12日、橋下徹大阪市長は、次期衆院選における大阪維新の会の候補者問題ついて記者団に問われた際、「道州制」が争点になると語った。国を変えるには、大阪だけでなく、地方統治機構の改革が必要というのが橋下氏の考えだ。だが、自身の出馬について問われると、「絶対に無理」と否定。まずは大阪市の改革に全力を注ぐことを明言した。

 その橋下氏、先のW選の圧勝を受け、強引に改革を進めていくかと思いきや、意外にも慎重な態度を見せているという。橋下氏をよく知る地元紙記者が語る。

「これだけの圧勝です。誰もが大阪都構想まっしぐら、市役所大革命勃発と思っていました。ところが、当選の翌々日、再び会見に望んだ橋下さんの口から飛び出たのは逆の言葉でした。『平松さんの受けた52万票の重さは無視してはいけない。平松市政を継承する』と発言したんです」

 だがこれは、橋下氏流の“アメとムチ”だと同記者は言う。

「橋本さんが圧勝して、市議会も市職員も後がないからとビビっていた。そこに橋本さんから『平松市政を継ぐ。あなたたちのやってきたことは大事なことだったんだ』と助け舟を出されたら、みんな目がウルウルして、『なんて優しいリーダーなんだ、橋下って政治家は』ってことになる(笑)。大勝したからといって調子に乗りすぎると風向きが変わりかねないことを橋下さんはわかっているんです」

 さすが、民意を掴むのが上手な橋下氏といったところか。この大阪維新を手本に、他の地域でも新しい動きが増えている。愛知県では大村秀章県知事、河村たかし名古屋市長が「中京都構想」を掲げ、維新の会との共闘を宣言した。さらに、新潟では県と新潟市を統合する「新潟州構想」が浮上中。新潟市の篠田昭市長は今回の大阪での選挙結果を受けて「橋下さんの突破力は、われわれにとっても非常に大きな武器になる。意見交換していきたい」と語っている。

 橋下氏が口にした「道州制」の実現に向け、地方も動き出した。こうした勢力が次期衆院選で大連合を組めば50議席、100議席も夢ではない。当初は「大阪都構想」にそっけなかった民主、自民両党も、その影響力を危惧してか、勉強会を実施するようになっている。

 大阪から始まる、地方統治機構の改革という日本列島改造論。その本番は、橋下氏が大阪市長を降り、国政に打って出るときか。そのとき日本は変わるかもしれない。

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