地元の人たちでつくる新しいコンセプトの「旅行ガイドブック」

写真拡大

 今の時代、旅行するのもネットで何でも調べられるので、ガイドブックを1冊買うよりも多くの情報を得ることができてしまうだろう。
 しかし、旅行する前、計画を立てるときは必ずガイドブックを買うと言う人も少なくないのではないだろうか。ガイドブックを眺めているだけでも、気分が高揚するという面もある。

 宿や観光地、食事などがガイドブックの主な内容だが、新しいコンセプトのガイドブックが登場した。それが、「コミュニテイ・トラベル・ガイド」シリーズだ。コンセプトは人々との出会いを楽しむというもの。

 海士人、腹囲人、三陸人と続いたコミュニティトラベルガイドシリーズの第4弾が本書『大野人』(COMMUNITY TRAVEL GUIDE編集委員会/著、英治出版/刊)。本書が普通のガイドブックと違う点は、出版社の編集部に加え、大野市民みんなでつくった旅のガイドブックということだ。
 さまざまな立場から大野を愛する29名が参加したワークショップを開催。どんぐり作家、里芋掘りの救世主など、集まった大野人の情報は100人以上。1回目のワークショップで挙げられた「魅力的な大野人リスト」を元に編集部は取材に奔走。計4回のワークショップを行い、大野の人たちと編集部が企画を練り、『大野人』を完成させたという。

 福井県大野市、通称「越前おおの」。1575年、織田信長より一向一揆討伐の命を受けて侵攻した金森長近が構えた城と城下町が現在の市街地の起こりの街だ。亀山山頂にそびえる天守閣、短冊状の歴史的町並み、寺院が連なる寺町通り、城下町時代から続く七間朝市、歴史遺産を数多く残す「北陸の小京都」だ。
 この地の魅力は「人」。大野人の中には、農作業や冠婚葬祭など様々な仕事を互いに助け合う習慣、「結」の精神が根づいている。人とのつながり、絆を大切にし、少しシャイだけど、親切で優しい笑顔の大野人たちに数多く出会えるだろう。
 そして、もう1つの魅力は「水」。街中に網目状に張り巡らされた水路と湧き水スポット。水が美しいことの証であるホタルと冬の美しい雪景色。美味しい水が育む米、そば、日本一の里芋をはじめとした野菜。水の美しさ、美味しさを実感できる。

 地域密着で作られた本書のようなガイドブックは地元感が出ていて面白い。こういった取り組みは、地域経済の活性化にもつながるのだろう。
 「越前おおの」の史跡や自然を見て回るだけではなく、本書を片手に大野の人々との交流もまた楽しい旅行の思い出になるのではないだろうか。
(新刊JP編集部)