2012年5月1日、岩井証券株式会社とコスモ証券株式会社が合併し、「岩井コスモ証券株式会社」が発足し、約半年間が経過した。ネットやコールセンターのサービスが充実していた岩井証券と、地域密着の対面営業に特長があったコスモ証券が一体化することによって、「ネット」「電話」「対面」という3つのサービスがバランス良く取り入れられ、「相談のできる証券会社」としての機能がバージョンアップしたといわれている。(編集担当:徳永浩/撮影:サーチナ編集部)

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 2012年5月1日、岩井証券株式会社とコスモ証券株式会社が合併し、「岩井コスモ証券株式会社」が発足し、約半年間が経過した。ネットやコールセンターのサービスが充実していた岩井証券と、地域密着の対面営業に特長があったコスモ証券が一体化することによって、「ネット」「電話」「対面」という3つのサービスがバランス良く取り入れられ、「相談のできる証券会社」としての機能がバージョンアップしたといわれている。同社の取締役営業本部長の馬場祐一氏に、新生・岩井コスモ証券の営業戦略について、新興国投資を軸に聞いた。

――旧岩井証券、旧コスモ証券ともに、取り扱い商品としてはアジア地域を中心にして「新興国に強い」というイメージがありました。合併して「岩井コスモ証券」になっても、新興国については品揃え、また、どのように商品説明力の面でも強みを発揮していく方針ですか?

 新興国について営業員の知識レベルや説明能力を高めようという努力は、全社を挙げて力を入れています。特に、証券営業については、「最後は人」が決め手になると思っていますので、人材育成については10年がかりでやっていくつもりで進めています。

 その中で、新興国について注力しているのは、これからの世界経済を考えた時に、ヒト・モノ・カネの行き着く先は、新興国に集約されるだろうと思うからです。日本の低金利は簡単には解消されそうもなく、先進各国の経済成長率も大きく伸びる期待が持ちにくい。そのような中で、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ各地域には大きな経済成長が期待できる国々が数多くあります。

 個別の企業についても、たとえば、韓国のサムスン電子や現代自動車などについて、10年前に現在の隆盛が想像できた人は少ないと思います。やはり、日本人としては日本のメーカーが優れていて、世界で活躍していると考えていたと思うのです。しかし、現実はどうでしょうか。そして、10年後、20年後に現在のサムスン電子や現代自動車のように隆盛しているだろう企業が、現在の新興国において育ちつつあるのです。

 ですから、これから資産を形成していこうという世代の方々には、成長が期待できる新興国の資産への投資が必須だと思います。すなわち、新興国に投資する魅力とリスクをお客さまに分かっていただけるように、十分に説明する能力を持った人材を育成することは、これから長くお付き合いいただけるお客さまを増やすことにもつながります。

――新興国と一口にいっても、様々な国があり、地域にも広がりがあります。今、岩井コスモ証券で特に力を入れている国や資産クラスは?

 資産クラスとして新興国の債券に注目しています。注目している国としては、経済成長の結果、国債の信用格付けが投資適格(トリプルB以上)に引き上げられた国、また、投資適格に引き上げられる見込みのある国、そのような国の債券に魅力があると思います。

 そして、債券の中でも、社債に注目しています。以前はその信用リスクや流動性リスクの高さから投資対象として控えられてきた新興国社債ですが、近年、世界の投資家も積極的に投資するようになってきて、10年前と比べると時価総額は18倍に増大し、その額は5000億米ドルと今や新興国国債の時価総額に迫る勢いです。このように国債とのリスク差が縮小してきている中で、利回り面で「国債利回り+α」の高い利回りが付いてくる新興国社債は魅力的な投資対象といえるのではないでしょうか。

――具体的には、どのような商品を提案しているのですか?また、商品提案における証券会社の役割とは何でしょうか?

