「ナント三大陸映画祭」グランプリ受賞後の記念撮影。中央右金のトロフィーを抱えるのが富田克也監督。その右横で黒い帽子を被っているのが相澤さん。
(写真提供:相澤虎之助さん)

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やりました! フランスの「ナント三大陸映画祭」で国内外映画関係者から注目の映画制作集団・「空族」(くぞく)制作の『サウダーヂ』(富田克也監督作品)がグランプリにあたる「金の気球賞」を受賞! 「ロカルノ国際映画祭」でも批評家賞獲得の話題作です。
でも待って。映画祭ってどういうものなの? どうやったら出品できるの? わかっているようで意外とわからない。じゃあ聞いてみよう! というわけで『サウダーヂ』の共同脚本を務めた「空族」の相澤虎之助さんに話を聞いてみました。

――そもそも映画祭にはどうやったら出品できるのですか?
「世界中の映画祭にはディレクター(D)がいて映画祭に合った作品を探しています。日本では『川喜多記念映画文化財団』というところが窓口になって各映画祭に合った映画を紹介することが多いと思います」

――『サウダーヂ』もそうだったのですか?
「僕たちの場合は仏映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』に載った批評記事をロカルノ(国際映画祭)のDが見てコンタクトを取ってきてくれたんです」

「ナント(三大陸映画祭)のDはロカルノの上映を見て興味を持ってくれたようです。彼らも必死で色々な作品を探しているんですよね」

――映画祭はどういう雰囲気なんですか?
「映画が好きな人たちの集まりという感じですね。もっと大きな映画祭だと商業的な部分もあるのかも知れませんが、関係者も本当に映画が大好きという感じでした」

「特にアジア、アフリカ、中南米の映画に絞ったナントは面白い作品からヘンテコな作品まで揃っていて最高でした。『とてもいい映画祭』という評判は聞いていたのですが、色々な文化の人と交流もできて本当によかったです」

――他に印象に残ったことはありますか?
「(ロカルノの)批評家賞を受け取りに行くと、批評家が小難しそうな顔をしながら褒めてくれたんですけど、なぜかみんなパエリヤを食べていました(笑)」

「あとナントは今年は日活100周年をフィーチャーしていて歴代の日活名画のポスターが一面に貼ってありました。でも渡哲也さんのアクション映画に混じってロマンポルノのポスターも同じように貼ってあるんですよ!」

――あまりかしこまった雰囲気ではないんですね。
「色々な映画祭があると思いますけど、監督や役者に気軽に話を聞けるような場合もありますよ」

なるほど、映画祭は敷居が高いのではと思っていましたけど気軽に楽しめそうですね。それではここで世界中の映画祭で高い評価を受けている映画『サウダーヂ』の内容を簡単にご紹介しましょう。
不況と空洞化で疲弊した山梨県甲府市を舞台に繰り広げられる群像劇。先行き不透明な日々の閉塞を必死で生きながら現実にあるここではないどこかに思いを馳せる人びと。ラッパー、建築労働者、ブラジル人移民、タイからの出稼ぎダンサー、それぞれの郷愁を抱え決して交わることのない思い。その中、日本人と日系ブラジル人の二つのヒップホップグループが競い合うパーティーが開かれ、衝撃のラストへ。
プロの俳優の起用は最小限に押さえ、実際に甲府に住んでいる人々が多数出演しており、フィクションながら独特のリアリティーがでていると評判で、今年の邦画ナンバーワンに推す声も少なくありません。

――10月22日から公開がはじまっていましたが、これからどこで観られますか?
「12月17日から東京で公開され、それから順次日本全国を回っていきます。詳しくはホームページで確認してください。

「また12月17日には関西プレミア上映イベントを大阪で開催します。ここでは『サウダーヂ』との批評的補完関係にある『FURUSATO2009』や『国道20号線』も上映します。23日は渋谷でイベントがあります。こちらは僕たち『空族』が影響を受けた監督たちの作品も上映します。絶対楽しいです、オススメですよ。もちろん両イベントともに監督の富田も僕も行きます!」

相澤さんはとにかく気さくで明るい方でした。海外の映画祭には簡単には行けないかも知れませんが、イベントに参加して相澤さんや富田監督のお話を聞くだけでもまったく新しい映画体験ができるかも知れませんよ。
(鶴賀太郎)