『トヨタの次世代タクシー

「飲みすぎで終電を逃して」「暑くて駅まで歩いていられない」。理由はさまざまだが、ちょっとしたときに利用したくなるのがタクシーだ。

 タクシーの車種といえば、真っ先に思い当たるのがトヨタの「クラウン」だろう。最大4名まで乗車可能で、前後ほぼ均等に張り出た、独特のボディフォルムはこれぞタクシーといった感じで無駄がない。トランクはゴルフバッグ3個、スーツケースは2個まで積載可能と見た目よりも荷物が入る。

 すっかりおなじみのクラウンタクシーだが、近い将来その姿が見られなくなるかもしれない。というのも、トヨタのタクシークラウンは2017年4月をもって受注を終了してしまったからだ。

「今回はあくまで、タクシーなどの商用クラウンの受注が終了となります。一般用・家庭用のクラウンシリーズはなくなりません。商用クラウンに関しましては、1991年から2016年末まで22万2000台を販売させていただきました」(トヨタ自動車広報部担当者)

 広報担当によれば、2015年はタクシー業界全体で1万5000台の新車が導入されたというが、その8割がトヨタ製だったというから驚きだ。

 クラウンの代わりにトヨタが投入するのは、次世代タクシーといわれるモデルだ。

 見た目はワゴンを小さくコンパクトにした形で、今までのクラウンのようなセダンタイプとは大きく異なる。床が低く、大型スライドドアを使用しているため乗り降りがしやすそうな印象だ。新開発のLPガスハイブリットシステムを採用しているという。年内に発売予定だ。

 タクシー用車両が大きく変化した理由について、トヨタより先の2015年にワゴン型タクシーNV200の販売を開始した、日産自動車株式会社の広報担当者は次のように語る。

「従来のセダン型のタクシー(日産セドリック)でネックとなった、お子様連れのベビーカー、車椅子等のバリアフリー化、外国人観光客のお客様の大きな荷物など、昨今のニーズの多様化を反映させていただきました」

『クレジット 日産NV200』

 2020年には東京オリンピックが開催される。これからさらなる外国人観光客の増加が見込まれるだろう。彼らの荷物や体格に対応するためには、ワゴン化は時間の問題だったのかもしれない。

 いずれにせよ、今後ほとんどタクシーがワゴン化していく。数年後には、街の風景は今と大きく異なるはずだ。