日本人の零戦、クラウドファンディングで再び日本の空へ
日本人が所有する飛行可能な唯一の零戦を、再び日本の空へ飛ばすため、インターネット経由で資金を集める「クラウドファンディング」が実施されました。この計画には資金面以外にも課題があるといいますが、関係者の強い熱意で実現に向け計画が進められています。
日本人が所有する飛行可能な唯一の零戦
太平洋戦争で活躍した日本を代表する戦闘機「零式艦上戦闘機」、通称「零戦(ゼロ戦)」。各種存在した日本の戦闘機のなかでも、零戦は約1万機と最も多く生産された機種ですが、その大半は戦争によって失われ、現在は回収された機体を、主に展示用に復元した30機程度が国内外の施設に保管されているにすぎません。
そんななか、零戦を再び日本の空に飛ばそうとしている人々がいます。計画名は「零戦里帰りプロジェクト」。きっかけは、その中心人物である石塚政秀さんがアメリカで雑誌のライターとして取材中に、飛行可能な零戦の機体と出会ったことにさかのぼります。
同機は1942(昭和17)年のソロモン海戦中に失われたものとみられ、1970年代にパプアニューギニアで発見されました。そして当時の設計図をもとに旧ソ連のメンテナンスチームも加わって、実に38万時間もの作業を費やし飛行可能な状態にまで修復。映画の撮影やアメリカでの航空ショーなどに利用されていた機体でした。石塚さんはこの機体を個人で購入。これが日本人の所有する唯一の飛行可能な零戦になります。
そして石塚さんは「零戦の精巧な技術は日本のモノづくりの原点なのではないか」と考え、せっかく日本人が所有する機体なのだから日本へ持ち帰ろう、再び日本の空を飛ばそうと行動を始めました。
零戦を支援するクラウドファンディングを実施
その想いの実現は一筋縄ではいかず、機体の維持費、管理費を捻出しつつ7年を要したものの2014年11月、ついに日本へ、日本人所有の飛行可能な零戦が到着します。
ですが飛行可能とはいえ改めて日本で必要な組み立て、メンテナンスを行わなければ実際に飛ぶことはできず、その資金が必要でした。そこで「クラウドファンディング」という、インターネット経由で不特定多数の人から資金を集める仕組みが利用されます。
このクラウドファンディングで資金支援者はその額によって、主に次のような特典が受けられました。
■3千円支援:里帰り記念クリアファイル
■8千円支援:本組み後の操縦席での撮影券
■5万円支援:機体への名入れ&プロジェクトメンバーとして公式に記録&里帰り記念グッズ3点 ※早期出資特典あり
■10万円支援:機体への名入れ&プロジェクトメンバーとして公式に記録&サポートクラブ入会権(イベント優待、フライトジャケット贈呈)&里帰り記念グッズ3点 ※早期出資特典あり
■30万円支援:機体への名入れ&プロジェクト支援者として公式に記録&サポートクラブ入会権(イベント優待、フライトジャケット贈呈)&里帰り記念グッズ4点 ※早期出資特典あり
■50万円支援:機体への名入れ&プロジェクト支援者として公式に記録&サポートクラブ入会権(イベント優待、フライトジャケット贈呈)&里帰り記念グッズ5点 ※早期出資特典あり
■100万円支援:スポンサー契約権(企業)&本機著作権の利用&機体への名入れ&プレミアムジャケット ※早期出資特典あり
立ちはだかる最後の難関
こうして日本の空に日本人の零戦を再び飛ばすため、クラウドファンディングを利用した資金集めが2015年2月初頭の締切、目標2000万円でスタート。ラスト3日で目標金額まで140万円足りない、などとハラハラする展開をみせましたが、最終的には達成金額2344万4千円、支援者1018人と、飛行実現へさらに一歩前進することに成功します。
そして現在は集まった資金をもとに機体のメンテナンスや保管、保険加入などをしつつ、最後の難関である国交省の飛行許可を求めて動く、いわばプロジェクトのクライマックスに突入しようという段階になりました。
ただ石塚さんによれば、「組み立ててみないと許可をいただけるか未定」とのことで、そのためにもまずは「安全を維持できるように機体を組み立てることが目下の課題」といいます。しかしこの計画は、クラウドファンディングで1000人を超える支援者を得ました。石塚さんは「今や我々だけのプロジェクトではなくなりました。ご支援下さった皆様のためにも、飛行を実現させなければ」と熱く想いを語ります。
初飛行の目標は最短で今年4月といい、その後エアショーを開催し、さらには機体の保存に向けた事業化も予定しているそうですが、そのためにはまず許可を得ることが必要です。審査を通過するまで何度でも挑戦すると意気込む石塚さん。ついに最終局面に入ったこれからの展開が注目されます。