『スモーク 〜週末、中華鍋で肉を燻す〜』(鎌田香著/講談社)1300円

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スモークといえばアウトドア料理の定番だが、実は自宅でも中華鍋ひとつで簡単に作れることは、案外知らない人が多いかも。

私もつい先日、『スモーク 〜週末、中華鍋で肉を燻す〜』(講談社)という本でそのことを知ったばかり。著者は週末だけオープンする一軒家レストラン「湘南かまた食堂」のオーナーシェフ、鎌田香さん。食堂の看板メニューである出来たてのベーコンをはじめ、人気のスモーク肉レシピを紹介した一冊だ。

私もさっそく本を見ながら「スモークド・チキン」を作ってみたのだが、あまりに簡単でびっくり。熟成や燻製に時間はかかるものの、実際に手を動かしている時間はトータル10〜15分。肝心の味も想像以上で、やわらかな肉の旨味や上品な燻製香には感動すら覚えたほど。あとで家族と食べようと思いつつ、なかなか試食の箸が止まらず一人で半分近くをペロリ。うーん、これはクセになりそう!

実はこの本の編集を担当した朝比奈千鶴さんもスモークの味に魅せられた一人。
「震災後の4月、意気消沈していたときに友人に誘われて『湘南かまた食堂』を訪れ、そのベーコンの美味しさに感動。モリモリと元気を取り戻しました」
と朝比奈さん。しかも、それが中華鍋ひとつで簡単に作れることに驚き、鎌田さんにレシピ化を懇願。本を出版するに至ったそう。
「とくに小さなお子さんがいる家庭では、冷凍保存可能なスモーク肉を食品添加物を使わずに手作りすることで少しでも安全に、美味しく食べてもらえたら、という願いもありました」
そんな思いも詰まった同書。スモークの基本の「き」から説明してあり、イラストも豊富でわかりやすい。良い素材を選んで、本のとおりに進めさえすれば、初心者でも失敗しらずだ。

鎌田さんにスモーク料理のおもしろさを聞くと、
「大きい肉の塊でドカーンと作ってナイフで切り取って食べるところでしょうか。できあがったときの“おーっ”という声と切るときのドキドキだと思います」
もちろん、味も大切な要素。燻製の香りや熟成された肉の旨味はスモークならでは醍醐味だ。

本で紹介しているスモーク肉のレシピは「基本のベーコン」「味噌ベーコン」「スモークド・チキン」「スモークド・チリチキン」の4つだが、やはり鎌田さんイチオシは基本のベーコン。
「難しさはあまり変わらないので、4つのなかから1つだけ作るとしたらぜひ、基本のベーコンを作っていただきたいです。美味しさも、使い回しも、日持ちもいうことなしで、満足していただけると思います」
ちなみにベーコンは冷蔵庫で熟成させる期間を入れると食べるまでに1週間かかるが、今回私が作ったスモークド・チキンならば前日夜に仕込めばOKなので、急な来客にも対応できる。

実際に作ってみるとわかるが、スモーク料理はごちそう感が強く、ホームパーティなどにもってこい。さらに、本では4種のスモーク肉を使いまわした料理レシピも各一週間分ずつ付いているので日常的にスモークを食べる楽しみも広がるはず。来年は鎌田さんによる1日ベーコン教室も開催されるそうなので、本とあわせてチェックしてみては。

週末のおうちスモーク、我が家では定番になりそうです。
(古屋江美子)