殺虫剤と農薬は、何が違う?「管理する省庁の違い」

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夏に多い害虫の被害。家庭菜園はもちろんのこと、穴のあいた網戸はいまのうちに張りかえておくと良いだろう。

ハエや蚊でおなじみの殺虫剤は、農薬となにが違うのか? たとえ同じ成分でも、許可する省庁が違うだけで家庭用か農薬かの名称が変わる。タンスで衣類を守る防虫剤にも、かなり強力な成分が使われているのだ。

■農薬は殺虫剤より強い?

害虫は、病気やアレルギーの原因となる衛生害虫、かむ/刺す危険性のある不快害虫、植物に害を与える園芸害虫に分類される。それぞれ代表例をあげると、

・衛生害虫 … 蚊、ハエ、ゴキブリ、ノミ

・不快害虫 … ハチ、ムカデ、カメムシ、アリ

・園芸害虫 … アブラムシ、カイガラムシ、ケムシ

で、これらを駆除する薬品の総称が「殺虫剤」だ。

殺虫剤と農薬は、なにが違うのか? 農薬=プロ仕様で強力なイメージがあるものの、じつは管理する省庁の違いでしかない。コンビニやスーパーで手に入る家庭用殺虫剤は厚生労働省の「薬事法」、農林水産省の「農薬取締法」に準拠すると農薬になる。

成分や強さの違いではなく、管理の問題なのだ。

家庭用殺虫剤の主流・ピレスロイド系は、蚊に効く線香で有名な成分だ。昆虫にとっては強力な神経毒だが、ヒトやラットなどのほ乳類にはほとんど影響しないのが人気の理由だ。ただし「理論上」両生類やは虫類にも毒となるので、カエルやカメを飼育しているひとはご注意を。

ゴキブリ、蚊、ハエなど、ほとんどの害虫はピレスロイド系殺虫剤で対応できる。ただしハチ、アブラムシ、ダニなどは有機リン系の成分が使われているので、とっさに出くわしても、ハエ/ゴキブリ用の殺虫剤では効果は期待できない。

対する農薬は、「農産物に使う薬」の意味なので、殺虫剤とは限らない。殺菌剤、除草剤、植物生長調整剤など、さまざまな農薬が存在するのだ。

広範囲に大量にまくのが前提なので、使いかたを間違えると危険なため、販売するには都道府県への届け出が必要で、誰になにを売ったかを台帳管理する必要もある。ホームセンターの園芸コーナーで、誰でも買える「アブラムシ退治」などの薬は、農薬ではなく「殺虫剤」に区分される。

ただし、農薬の殺虫剤と同じ成分のものも多いので、ナメてかからず、用法/用量を厳守しよう。

■かなり危険な家庭用品?

微妙な立ち位置にある「防虫剤」は、衣類や人形の虫食い防止がおもな役割で、ベースは「家庭用品規制法」のため、殺虫剤/農薬よりも規制がユルい。ただし、昔から使われている樟脳(しょうのう)は人体への影響が大きいので注意が必要だ。

防虫剤として「時間が経つと無くなってしまう、和紙に包まれたキャンディー状」の物体が樟脳で、大量に吸い込むとおとなでも危険な状態となる。

樟脳は火薬の原料としても使われた物質で、カンファー/カンフルなどとも呼ばれ、その名から想像できるように強心剤にも使われていた。現在の日本では、殺虫剤と同じピレスロイド系が主流になっているのでさほど神経質になる必要はないが、子供が間違って口にいれないように注意しよう。

■まとめ

・「農薬=強力」「殺虫剤=弱い」はウソ

・農薬には、農薬肥料/殺菌殺虫混合剤など、殺虫剤以外の薬品もある

・どちらの殺虫剤も、ピレスロイド系が主流

・ピレスロイドは人体に影響が薄いと言われているが、無影響ではない

・衣類用防虫剤にも、強力なものがある

家庭用殺虫剤だから安全とは言い切れない。

用法/用量を守り、必要以上に使わないようにしたい。

(関口 寿/ガリレオワークス)