大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた!
「美魔女」「熟女ブーム」という言葉が少し前にメディアで話題になった。
それならば、大阪のオバチャンの特集があっても良いのではないだろうか。
早速オバチャンとデートしてみたので、その驚くべき生態をレポートしたい。


デートの参考にしたのは、映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』だ。

6月5日(水)にブルーレイ&DVDがリリースされるこの映画は、世界的な文学賞ブッカー賞に輝いたベストセラー小説「パイの物語」が原作で、嵐で船が沈没し、どう猛なトラと一緒に救命ボートで大海原を漂流するはめになった16歳の少年のサバイバルを描いたものだ。

第85回アカデミー賞で11部門ノミネートし、監督賞、作曲賞、撮影賞、視覚効果賞の最多4部門を受賞したこの映画。虎と一緒に過ごすのは一体どんな心境なのだろうか?


登場してもらった大阪のオバチャンは、乙吉久子さん55歳だ。
豹ガラには飽き足らず、さらにどう猛な虎ガラを普段から着こなす久子さんは、大阪を代表するファッションモンスターだ。
そしてデートを体験してもらったのは、同じく大阪に住むイケメン、高見駿吾さんだ。


まず二人が待ち合わせたのは、大阪人の定番待ち合わせスポット「ビッグマン」だ。
大阪梅田駅のこの街頭ビジョンの前で、大阪の恋人達はトキメキながら待ち合わせるのだ。

街頭ビジョンでは様々なプロモーション映像が流れているが、
もし映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のCMが写るとこんな感じになるはずだ。

思わず待ち合わせをドタキャンしたくなる、2匹のトラのコラボレーションだ。


映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』でも、登場するのはトラ1匹だけではない。救命ボートには最初、オラウータンやハイエナなど他の動物も乗っており、主人公はトラ以外にハイエナにも狙われることになる。


さて、まずはボートがある公園に向かう。

トラは普段森の中に生息し、虎ガラは森に溶け込む保護色になっている。
久子さんも虎ガラが保護色になり、特に足元は背景に溶け込んでいる。
このように、森の中だと大阪のオバチャンはプレデターのように透明になるので注意が必要だ。


ボートのある池が見えてきた。
二人は出会ったばかりなので、まだ表情もぎこちない。
今の段階では、恋人というよりは親子に見える。


一方映画では、トラとボートに乗る前の少年も、母親と一緒にいる。
少年の家族は動物園を経営しており、家族と動物が一緒に乗った船が嵐で沈没、トラとボートに乗るはめになる。アカデミー賞の撮影賞、視覚効果賞も受賞したこの映画では、船の沈没シーンまで美しく表現されている。


さて、池についたので、映画と同じくイケメンには上半身裸になってもらう。


映画の中で少年は、このような姿で227日を過ごすことになる。
トラを前にして裸でいるのは、服を着ている時より食欲を誘うので危険だ。


一方、オバチャンもまんざらでもない表情だ。


元々器械体操をしていたイケメンは、オバチャンの食欲を誘うほど良いカラダだ。
しかし覚悟していた惨劇もまだ起こらず、思ったよりおだやかに時間が過ぎる。


映画でも、トラがシマウマなどの他の獲物を狙っている時点では、少年は比較的安全だ。
他の動物が全て食べられてしまった時、獲物は少年だけになる。


かなり遠くからだと仲が良い恋人に見える。


近づくと恐喝しているように見える。パンチラもここまでくるともはや凶器だ。




池の真ん中に、小さい島が見える。
映画でも、少年とトラは不思議な島に立ち寄る。

この島は人の形をしていて、食べものが豊富に手に入る、一見天国のように見える島だ。
しかしこの島には恐ろしい秘密が隠されている。

一方オバチャンも、大阪の秘密のスポットを教えてくれるという。
かなりイケメンに心を開いてきたようだ。

池を後にする二人。オバチャンが勝手に手をつなぎだした。

やがて着いたのは、大阪の千林商店街の中にある大阪のファッションセンター『今一屋』だ。

店にはトラの服がズラッと並んでいる。この店のトラ揃えは日本一だとオバチャンは言う。
大阪の真のオバチャンはここに通うのだという。

新入荷のトラ服を見つけて少女のようにはしゃぐオバチャン。
何が新しいのかまったくわからないが、トラ服にもその年の流行りがあるのだという。
オバチャンもよく考えれば元は女の子だ。ちょっと服の趣味が変っているだけなのかもしれない。


