今年5月の時点で、中国船による尖閣周辺海域への領海侵犯はすでに昨年1年間の総数を超えた。さらに、沖縄近くの接続水域に、5月だけで3回も中国海軍らしき潜水艦が侵入……。

現代史上類を見ない猛スピードで軍拡を続け、東アジアのパワーバランスを大きく変えようともくろんでいる中国は、近年、海軍国へと大きく舵を切っているように見える。近い将来の「原子力空母」建造・保有が噂される中国に対し、日本はどのように対峙すればいいのだろうか。

某軍事専門誌の現役編集長が語る。

「ヤツらは2020年前後には原子力空母の就航を目指していますよ。これは『089工程』と呼ばれ、排水量9万3000トンだから艦載機総数は70機程度。米海軍の空母「ニミッツ級」と同じくらいです。また、潜水艦も侮れません。今、中国が空母と同じく力を入れているのが潜水艦とその基地の整備ですからね。中国初の戦略原潜『夏』級が失敗作だったことをもって中国に原子力軍艦建造能力はないと主張する人もいますけど、はっきり言ってそれは間違いです。空母も潜水艦も、今後は原子力でどんどん来ますよ」

某政治家の政策ブレーンを務める永田町の情報通もうなずく。

中国は海洋警察の『海監(かいかん)』と、水上民兵ともいうべき漁船団を使って、南沙(なんさ)、西沙(せいさ)諸島でベトナムやフィリピンと衝突し、スカボロー礁ではフィリピン艦艇や漁船を実力で完全排除。見事、実効支配下に置くことに成功しています。どう考えても、次は本格的に日本が狙われますよ」

中国が狙ってくるのは、もちろん尖閣諸島の制圧だ。

「対台湾のケースを見ればわかるように、彼らが得意とするのは敵の消耗を待つ『熟柿(じゅくし)方式』。そのために情報戦、サイバー戦、謀略戦など、いわば不正規戦を仕掛けている」(軍事ジャーナリスト)

「尖閣にしても、正規の軍隊ではなく“漁師と称する海上民兵”を侵攻させておいて、『軍事的侵略ではない』と国際社会にアピールされたら、厄介なことこの上ない。わが国の外交戦略が極端に弱いことは、歴史が示しているわけだから」(元航空自衛隊幹部高官)

戦略的に攻めてくる中国に対し、日本はどう対抗すればいいのか。

「わが国にとっては、技術集約度の高い防衛力の整備には最短でも15〜20年という年月が必要。対中国に関しては“最悪の事態”も考慮に入れた将来の防衛力を探るべきときにきている。専守防衛は守るにしても、これからはROE(交戦規定)などの法整備も必要だろう」(前出・軍事ジャーナリスト)

「2020年代に中国原子力空母中心の戦力を保有・展開できるようになる頃には、おそらくアメリカが国防予算を削減し続けた結果として、西大平洋海域での戦力を縮小・弱体化させている可能性が高い。東アジア地域のパワーバランスは、日本にとってはかなり不利なものになると考えておいたほうがいいでしょう。中国もそれをよくわかっている」(前出・情報通)

前出の軍事専門誌編集長は「今まではアメリカにすべて依存してきたが、独立国なんだから少しは自分でも考えろということ」と本音をのぞかせるが、一方で前出の情報通は、こう訴える。

中国には『遠交近攻』という素晴らしい言葉がある。日本はそれを逆手にとるしかないでしょう。単眼的に中国と対峙するのではなく、地球規模で考えて周辺国と連携し、中国と付き合う。同じように領土・領海問題で中国と対立しているフィリピンやベトナムなどASEAN諸国と手を取り、オーストラリアやロシアも味方につけないと」

敵の敵は味方。日本が中国に対抗するには、アメリカだけでなく、周辺諸国との連携を高めるしかなさそうだ。

■週刊プレイボーイ23号「202X年、“平成の元寇”で日本列島が沈没する!?」より