飲用茶としては安全と主張(写真はイメージ)

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   食品に含まれる放射性物質の暫定規制値について、静岡県の川勝平太知事が「何の根拠もない」と怒りをあらわにした。静岡産の荒茶や製茶をめぐる国の対応に、「飲用としては安全なのに」と不信感を募らせる。

   一方、県の自主調査では静岡市藁科地区の一部工場の製茶から、暫定規制値を上回る放射性セシウムが検出され、知事は出荷自粛と自主回収を工場に要請した。

厚労相の要請「甚だ不可解」

   生茶葉や、それを乾燥させた「荒茶」、さらに製茶については暫定規制値として1キログラムあたり500ベクレルが適用される。これまでに神奈川県南足柄市や茨城県全域などで、この数値を超えた茶の出荷停止が政府から指示された。

   だが川勝知事は、暫定規制値を「根拠なし」と切り捨てる。理由のひとつとして、原子力安全委員会が規制値を見直す必要があるとの見解を示した事実を挙げた。6月2日、班目春樹委員長が数値を「非常に粗っぽいもの」と表現し、いつまでも暫定値を使っているのは「ちょっとおかしい」とコメントしている。専門家が見直すべきだと指摘する「物差し」など信用できない、というわけだ。

   知事の怒りは、細川律夫厚生労働相に向けられた。「なぜ科学的根拠のない数値に基づいて、放射性物質の検査を要請したのか甚だ不可解」と批判する。知事は、荒茶の検査をいったん拒否し、後に受け入れた。この対応については「厚労相に敬意を表して実施した」と説明。自身は検査に応じるつもりはなかったが、静岡の茶業関係者が「断ればかえって『危険だから検査しなかった』と疑われるから」と受け入れを求めたのだと打ち明けた。

   6月7、9日に行った検査では、県内19産地の製茶はすべて暫定規制値を下回った。荒茶についても、これまでに検査結果が明らかになった2か所いずれも、規制値以下となった。

   ただその後、県の自主検査を6月13、14日に実施した際には、静岡市藁科地区の工場20か所のうち5か所で、放射性セシウムの値が1キロあたり500ベクレルを超えた。該当する工場には出荷の自粛と自主回収を指示したが、この措置は「茶が危険だからというわけではない。厚労相の要請だから従った」と説明する。あくまで「暫定規制値そのものが問題だ」というのだ。そのうえ、自主回収で損害を被った生産者のために、国に対して補償を求めていくとも話した。

飲用としては6〜7ベクレルにとどまる

   川勝知事が一貫して「静岡茶は安全」と言い続けるのは、実際に茶を飲む際の安全性が重要であり、飲用茶として調べれば放射性物質の量がぐっと減るとの主張からだ。例えば、自主検査で暫定規制値を上回った工場のうち、1キロあたり600ベクレルを超えた2か所でも、飲用茶として県が検査した結果、いずれも同6〜7ベクレル程度とわずかな量にとどまった。飲料の場合の暫定規制値は同200ベクレルだが、この数値に対しても大きく下回る。「全く安全なんです」と知事は語気を強める。

   国との間でもめた荒茶の検査については、今も厚労省に対して怒り心頭だ。静岡県は6月3日、政府に対して荒茶を検査対象にしたことに関する公開質問状を提出、その回答が届いたとして知事は会見で内容を公表した。それによると、「荒茶の一部が食用として供される場合がある」ことが、検査が必要な理由だという。だが実際に食用となるのは、抹茶の原料となる「てん茶」が多く、荒茶はごく一部のようなのだ。

   川勝知事は厚労省の担当者に「荒茶はどのような場合に食用となるのか」「荒茶とてん茶の違いは何か」と尋ねたところ「知らない」と言われたと話す。「その程度のレベル、何が危ないかを説明できない人たちが、安全のために早く(検査結果を)公表しろと命じるんです」と、その対応ぶりを繰り返し批判した。矛先はマスコミの報道にも向けられ、「風評を煽っている」と厳しい口調で応じた。

   約1時間30分の会見の大半を、この問題に割いた川勝知事。「(検査で)600ベクレル超えたとしても、飲用茶にすれば1ケタ。これを危険と言えますか」と、安全性を何度も強調した。

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