環境問題を専門とする英国人ジャーナリスト、ジョナサン・ワッツ氏は、中国の環境問題が重大な局面を迎えているとの見方を示した。中国では、生物種の絶滅が世界平均よりも50%−60%速く進行しているという。中国国際放送局が報じた。

 ワッツ氏はかつて、日本に7年間滞在。読売新聞や朝日新聞など大手メディアの仕事もした。中国でも7年間滞在し、外国人記者協会の会長も務めるなど、アジアとの関係が深いベテラン・ジャーナリストだ。

 ヨウスコウイルカの絶滅問題を扱ったことがきっかけで、環境問題を専門とすることに決めた。50年前に長江流域に何万匹もいたヨウスコウイルカは、現在は絶滅した可能性があるとみられている。ワッツ氏は、人類が地球に登場してから現在にいたるまでの時間より、はるかに長い2000万年にわたり生息したヨウスコウイルカの絶滅は、「驚くべき現象だ。私はインドネシアの地震で発生した大津波や、北京五輪を取材したことがあるが、それよりもはるかに重要な事件だ」と考えたという。

 ワッツ氏によると、中国は環境問題で「ひとつの臨界点」を超える重大な局面を迎えている。そのため、巨大な環境変化が発生することになるという。産業の発展により、環境が大きな影響を受けることは、産業革命当初の英国も、米国も、日本も経験した。「成長期の子どもの顔にそばかすができるようなもの」で、やむをえない面があるが、中国では別の面もあるという。

 ワッツ氏は、客観的にみれば先進国は環境問題の輸出国でもあると指摘。汚染物質や地球温暖化ガスの排出などで環境に大きな影響を与える産業は、英国から欧州全体に、そして米国、日本、台湾、中国と“たらい回し”になってきた。中国国内ではさらに、問題が内陸部へと移動し、現在は「もともと人がほとんどいなかったゴビ砂漠や内モンゴルの草原、チベット、新疆ウイグル自治区に、環境問題が押しつけられている」という。

 中国人自身が大量消費を楽しむようになってきたことも、大きな問題で、世界自然基金(WWF)が作成した、日常生活で1人当たりが排出する二酸化炭素排出量に当てはめれば、「2007年当時の中国人」の生活だと、地球は持ちこたえることができるという。ワッツ氏は「米国のような資源浪費型の生活をすれば、地球が4、5個を消耗してしまうことになる」と指摘し、「われわれも、2007年当時の中国人のような生活をせねばならない」と主張した。(編集担当:如月隼人)



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