「このトラなんかアナタにいいんじゃない?」と言い出すオバチャン。
どうやら、イケメンにトラ服をプレゼントしたくて店に寄ったようだ。
この店にいると、オバチャンが普通に見えてきて危険だ。

映画では様々な幻想的なシーンが登場するが、ある意味この店も幻想的だ。




オバチャンが買ってくれた服を着てペア虎ルックで歩く二人。

恋人というよりは、何かの罰ゲームに見える。


すっかり上機嫌のオバチャン。イケメンに「アメちゃん食べる?」とアメを差し出す。お礼にイケメンもパンを食べさせてあげる。


食べる瞬間は素に戻るオバチャン。笑顔とのギャップが怖い。

さて、そろそろ別れの時が近づいてきた。

出会った頃の緊張感とはまた違い、いつオバチャンに別れを切り出せばいいのかわからない。

静寂も気まずいので、そもそもの疑問をイケメンに聞いてもらった。

「なんで、虎ガラを着るようになったんですか?」
「おとんが死んだ時からかなあ」
「え?」
「私も三十歳までは子猫のように、可愛く大人しかったんよ。でも父が死んで、兄が『ぽっくり死んだなあ。はよ墓に骨捨てよか』と言ったとき、悲しくて悔しくて、はじめて人に怒鳴ったんよ『捨てるって何なの?おとんはモノちゃうんよ!』ってね。


それが、おとなしかった私が初めてトラのようにブチきれた時やわ。

でもそうなんよ。誰でも死んだらモノになる。じゃあ生きている時だけでもトラのように強く、思ったことは全部言ったろう、そう思ってこの服を着るようになったんよ。

会社でも、それまでは上司にハイハイ言ってたのに、「お前はアホか!」って言ってやったわ。
女は子猫のままじゃナメられる。いつかはトラにならなアカンのよ。

昔の事を思い出して、元気を無くすオバチャン。

「ぼくも…、いろんな格好をしたいんやけど、なんか恥ずかしくて」
「だれも他人の事なんかちゃんと見てへんよ。だから、にいちゃんもトラのように自由に生きればええんよ。体操やってた集中力があれば、きっとなんでもできるわ」
「オバチャン…」

映画でも、トラが弱るにしたがい、少年とトラは心を通わすようになっていく。


「じゃあ、帰るわ」とオバチャンは唐突につぶやいた。
「暗ならんうちに帰りや。私が若い時の写真あげるわ。クシャクシャやけどな。
30年前、私が子猫やった時に、にいちゃんに会いたかったわ」

そう言うとオバチャンは、振り返りもせずスタスタと歩き去り、森に溶け込んで消えてしまった。


そしてこれが、オバチャンの若い頃の写真だ。もし30年前に出逢っていたら…。


オバチャン…。






さすがに若い時の写真は嘘じゃないだろうか。

映画でも、生還した少年は、「本当にトラと過ごしたのか?」と疑われる。
この物語には大きなミステリーがある。
と言うのは、トラと過ごしたという“事実”は、少年以外に見た人がいないということだ。

もし救命ボートに少年以外の人間も乗っていたとしたら?
食べるものに困った人間達が、争ったとしたら?
物語の途中に出てくる、人の形をした、食糧が取れる島の本当の意味とは?

この映画は、大阪のオバチャンの話がどこまで本当かわからなかったように、少年の言う事を信じて見る場合と、信じないで見る場合では、まったく違った楽しみ方ができる。ミステリーを解くカギが、物語の中に散りばめられているからだ。



その為、まだ見てない人は純粋に楽しめるし、一度映画を見た人は、謎解きで楽しめる。

ちなみに大阪のオバチャンのデートシーンでも、映画を見ないとわからない内容が含まれているので、映画を見てからもう一度大阪のオバチャンとデートするのもおススメだ。

この映画は、6月5日(水)にブルーレイ&DVDがリリースされる。この映画を詳しく知るには、まず『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』特集サイトをチェックして欲しい。


■関連サイト
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』特集サイト
映画公式サイト


※写真/竹村信吾 企画・文章/谷口マサト
[PR記事]