サッカー、イングランド・プレミアリーグで相手DFのスライディングを左足に受け、折れた骨が露出する開放骨折を負いながらも、わずか1年で復帰したアーセナルFWエドゥアルド・ダ・シルバ選手(クロアチア代表)。トップチーム復帰戦で2ゴールを挙げる劇的な帰還は、アーセナルサポーターだけでなく世界中のサッカーファンに感動を与えた。

1ゴール目を決めた瞬間に涙があふれたという本人はもちろん、負傷者の続出で内容の悪い試合が続いていたアーセナルにとっても久々の明るいニュースとなった。そんなエドゥアルド選手が、復帰戦の翌日に英紙サンのインタビューに応え、この1年間に負傷させた当事者のバーミンガムDFマーティン・テイラー選手から一度も謝罪を受けていないことを明らかにした。

一時は選手生命すら危ぶまれたエドゥアルド選手の大ケガは多くのサッカーファンに衝撃を与え、テイラー選手はクロアチアのサポーターから殺害予告を受けたほど。のちにサン紙の姉妹紙(日曜版)ニュース・オブ・ザ・ワールドが「テイラーが直接謝罪し、エドゥアルドも受け入れた」とする記事を掲載したが、エドゥアルド選手の指摘を受けて同紙は捏造だったことを認めている。

エドゥアルド選手は、復帰戦で激しく抱き合った医学療法士のトニー・コルバート氏や家族、医師に支えられながら、不屈の精神でこの1年間をリハビリに費やしてきた。その間にイングランドやクロアチア、出身地のブラジルから励ましの電子メールを約2万5000通も受け取ったが、テイラー選手からは一度も直接連絡してこなかったという。

一方、テイラー選手はエドゥアルド選手の復帰について英紙デイリー・メールに安堵のコメントを寄せており、サポートしてくれたアーセナルファンたちにも感謝の言葉を述べた。また、事故後にアーセナルの更衣室を訪れたがエドゥアルド選手が病院に搬送された後だったこと、その夜に病院へ駆けつけたが面会できる状態ではなかったことなどを語り、翌朝に再び病院を訪れて直接会ったと明言している。

ただ、麻酔の影響でエドゥアルド選手の意識はもうろうとしており、言葉の壁もあってコミュニケーションを取ることが難しかったという。この場には、クラブ関係者も同席していたようだ。エドゥアルド選手の友人も「君はテイラーと会った」と証言しているが、本人はサン紙に対し「彼は決してそんなことしていない。ぼくは一度も会っていないんだ」とかたくなな態度を崩さなかった。

テイラー選手の行為は非難されるべきであるものの、故意でなかったことを指摘する声は強い。また、この事故をめぐってテイラー選手が精神的に追い込まれたのも事実だ。とはいえ、体と心に大きな傷を負い、愛するサッカーも奪われそうになったエドゥアルド選手がテイラー選手を受け入れるかは微妙なところで、「2人が再開して握手を交わす日が来るのか」というデイリー・メール紙の質問に対し、テイラー選手は「ぼくは彼を待っていない。たぶん……分からない。彼次第だと思う」と述べている。