8日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」によると、平壌で3、4両日に開かれた「朝鮮人民軍第3回大隊長、大隊政治指導員大会」で金正恩(キム・ジョンウン)は演説を行い、次のように強調した。

 「指揮官たちは、隊員らが食事をしっかり食べているか、よく寝ているか、着るものはまともに着ているか、生活はどのようにしているか、ということについて生みの親のように心配して面倒を見なければなりません」、「彼らがもし病む時にはもっとよく面倒を見なければなりません。それでこそ隊員らは指揮官を信じ、自分のすべてを頼るようになり、軍務生活でより熱誠を出すようになります」――。

 北朝鮮から出てくる情報に接する場合には、文字だけを追っていても意味がない場合がよくある。そのような情報が出てきた「実情」を考えることが必要だ。

 ということで、「労働新聞」が掲載した「金正恩演説」を改めて見てみよう。要するに、「兵士は飢え、よく眠ることもできず、軍服もまともに着ていない」ということだ。さらには「指揮官らは兵士の信頼を得ていない」という人民軍の悲惨な現実が投影されていると読むべき記事であるわけだ。(執筆:宮田敦司/編集:如月隼人)

【プロフィール】
宮田 敦司(みやた・あつし)
1969年生。日本大学大学院総合社会情報研究科博士後期課程修了。航空自衛隊資料隊にて13年間にわたり資料収集及び翻訳に従事。退職後、ジャーナリスト、フリーランス翻訳者。著書に『中国の海洋戦略』(批評社)ほか。