■ 第19節

4連勝で一気に上位争いに加わって来たガンバ大阪。中断明けは5勝1敗1分けと好調。対する鹿島アントラーズも中断明けは4勝1敗2分けと順調に白星を重ねてきたが、17節に清水エスパルスに1対2で敗れると、18節はホームでFC東京相手に終盤に追い付かれて1対1のドロー。2試合勝利なし。

ホームのG大阪は<4-2-2-2>。GK藤ヶ谷。DF武井、高木、中澤、安田。MF明神、遠藤、橋本、二川。FW平井、イ・グノ。MF宇佐美はベンチスタート。MF橋本は4試合連続ゴール中。DF武井が右サイドバックでスタメン。

アウェーの鹿島も<4-2-2-2>。GK曽ヶ端。DF新井場、岩政、伊野波、ジウトン。MF中田浩、小笠原、野沢、フェリペ・ガブリエル。FW興梠、大迫。FWマルキーニョスは怪我のため欠場。

■ 1対1のドロー

試合は開始早々に鹿島が先制する。左サイドからFW興梠がクロスを送ると、ニアでFW大迫がうまく合わせてゴールイン。FW大迫は今シーズン3ゴール目となった。G大阪はFW平井とFWイ・グノが前半のうちに何度かチャンスを迎えるが決め切れずに前半は無得点。1対0の鹿島リードで折り返す。

後半開始から鹿島はアクシデントがあったMF小笠原に代えてMF青木を投入する。追いつきたいG大阪はMF宇佐美、MF佐々木、FWチョ・ジェジンと攻撃的なカードを次々と投入する。後半20分に鹿島のMF中田浩が2枚目のイエローカードで退場になって10人になると、ホームのサポーターに後押しされたG大阪がゴール前に攻め込むシーンが増えていく。しかし、サイドからのクロスボールの精度を欠いて得点に結びつけることは出来ない。

しかし、このまま1対0で終了かと思われた後半45分にG大阪は左サイドでボールを持ったMF宇佐美がクロスを上げると、FWチョ・ジェジンが落としたボールをMF橋本が鮮やかなボレーシュート。土壇場で劇的な同点ゴールが生まれて、結局、1対1の引き分けに終わった。

■ 気持ちの悪い橋本

負けると鹿島との差が「8」にまで広がるところであったが、終了間際にMF橋本の劇的なゴールが生まれて貴重な勝ち点「1」を奪った。ヒーローはもちろん同点ゴールのMF橋本英郎。これで5試合連続ゴールとなったが、その5つのゴールのほとんどがスーパーゴールであり、まさしく絶好調といえる。

特筆すべきはゴールシーンだけでなく。この日は、FW平井やFWイ・グノが決め切れなかったためアシストは記録されなかったが、2トップに素晴らしいラストパスを何本も送っており、恒さまの言葉を借りると、「(調子が良すぎて)気持ちが悪い。」というレベルである。

もともと、MF橋本は運動量が豊富で技術も戦術眼もある選手で、G大阪にどんな優秀な選手が加わってきても、ずっとポジションを守り続けてきた。ただ、ゴールセンスやアシストセンスはそれほど高くはなく、チャンスに絡む回数は多いが、プレーの精度はそこまで高くはなく、いわゆる「いい選手だなぁ。」と思われるような選手であったが、予備知識なく最近のMF橋本のプレーを見たら、「完全無欠のスーパープレーヤーだ。」と思うに違いない。

一過性のものではなく、本当に何かをつかんだとすれば大変なことになるだろう。調子を上げてきたG大阪を支えているのは、MF遠藤ではなく間違いなくMF橋本の存在である。

■ ゴールの遠いイ・グノ

今夏にジュビロ磐田から移籍してきたFWイ・グノ。FW平井と2トップを組んで好プレーを見せたが、この日もゴールにはつながらなかった。

昨シーズン途中にジュビロ磐田に加入し、鮮烈なJリーグデビューを果たしたFWイ・グノであるが、今シーズンのFWイ・グノは19試合で1ゴールのみ。いい形でシュートまで持ち込めているが、肝心のシュートが全く入らず、昨シーズンのような得点力は見せられずにいる。

G大阪にはFW平井ら得点の取れる選手がいるのでチャンスメーカーでも機能することが出来ればそれはそれで立派な戦力ではあるが、それではちょっと物足りなく感じる。

今年の夏にジュビロ磐田との契約が切れたが、磐田としても、FWイ・グノが昨シーズンのような得点力を見せてくれていたら、年俸6000万であっても、年俸8000万であっても、全力で引きとめたと思うが、磐田のフロントの評価はシビアだった。FW宇佐美やFWチョ・ジェジン、それに怪我のFWルーカスも控える中、ポジション争いは熾烈であるが、スペシャルな部分を発揮できるだろうか?

■ 2試合連続で追い付かれる

一方の鹿島はFC東京戦に続いて終盤に追い付かれてドロー。勝ち点「2」を失う形となった。MF中田浩が退場し10人になったものの、そこまで守備陣が崩されていたわけではなく、逃げ切れそうな雰囲気もあったが、FWチョ・ジェジンとMF橋本の技術が上回った。

もともと鹿島というチームは「逃げ切り勝ち」が大得意なチームであるが、この日は鹿島らしい徹底した勝利へのこだわりはそれほど見られず。時間を稼ぐのはFWマルキーニョス辺りが非常にうまいので、FWマルキーニョスがいなかった影響は少なからずあっただろうが、悔やまれる試合となってしまった。

■ 夏場に強いのは?

これで鹿島は3試合勝利なし。アウェーの清水戦、アウェーのG大阪戦と難しい相手との試合があったとはいえ、夏場に大失速した昨シーズンのことを少し思い出させるような展開になってきている。

真夏に中二日や中三日の試合が続くのはどのチームにとってもハードなことであるが、一般論として、運動量を武器にする戦うチームは夏場に苦しむようなイメージがある。が、逆にいうと、鹿島のように落ち着いたボール回しの出来るチームや、選手層の厚いチームは、ライバルクラブとの相対論で夏場は優位に働いてもおかしくはないが、結果としてはそういうわけでもない。どちらかというとプラスよりもマイナスに働いている。