14日のW杯最終予選オマーン戦に向かうサッカー日本代表は12日ドーハ合宿を打ち上げた。欧州組のうち試合を終えた本田、宇佐美、吉田、乾はこの日合流。高温が予想される試合に備えて午前中に練習が行われ、主に攻撃の組み立てが確認された。

 アウェイのオマーン戦での課題はやはりコンディションと言えそうだ。ほぼ地球の1/3を横断するアジア予選は、その調節の難しさから言ってかなり過酷だ。ピッチの整備度も欧州と比べると劣っていて日本のようにパスワークを主体とするチームにとってはアウェイのゲームは簡単ではない。今回は攻撃の主軸である香川が不在、また内田も故障でその代役と見られた駒野も腰を痛めている。ホームでは圧勝した日本だが、今回のオマーン戦は楽な戦いにはなりそうもない。

 となれば地獄を見てきたキャプテン長谷部には大きな期待をしたい。移籍を試みてマガト前監督に完全に干されてしまったが、監督解任と共にレギュラーとして使われ結果をきっちり出してきている。ブログでは前監督に謝辞すら述べているが、慣れないポジションで使われ、その後は干されるという屈辱の期間の後、すぐに結果を残せる精神力は称賛に値する。僚友の遠藤が負傷もあり万全のコンディションとは言えず、ボランチとして彼のプレーはポイントとなりそうだ。

 攻撃面では本田圭佑に大きな期待がかかるのは言うまでも無い。今季、すでにリーグ戦6ゴールと好調な彼もまた昨年は地獄の中にいた。8月に右膝の半月板の故障で離脱。その後2カ月半で復帰したもののまたも悪化、長期離脱を強いられている。ビッククラブへの移籍を望む彼にとってこの空白は肉体的にも精神的にも楽なものではなかっただろう。

 過去、怪我でその才能を十分発揮できなかった選手は数多い。代表的なのは豪州に移籍した小野伸二だろうか?オランダでは現在マンUのファンペルシーと共にプレー。日本代表の次期中心選手としても期待されていた。しかし五輪アジア予選で悪質なタックルを受け左膝靭帯断裂の重傷を負い、ここから身体のバランスを崩し常に怪我との戦いを強いられるようになってしまう。小野の例を見る通り、故障は治ればすぐに復帰という簡単なものではないのがサッカーというハードな競技の困難さだ。

 その意味で本田が乗り越えてきたものは非常に大きい。常に自らに課題を持って進んでいる彼は非常にクレバーなプレーヤーだ。フィジカルの強さが強調されるが彼は決してそれに頼ったプレーをするわけではない。むしろ彼の長所はテクニカルで戦術眼に優れているところだろう。プレースタイルは違っても同じ戦術眼に優れた香川と相性が悪いわけはなく、その香川不在はチームにとっても彼にとっても痛いところではある。

 単純な力の比較では日本が上なのは間違いない。しかしそれが通用しないのがアジア予選のアウェイ戦。コンディションも万全とは言えない中、本田とキャプテン長谷部の果たす役割はいつにも増して非常に大きい。(編集担当:田村和彦)