見当たらないといえばそれまでだが。

 その流れにサッカーも巻き込まれないで欲しい。メダルより大切なものがサッカーにはある。問われるべきは、結果よりサッカーの中身だ! と、こちらが、少しばかり斜に構えるのは、それなりの結果は出るだろうとの安心感に半分は基づいている。メダルを取っても所詮アジアレベル。世界レベルには程遠い大会。森保サッカーの行方は、成績だけでは判断できないと思っていたところ、ベトナムにまさかの敗戦を喫した。

 調べたわけではないけれど、日本は過去、ベトナムに敗れたことはないはずだ。絶対に負けそうもない相手だとの認識がある。確かに最近、急激に力を付けていた。先のU−23アジア選手権でも2位に入っていたが、両国の力関係を踏まえれば、これは事件だ。

 もっとも、森保U−21はそれ以上の事件を引き起こしていた。初戦のネパール戦だ。その1-0という結果は、ベトナムに0-1で敗れるよりショッキングな出来事だ。勝利という概念に覆われているので、事件性は低く見られがちだが、見逃すことはできない重大事だ。

 森保監督の采配について語る前に、目に止まるのは選手の質だ。少なくとも、A代表に引き上げたいと思う好選手は見当たらない。おっと一瞬、光るプレーをする選手はむしろベトナムにいた。日本の選手が下手になったというより、周囲のレベルが上がったと言うべきかも知れないが、それは相対的に見ればレベルダウンだ。比較対象を求めるのは日本の過去ではなく周囲。外国だ。前にも述べたが、サッカーは足でボールを操るスポーツ。手でボールを扱う他の競技に比べ、伸びシロが多い。競技力は向上するばかりだ。問われているのは伸び率。前年比0%はマイナス成長を意味する。

 ネパールの前年比が8%、ベトナムが5%だとすれば、日本は1%。5%、8%は難しくてもせめて3%は維持しないと、近い将来、アジアの後続グループに追い越される。

 ロシアW杯でベスト8入りを紙一重の差で逃した国とは思えない苦戦ぶりだ。この差は何を意味しているのか。忘れていけないのは、西野ジャパンはこの大会に、ベテラン主体で臨んだことだ。次回カタール大会の時に30歳を越えない選手、つまり中堅は昌子、植田、柴崎、宇佐美、武藤、大島、中村のわずか7人のみ。代表には循環する宿命があり、選手の選考は、将来との兼ね合いが不可欠になるが、西野監督はそれを無視して勝負に出た。ベテラン主体で臨んだ。その産物がベスト16だった。

 結果は出た。しかし、もし結果がでなかったら、何も残らなかったことになる。サッカーの中身も日本サッカー史上最高といいたくなるほどよかったが、大きな代償を払った結果であったことも事実なのだ。次回は危ないと、ロシアW杯が終わるや、危機感に襲われたものだ。

 よい選手が、年齢が下がるほど少なくなる。ベテランを越えることができなかった25歳以下の状況を踏まえれば、ロシアW杯は出来すぎだったと言ってもいい。それは、日本の現状を正確に反映した結果ではなかったのだ。

 若手のレベルは世界のベスト16には程遠い。ベトナム、ネパールに事件を引き起こされた森保U−21も、その範疇にすっぽり収まっている。心配になるのは4年先だけではない。8年先も危ないのだ。

 W杯の本大会出場枠が48チームになるのは次回なのか、次々回なのか。現段階では明らかになっていないが、もし次回がこれまで通りの枠で行われたら、日本は大苦戦必至だ。48ヶ国で争われることが決まっている次々回も同様。アジア枠が大幅に増えたところで、いまの流れで行けば楽勝とは言えなくなる。

 日本は下り坂にさしかかっている。ここから右肩上がりに転じるためには、まず、この現状を認める必要がある。

 森保監督はそのタイミングで兼任監督に就任した。右肩下がりの幅を最小限に食い止め、一刻も早く右肩上がりに転じさせることが出来るか。まさに日本サッカー浮沈のカギを握る監督なのだ。

 任命した田嶋会長、関塚技術委員長にその認識はどこまであるだろうか。アジア大会のグループリーグの戦いぶりを見れば、どんなに鈍い人でも日本の現状は理解できる。日本はいま、泥沼に足を踏み入れつつある。

 ロシアで収めたW杯ベスト16という成績は、さっさと忘れるべきだろう。いつまでもそれにしがみついていると、今度こそ危ない。予選落ちが待っている。この状況をドメスティックな手法で立て直すことは難しい。大手術が不可欠。現体制では難しい。アジア大会を見ていると、その思いは確信に近づくのである。