中国で、洗濯機の中でダウンジャケットが爆発する事故が続いている。家電業界関係者は、洗濯機の使い方によっては「簡単に爆発します」と説明。テレビ局が真偽を確かめようと試したところ、結果は「×」。やはり爆発し、洗濯機を破壊した。

 浙江省杭州市で、同省嘉興市で、北京市でも爆発した。嘉興市の爆発の場合、脱水を初めて約30秒後、突然「バン!」という音とともに爆発した。洗濯機も砕けて、周囲に飛び散った。ジャケットを洗っていた女性は、「そばにだれか人がいたら、大変なことになっていました」と話した。破壊された洗濯機は、もはや廃棄するしかないという。

 実は、中国では毎年のように洗濯中の「ダウンジャケット爆発」が発生している。秋ごろになると爆発が報じられ、人々は再び不安を高める。

 そこで山東省のテレビ局が試した。爆発が発生しているのは、主に二槽式洗濯機だ。そこで二槽式洗濯機を用い、ダウンジャケットの脱水を試みた。しばらくして「バン!」という音と共に、爆発。ダウンジャケットは脱水槽から飛び出した。

 ただし、別の洗濯機を使って再び実験したところ、爆発しなかった。爆発率は5割という結果だった。

 家電業界関係者によると、ダウンジャケットを洗えると表示などのない洗濯機で洗うこと自体が間違っているという。まず、洗濯機で洗えば羽毛の細かい繊維が傷つき、保温力が低下する問題がある。

 そして脱水した場合、爆発の危険がある。まず、ダウンジャケットはかさばるので、脱水層内部に折りたたむようにして入れることになる。羽毛にはまだ水分があるので、強い慣性力(遠心力)が働き、ジャケットの他の部分を強く押す。

 ジャケットの表面の布は防寒性を高めるために、空気が通りにくいように加工されている。そのため、強く押された布が耐えきれなくなった時に爆発する。 要するに、風船を力ずくで押しつぶした場合と同様の現象で、特に旧式の二槽式洗濯機の場合には、脱水機の回転速度が大きいこともあり「簡単に爆発します」という。

 中国ではこのところ、メディアや家電関連業界などが、「ダウンジャケットを、洗えると明記していない洗濯機で洗わないように」としきりに訴えている。 脱水機が高速回転中に破損した場合、破片が周囲に飛び散ったりする可能性が高い。バランスが崩れてシャフトが折れた場合には、回転部分がそのまま飛び出す場合も考えられ、極めて危険だ。

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◆解説◆

 中国人には、それまでなかった機械類や化学薬品などを大いに歓迎する傾向が強い。「新いもの好き」、「進取の気風に富む」と理解することもできる。さらに、「せっかく手に入れたものは、知恵を絞ってできるだけ活用しよう」という考えも、かなり強い。

 ダウンジャケットが洗濯機で洗うのに適しているとはあまり思えないが、爆発が発生していることは、「とにかく洗濯機があるのだから、洗ってみよう」と考える人が比較的多いと考えてよい。

 中国人の「進取と工夫」の気風は、もちろんプラスの面をもたらす場合がある。やや古い話だが、中国で自転車が普及した時代、揚琴という弦をバチで叩く伝統楽器の演奏者が、バチの打弦部分に「自転車のタイヤの空気入口部分のゴムチューブ」を使い始めた。揚琴という楽器は、それまでになかった柔らかさと輝かしさが両立する音色を獲得することになった。

 伝統楽器に自転車のタイヤ用部品を使うという「異質の組み合わせ」だが、中国人は違和感を覚えることなく取り入れた。

 一方で、“想定外”の問題が発生する場合もある。中国ではかつて、農民がこぞって、収穫した稲や麦をアスファルト舗装の道路に広げた。通行する自動車がゴムタイヤでひくので、苦労せずに脱穀できたからだ。自動車がハンドルを取られたり、農民が飛び出したりして事故が多発するようになったので、禁止されることになった。

 水素ガスを充填した風船の爆発事故が続いているが、ボンベ入りの水素を入手するのでなく、「原料の薬品を買って自分でガスを発生させた方が安い」ことを知り、自分で工夫して充填装置などを作った上で化学反応をさせる人が増えた。その結果、事故はさらに増えたとされる。

 「進取と工夫」の精神が問題を起こすのは多くの場合、知識や配慮が足りず、目先の欲望や都合のよさだけにとらわれることが原因だ。(編集担当:如月隼人)