 新興国の債券については、いくら流動性が高まってきたとはいえ、個人が債券そのものを手にすることは困難なため、主に投資信託の形式で提案しています。たとえば、「エマージング社債オープン(毎月決算型)」は、アジア・中近東、東欧、アフリカ、南米などの新興国の社債にバランス良く投資するファンドです。投資する社債の格付けについても「ハイイールド債」から「投資適格債」まで、広く分散させて投資しています。他にはアジアのハイイールド債に着目した「ING・アジア・ハイ・イールド債券ファンド」や先進国として根強い人気の豪ドル公社債を投資対象とした「インベスコ オーストラリア債券ファンド」などが人気商品となっています。

 また、最近の傾向として、外貨建て資産への投資には為替リスクが付きものですが、その為替益を享受しに行くのではなく、為替動向に一喜一憂しないよう、為替リスクを低減した「為替ヘッジあり」型の商品も人気になっています。

 投資信託については、銀行や郵便局などでも取り扱っています。しかし、銀行等による投資信託の窓口販売は、購入をすすめて投資家のすそ野を広げることには力がありますが、肝心の「現況説明等のアフターフォロー」や「買い増し等の売買タイミング提案」などマーケットの変化に合わせたアドバイス面が弱いように思います。マーケットは、常に変動していますので、より資金効率を高めるためには、単純に買って持っているというだけではなく、マーケットの変化に合わせてポートフォリオを見直すなどのきめ細かなアドバイスが必要です。その点で、専門家としての証券会社の役割があると思っています。

――新興国の株式は? 御社では中国株式やベトナム株式の取扱いもありますが?

 株式への投資も魅力的ではありますが、本格的な上昇トレンドは社債などの債券価格が上がった後になるのではないかと思います。エマージング社債は、現在のところ、徐々に価格が上昇する傾向にあります。今後、リーマン・ショックのような出来事がなければ、一段と社債の価格は値上がりするでしょう。

そして、新興国の債券に十分な資金が入るほどに、グローバルマネーがリスクを取れるようになった後、株式へと資金が向かうのではないでしょうか。このように、新興国への投資マネーは、段階を踏んで拡大していくと考えています。

――最後に岩井コスモ証券の強みとは何ですか?

 強みはありません――と申しますか、単なる情報やサービスの提供にとどまっているかぎり、どれだけたくさんの情報を、どれだけ利便性の高いツールを使っても「強み」とは言えないのではないでしょうか? 今後は、老後を見据えた資産形成を自分で勉強し、実践するといったことが、これまで以上に必要な時代になってくると思いますが、資産形成に必要な金融知識は多岐にわたり、非常に複雑です。

 そのような状況だからこそ、「お客さまが本当に知りたいこと、教えて欲しいことを、わかりやすく、的確に伝える」といった地道な活動が必要だと考えています。このような地道な活動の結果、お客さまに提供する情報やサービスこそ「強み」と言えるのであり、お客さまに評価していただけるものだと思います。そのために、冒頭にも申し上げましたが、お客さまと直接接触する営業員の育成には全社を挙げて取組んでいるのです。

 例えば、営業員を育成する専任のインストラクターを配置し、部店を巡回しながら、若手の営業員を中心に、ロールプレイングをベースにした研修を定期的に行っています。お客さまに伝えるべき内容、話し方など、具体的に指導するためには、実際に話をさせて注意点を指摘するということが大切だと考えています。

 また、女性を中心としたフロントサービス課(FS課)では、「岩井コスモ通信」という定期刊行物を店周に配布しています。そこには、営業員が個々人で工夫した手書きのメッセージが添えられていたり、料理のレシピや豆知識など証券とは一見かけ離れた内容も掲載され、地域で喜ばれている事例もあります。商品ありきでアプローチするのではなく、まずはヒトとヒトとのリレーション作りが大事という考えから生まれたものです。また、人あたりだけではなく、このFS課のメンバーも全員がエマージング投資についての勉強を重ね、お客さまからの問い合わせにキチンとお応えできるように教育しています。

 そして、当社の投資調査部門が独自に編集した投資情報レポートを定期発行する他、エマージング投資に関する勉強会も部店単位で定期的に実施し、社員間の知識レベルの向上に努めています。また、お客さま向けのセミナーも随時各店舗で開催しております。

 これらは、対面営業のみならず、コールセンターの社員も同様です。コンサルタントとして、誰がお客さまに対応しても、プロフェッショナルとしての情報提供ができる体制は整っていると思います。その情報を伝える一人ひとりの魅力を、一段と引き立てていくような人材育成を続けたいと思います。(編集担当:徳永浩/撮影:サーチナ編集部)