デビュー戦を勝利で飾ったインザーギ。「このチームのクオリティーは高い。どこが相手でも勝つのは可能だ」と自信を覗かせた。(C)Getty Images

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 ラツィオが揺れ続けている。
 
 4月3日のローマ・ダービーに1-4という惨敗を喫して、ステーファノ・ピオーリ監督を解任。プリマベーラ(U-19)を率いていたシモーネ・インザーギの内部昇格に踏み切った。
 
 しかし、この決定はあくまで今シーズン終了までの暫定となりそうな気配だ。来シーズンは、12日にミランを解任されたばかりのセルビア人監督シニシャ・ミハイロビッチの就任が濃厚という観測が強まっている。
 
 今シーズンのラツィオは、守備の要ステファン・デフライをはじめ、ドゥシャン・バスタ、シュテファン・ラドゥ、ルーカス・ビグリア、セルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチなど、主力の多くに故障による中・長期の欠場が相次いだこともあり、3位という望外の成績を残した昨シーズンとは打って変わって、ヨーロッパリーグ(EL)出場権争いすらおぼつかないという不本意な結果が続いていた。
 
 元々クラウディオ・ロティート会長への対立姿勢を打ち出していたゴール裏のウルトラスは、ローマに敗戦後その抗議行動をますますエスカレートさせている。
 
 ダービーの当夜には、ローマ郊外フォルメッロのトレーニングセンターに400人以上が集まって、スタジアムから選手を乗せて戻ってきたチームバスや警備の警官隊に投石するなど、暴動まがいの騒動を起こして10数人の逮捕者を出した。さらに翌日以降も、チームがロティート会長の指令で今シーズン3度目の懲罰合宿を行なっていたウンブリア州ノルチャ(ローマから170キロあまりの距離)まで押し掛けて抗議行動を繰り返したのだ。
 
 クラブとの対立関係は修復不可能なレベルにまで悪化しており、そのせいでチームの周囲には剣呑な空気が漂い、不振に拍車をかける要因となっている。
 
 ちょうど40歳の誕生日を迎えた5日に、そのノルチャでトップチーム監督としての仕事をスタートさせたインザーギ新監督。初戦となった5日後のパレルモ戦は、ここ3か月近く勝ち星がなく、監督もシーズン7人目という極限的な混迷に陥っている相手にも助けられてアウェーながら3-0の快勝。シーズン目標の最低ラインである6位以内(EL予選出場権)への希望を残した。
 
 インザーギは、昨シーズンにミランの監督を務めた兄フィリッポ同様ピアチェンツァの育成部門で育った。下部リーグへのレンタルを経て1998-99シーズンに22歳でセリエAにデビュー。翌年移籍したラツィオで通算10シーズンを過ごして2010年に引退した後は、6シーズンにわたって育成部門で指導者を務めてきた。
 
 アッリエービ(U-17)から監督キャリアをスタートし、13-14シーズン途中にプリマベーラ監督に昇格すると、同カテゴリーのコッパ・イタリアを2度制覇した。リーグ戦でも14-15シーズンにはファイナルラウンドに進出。決勝で敗北し、惜しくもスクデットを逃したものの、ユースレベルでは際立った成功を収めてきた。
 
 戦術的には、4-3-3を基本としながら相手や状況に応じて3バックも含めた複数のシステムを使い分ける柔軟性も持っている。
 
 トップチーム初采配となったパレルモ戦では、ピオーリ時代の4-3-3をそのまま継承しながらも、最終ラインにはサンティアゴ・ジェンティレッティ、ミラン・ビシェバツという比較的展開力のあるCBを起用。従来のアグレッシブなプレスからのショートカウンター狙いから、ややチームの重心を下げつつよりビルドアップ志向の強いスタイルにシフトしつつある印象だ。
 
 インザーギは就任会見で、
「現在だけでなく未来の監督でもありたいと思っている。これからの7試合がその答えを出してくれるはず」