東急東横線のホームが地下化された現在も、工事が続いている渋谷駅東口の地下。いまその場所では何が行われ、将来はどのようになっていくのでしょうか。

高低差の激しい渋谷駅、地下に「重要な空間」が

 東急東横線の渋谷駅が2013年3月、地上から地下に移転しました。それから3年たった現在でも、渋谷駅周辺では工事が続いています。

 2016年6月16日(木)、東急電鉄が渋谷駅で行っている地下工事の様子を報道陣へ公開しました。いま、実施されている工事は大きく分けてみっつ。「鉄道」「ビル」「基盤整備」です。今回はこのうちのふたつ、「鉄道」と「基盤整備」について見学ができました。

「鉄道」は、言葉どおり鉄道に関する施設の工事です。東横線および東京メトロ副都心線の駅部分は完成していますが、周囲の施設や地上とを結ぶ通路などは現在も工事の真っ最中。さらに地上へ目を移すと、東京メトロ銀座線、JR埼京線と湘南新宿ラインのホーム移設も計画されています。


渋谷川の下に建設中の「東口地下広場」。地下2階の深さに、延べ床面積およそ1600平方メートルの空間が造られる(2016年6月16日、太田幸宏撮影)。

 東急電鉄では、東横線、副都心線の駅とそれらをつなぐ動線を改善するため、東口の地下2階に延べ床面積およそ1600平方メートルの「東口地下広場」を建設中。ここは高い階層にあるJR線と銀座線、京王井の頭線の駅と、地下にある東急田園都市線、東横線、東京メトロ半蔵門線、副都心線の駅とをつなぐ“重要な空間”になるといいます。


地下2階に整備される渋谷駅東口地下広場のイメージ。この広場と地上とのあいだに渋谷川が流れる(画像出典:渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者)。

 東口地下広場の構造上の特徴は、広場の上(地下1階の高さ)に渋谷川が流れていることです。流路はコンクリートで四方を囲われているため、地上からも広場(下)からも流れを見ることはできませんが、将来、広場が完成したときに、その天井の形状から渋谷川の位置を推測することができるかもしれません。


渋谷駅地下工事の断面図。渋谷川と貯留槽のあいだに「東口地下広場」が建設される(画像出典:渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者)。

 東口地下広場は、直上の東口駅前広場や、地上47階で高さおよそ230mの高層ビル「渋谷駅街区東棟」などとともに、2019年度ごろに完成する予定です。

「渋谷」という地名が意味するもの、それに対応する施設を地下に

 渋谷駅のまわりでは、街を支える「基盤整備」に関する工事も進行中です。今回公開されたのは「雨水貯留槽」。ゲリラ豪雨による浸水対策として、約4000t(25mプールおよそ7杯分)の雨水を一時的に貯水できる施設です。


地下25mの深さに建設中の地下貯留槽(2016年6月16日、太田幸宏撮影)。

 1時間あたり50mmを超える雨が降ると、渋谷駅東口付近の雨水がこの貯留槽へ流入。雨水は天候が回復したあとにポンプでくみ上げられ、下水道の「古川幹線」に排水されます。

 貯留槽の位置は地下およそ25mで、「東口地下広場」のさらに下層。直上を流れる渋谷川とは系統が分かれているため、川の水が貯留槽に流れ込んだり、反対に貯留槽の水が渋谷川に排水されることはないそうです。


東口の地下広場のさらに下層に造られる貯留槽。その水は渋谷川(右)と交わることなく下水道に排出される(画像出典:渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者)。

 渋谷は地名のとおり「谷」になっているため、大雨が降ると“谷底”の駅周辺に水が集まりやすいという事情があります。しかし、大量の雨水をためられるこの貯留槽を整備することで、東急電鉄によると「安全安心な街づくり」が実現するとのこと。完成は2020年度ごろが見込まれています。

 駅だけでなく、その周辺全体が大きく生まれ変わりつつある渋谷。現在はその途上であり、工事は2027年まで続きます。渋谷駅について東急電鉄は、通路の移設や改良、広場の新設などを通じて「動線の改善を地道に続けていく」としています。