3月8日、サガン鳥栖戦で埼玉スタジアムの209入口に掲げられた「JAPANESE ONLY」の横断幕は、FIFAがもっとも力を入れて根絶を目指している“人種差別”と認定された。事態を重く見たJリーグは、23日におこなわれた清水戦を史上初の「無観客試合」とすることに決定。主催の浦和にとっての損失は3億円近いという。

「あれは人種差別じゃないよ。じつは昨年あたりから、浦和サポーターたちが観戦する北側のゴール裏席に、試合よりもサポーターたちを見に来る外国人が増えていた。外国人客は、一生懸命応援しているサポーターたちの姿を写真に撮ったり酒を飲むことが目的。これじゃ統制の取れた応援ができない。だからあれは、そういう人たちに向けた注意書きのつもりだったのだろう」(サポーターで賑わう浦和区内の飲食店店長)

そこで気になるのが、誰が横断幕を掲げたか、という点だ。浦和には3千ものサポーター集団があるという。ある古参のサポーターが明かす。

「『UBスネーク』という20人ばかりのグループの3人が掲げた。このサポーターは、’98年ごろに出来たんだけど、硬派な集団で、熱い声援を送ることでも有名だった。現在、リーダーといわれる男は40歳手前で、さいたま市役所に勤務する公務員。かなりのイケメンで人望もある。ところが、若手のなかには嫌韓、反韓感情を持つメンバーもいて、今回の横断幕もリーダーに黙って掲げたらしいけど、明らかに差別意識があったと思う」

横断幕を掲げた3人はクラブの事情聴取に対し、「差別や政治問題化させる意図は
なかった」と弁明している。そこで本誌は、「UBスネーク」のリーダーから真相を聞くべく、さいたま市役所に連絡したが、「本人は本日、お休みをいただいております」とのことで、コメントを聞くことはかなわなかった。

「どんな言い訳しても、根底にあるのは韓国人らに対する差別。そして、今季加入した李忠成(りただなり)に対しても同様の思いがあったことは間違いない。その証拠に、開幕戦で浦和サポーターから李に対し、ブーイングや差別的なヤジを飛ばす連中がいた。李への件はクラブ関係者も把握していたが、サポーターへの改善要求をしなかった。そればかりか、あるサポーターが浦和のオフィシャル月刊誌で『浦和のウルトラ(サポーター)は韓国人が嫌い』とのコメントを発し、そのまま載せている。クラブも“同罪”だ」(浦和に詳しいサッカージャーナリスト)

クラブとサポーターが掲げる理念に泥を塗った愚挙。試合会場での横断幕禁止処分はユースや女子など、クラブ全カテゴリーの試合にも適用されるという。恥ずべき事件の闇は根深い。

(週刊『FLASH』4月8日号)