ドラムサークル。

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ウォールストリートの一角にある小さな公園から始まった「オキュパイ・ウォール・ストリート(ウォール街を占拠せよ)」運動は、世界各地に飛び火して大きな注目を集めている。

最近は動画メディアの発達により、デモの様子を生で見たりできるのだが、見ているとデモを円滑に行うための様々な「作法」があることに気がついた。

例えば、警察とデモ隊(海外メディアでは「プロテスターズ:Protesters」と言われているみたいだがここではデモ隊という言葉で統一したい)が対峙しているような場面はデモの中でわりとよくある光景だが、このような場面で、警察がデモ隊に何かを話しかけると、デモ隊の先頭の方の人が、全く同じ言葉を繰り返している。 一見すると、「デモ隊の一部が警察に寝返ったのか?」と思ってしまうが、実はそうではなくて、これはデモ隊の後ろの方の人に警察からのメッセージが伝わるように、人間の声で「拡声」している、いわゆるヒューマン・マイクロフォンと呼ばれる手法なのだそうだ。

このヒューマン・マイクロフォン、いわゆる拡声器無しで情報を伝達する有効な手段なのだが、欠点としては、話が長くなってくると覚えきれなくなり、情報伝達の精度が下がってくることである。なので、もしデモ隊に伝えたいメッセージがある場合は、できるだけ言葉を短く切って話すことが重要である。

また、デモではたいてい、太鼓やドラムの音がリズミカルに鳴り響いているが、これは「ドラムサークル」と呼ばれるものである。パレードのマーチングバンドのようにあらかじめリズムが決まっているものではなく、どこからともなく楽器を持ち寄った人々が集まってきて、自然発生的に生まれる即興演奏なのだそうだ。

演奏に当たっては、「ファシリテーター」と呼ばれる役割の人が、演奏者間のコミュニケーションをリズムやボディランゲージ等を使って促す場合もあるが、そうではなく、スタートもストップも有機的で、上手く次のリズムにいくこともあれば自然にそのまま消滅することもある、といった感じのアナーキーなドラムサークルもあるらしい。

筆者も以前、 ある市民講座でドラムサークルを体験したことがあるが、はじめは何のルールも無いことに戸惑いを感じるものの、次第になんとなく他の人のドラムと足並みが揃ってきてリズムが生まれ、それが消滅してしばらくするとまた新しいリズムが何となく生まれてくる、といった自然発生的な感じがなんとも新鮮だった記憶がある。

デモという、ちょっと日常とは異なる世界には、そこに見合った色々な常識が生まれてくる。人間はそうやって、進化していくのですね。
(エクソシスト太郎)