10月6日、ベルギーのブリュッセルで開催される『GLORY 2』。この大会は、レミー・ボンヤスキーの復帰戦が中心となり、グーカン・サキ、ムラット・ディレッキー、ニキー・ホルツケンといったスター選手も揃って登場することで、大きな注目を集めている。

日本からコウイチ・ペタスとともに参戦するのは、RISEのリングで活躍している、WBCムエタイ世界ヘビー級王者のファビアーノ・サイクロン。日系ブラジル三世は、決戦を前にどんな心境でいるのか。『世界のトップキックボクサーの90パーセントと契約した』と豪語するGlory Sports Internationalと日本大会を共催するG-Entertainmentの提供による、GLORY Fighterインタビュー=ファビアーノ・サイクロン編をお届けする。

――ベルギー大会が近づいてきましたが、コンディションを含めて調整はいかがでしょうか?

「もちろん調子はいいですよ。追い込んで疲れがピークですけど、大会までに休めばコンディションも上がってくるでしょう。すべて計算通りです」

――海外での試合経験はありますか。

「タイだけですね。ヨーロッパは初めてなので時差が心配です。今は、朝3時に起きるように調整しています。現地の時間に合わせて、朝4時からトレーニングです」

――早朝3時起きですか!? それで何時に寝るのですか?

「クラスの指導がありますので、夜12時です」

――えっ!? 睡眠時間が3時間……。

「といっても朝6時頃にはトレーニングは終わりますので、そのあとに仮眠をとっています」

――今回の試合、何をテーマにしてトレーニングを積んできたのでしょうか。

「フィジカルの強化ですね。ヘビー級で勝つには、フィジカルの強さが必要です。それをずっと取り組んできました」

――具体的には、どのような強化なのでしょうか。

「スピードを落とさないで、パワーやスタミナをつけることです。以前は、自己流で筋トレをしてきたんですけど、やり方を間違えていたみたいです。パワーはついたんですけど、すぐにスタミナが切れてしまっていました」

――そのような状態で、6月にはクリスチャン・ボッシュ選手を飛びヒザ蹴りでKOしてWBCムエタイ世界チャンピオンになったんですか!? 天田ヒロミ選手もKOしていますし、スピードやスタミナがついたら、手が付けられなくなりますね。

「そんなに大袈裟なことではないですけど、以前とは違いますね」

――違いますか!?

「ええ(笑)。トレーニングのメニューは、とても難しいです。ひとつの運動で、パワー、スピード、スタミナを連動させる内容ですから」

――最近は、ひとつのメニューに様々な要素を複合させるトレーニングが、主流になってきています。そのトレーナーとは、どういう繋がりがあるのでしょうか?


「ブラジリアン・トップチームにいたトレーナーです」

――弟のイズマエル・アオキ選手はトップチームに所属していますから、そのトレーナーを紹介されたわけですね。

「そうです。とても優秀で素晴らしいトレーナーです」

――空手からキックボクシングに転向したファビアーノ選手は、MMAにも挑戦したことがありますね(2戦1敗1分)。もう挑戦はしないのですか?

「それでケガをしましたので(ヒザを負傷)、MMAは弟に任せて、自分はキックボクシング一本で勝負をします。ボクシングジムにも通っていますけど」

――目的はパンチの強化ですね。

「はい。まだ始めたばかりなので、どこまで出せるかわかりませんけど、教わったパンチで勝てたらいいですね。これまでは単発のパンチが多かったので、もっと蹴りへ繋げたり、コンビネーションの練習もしています」

――今大会では、フィリップ・ベルリンデン選手と対戦します。印象はいかがですか?

「とても強い選手です。ヒザ蹴りやローキックが強いし、ワンツーとかストレート系のパンチが得意みたいですね。難しい試合になると思いますけど、チャンスなので勝ちたいですね」

――ところで、先日はGLORYの記者会見に参加されていましたが、どんな印象でしたか。

「すごいの一言です。モチベーションが上がりましたよ。レジェンドたちと並んで、立っているだけで興奮しました」

――ピーター・アーツ、セーム・シュルト、レミー・ボンヤスキー、いずれも日本で有名になったレジェンドたちです。

「あの人たちと、あんな大きい舞台で闘えたら夢のようですね」

――勝ちたいという気持ちは?

「当然、ありますよ。誰と闘っても勝ちたいです。でも、まだ闘えると決まったわけではありませんので。今は、今度の試合に集中していますよ。ベルギーで勝たないと、なにも始まりません」

――決して、浮かれているわけではないということですね。

「試合がありますから」

――レジェンドたちと並んでみて威圧感はありましたか?

「アーツ選手は、自分とそんなに身長が変わらないのに、シュルト選手に勝ってますからね。みなさん、強そうでした。自分と比べたら、1対10くらいの力の差はあるんじゃないですか(笑)」

――そんなに差はないでしょう。

「でも、いつかは闘ったみたいですよね。自分の力が、どこまで通用するのか知りたいです」

――差を埋めるためには、どうすればいいですか。

「勝つだけではダメですね。いい試合をしたいです」

――12月の日本大会は、最大で一日4試合も勝たないといけません。

「大変ですね(苦笑)。あのメンバーで4試合ですからね」

――GLORYやヨーロッパの大会を見られて、どんな印象がありますか?

「レベルが高いですね。いつかは、ヨーロッパで試合をしたいと思っていました」

――まさにその悲願がかなったと。ご自身の中で、ターニングポイントになった試合はありますか?

「2006年の試合ですね」

――2006年5月28日、内田洋一選手から判定勝ちを収めています。

「その頃は、ケガもありましたし、引退しようか迷っていた時期なんです。試合をしても、ケガが怖かったし、そんな状況でリングへ上がっていいのか迷っていたんです。でも伊藤(隆)会長が、『辞めたらすべてが終わる。すべてを出し切ってから考えてもいいんじゃないか』と言われて、もう一度、やり直すことにしたんです」

――それからJ-NETのヘビー級王座、初代RISEヘビー級王座、WPMF世界スーパーヘビー級王座を次々と獲得していきました。

「日本のベルトを獲ったら、次は世界と、どんどん欲が出てきましたね。あそこで辞めなくてよかったです。会長のおかげです。WBCのベルトを獲った時にも、コー・ヘマース会長にGLORYの大会に出てみないかと誘いがありました。もっと先へ行けるんだ。だったら、行けるところまで行こうと思いました。不思議なもので、ちょっとしたことで人生は変わるんですね。人生は、やってみないとわからないですよ。だからベルギーで勝って、日本大会に選んでいただけるならば大きな勝負がしたいです」

――恐さはないですか?

「怖かったら、試合はできません。楽しみしかないですよ」

――最後に、どんな試合をしたいですか。

「KOです。お客さんが見たいのは、KOでしょう? だったら自分はKOを狙います」