ソマリア海賊襲撃の動画:「復讐」が目的

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Nathan Hodge


映像提供:Liberty Maritime社

ケニヤへの支援物資を運搬していた米国船籍の商船『Liberty Sun』号を、4月14日(現地時間)、ソマリア海賊が襲撃した。Liberty Sun号の所有者である米Liberty Maritime社の社長兼最高経営責任者(CEO)Philip Shapiro氏は5月5日、上院でこの事件について証言を行ない、襲撃の様子を撮影した衝撃的なビデオ映像も公開した。

Liberty Sun号はなんとか海賊から逃れたものの、ロケット式手榴弾やマシンガンによる機銃掃射を受けた。[別の英文記事が紹介する海賊側の証言によると、この襲撃は金銭目的ではなく、米海軍が4月12日に米国船籍の船から船長を救出した際にソマリア海賊が複数殺害されたことへの報復という]

動画では、海賊の高速ボートが猛スピードで抜き去るとき、乗組員の一人がこう叫ぶ。「俺の部屋が撃たれた。ベッドが粉々だ」。その後このビデオには、乗組員たちが必死に一連の回避行動を取っている様子が映し出されている。

Shapiro氏は上院で、民間の船会社が武装できるような法改正を要請した。最近の海賊の襲撃は、物事の本質を完全に変えてしまう、いわゆる「ゲーム・チェンジャー」だと同氏は述べた。また、法改正が行なわれている間、政府は危険性の高い航路に関して警備隊を配備する必要があるとも主張した。

「民間産業は、非武装体制から一晩で武装した防御体制に切り替えることはできない。われわれの船には今すぐ――6ヵ月後や9ヵ月後ではなく――防御が必要だ」とShapiro氏は述べた。

船会社各社は、Liberty Sun号の事件を詳しく調査することで、海賊に対する最善の防衛策を見出せるかもしれない。5日に行なわれた上院の別の公聴会では、政策担当国防次官のMichele Flournoy氏と、海軍中将のJames Winnefeld氏(統幕事務局の戦略計画および政策の責任者)が、海賊の襲撃阻止に関する興味深い統計を提示した。

それによれば、成功しなかった襲撃のうち「78%が、襲撃を受けている船の乗組員たちが取った効果的な措置によって阻止された」という。つまり、護衛してくれる艦艇を待つことは最善の選択肢ではない可能性がある。

Flournoy氏とWinnefeld氏は、米国防総省は現在、商船に民間の警備隊を乗船させることが可能かどうかを調査していると述べた。[4月25日、イタリアの客船『MSC Melody』号が海賊に襲撃されたが、乗船していたイスラエルの民間警備会社警備員たちが火器などを利用し、追い払うことに成功したという事件があった。別の英文記事によると、イスラエル軍を退役した若者にとって、こうした民間警備会社への就職は人気があるという]

だが両氏は、「受身的な」警備策のうち、最も効果的だと思われるものの概要も説明した。たとえば、包括的な警備計画やリスク・アセスメント、船外のはしごを取り外すこと、見張りを立てること、照明を制限すること、防壁装具を取り付けること、航路を変えること、乗組員のための「隠し部屋」を作ることなどが盛り込まれている。


Photo:米海軍。画像は別の英文記事より


Photo:米海軍。画像は別の英文記事より

WIRED NEWS 原文(English)

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