《ちょい飲み争奪戦が激化》日高屋は300円以下ハイボール、串カツ田中は100円…ビール減税で「家飲み」も参戦

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9月24日に「幸楽苑」が酒造メーカーを買収すると発表した。幸楽苑は郊外型のロードサイド店を得意としてきたが、今後は駅前出店に取り組むという。一方、「串カツ田中」は異例の値下げに踏み切って割安中華の進出を迎え撃つ。

【画像】「中華料理チェーン店」意識調査で「コスパ・ちょい飲み・1人利用」の満足度で1位になった飲食チェーン

 

そんななか、10月1日からはビールの酒税が引き下げられた。さらに政府は、来年4月1日から酒類を除く飲食料品の消費税率を2年間1%に引き下げる方針を示している。実施されれば、家飲みではビールの税負担軽減に加え、一緒に買う総菜などの負担も軽くなる。ちょい飲み需要の獲得競争が激化しそうだ。

より鮮明になった「日高屋」対「幸楽苑」の構図

幸楽苑は郊外型のラーメン店で拡大してきたが、2024年ごろからはディナーメニューの拡充を図ってきた。夜需要の拡大に合わせて「四川麻婆豆腐セット」などを、ディナー限定メニューとして売り出したのだ。

幸楽苑はラーメン店から中華ダイニングへと軸足を少しずつ動かしていた。一部店舗の営業時間も延長し、夜需要を積極的に獲得するようになった。2026年4月~8月の直営店の売上は前年同期間比9.5%増、客数は同7.6%増と好調だ。

そうしたなかでの、酒造メーカーの買収発表、駅前出店の宣言だった。幸楽苑は中華料理チェーンの日高屋により近づいた印象を受ける。

繁華街型の割安な中華店を得意とするハイデイ日高は好調そのものだ。2026年3月~5月は売上高・営業利益ともに1割以上増加している。

日高屋の好調の一因になっているのが、ちょい飲み需要の獲得だ。今年3月、ハイボールを税抜300円以下で提供する「Wハイボール祭」を実施。このキャンペーンは好調で、4月末終了予定だったが5月14日まで延長し、7月31日からは9月17日までは第二弾も実施した。

日高屋は低価格で料理の品数が多く、提供品質、サービスが安定している。サンケイリビング新聞社の「中華料理チェーン店」に関する意識調査で、日高屋は「コスパ・ちょい飲み・1人利用」の満足度で1位を獲得した。消費者のコストパフォーマンスの評価は特に高い。

ハイデイ日高は、さらなる飲み需要獲得のために「焼鳥日高」の出店も強化していた。その隙間を縫うようにして、幸楽苑が駅前割安中華という形態で勝負をしかけてきたわけだ。

逆張り戦略を打ち出した「串カツ田中」

こうした動きを牽制するのが「串カツ田中」だ。

この9月に異例の値下げを宣言した。「こだわり酒場のレモンサワー」や「こだわり酒場のタコハイ」などの酎ハイを、9月10日から税抜450円から290円に引き下げた。さらに「無限ハイボール」と銘打ってトリスのハイボールを税抜100円で提供する。

コロナ前の多くの居酒屋は、宴会客と常連客、新規客の三層構造で成り立っていた。しかし、宴会需要が失われたことで、客数のバランスが大きく崩れた。それを補うため、値上げや量を減らす実質的な値上げに踏み切る店が多かった。

「串カツ田中」は、ドリンク値下げを集客のフックにして来店頻度を高めようとする“逆張り”の施策に力を入れているように見える。

インフレ下では、低価格居酒屋が店舗網を拡大している。レモンサワーを税抜50円という圧倒的な低価格で提供する「居酒屋それゆけ!鶏ヤロー!」は、2025年の80店舗台から100店舗規模への拡大を進めている。レモンサワーを税抜80円で提供する「とりいちず」は2026年5月に100店舗を達成した。

居酒屋は低価格帯と中価格帯の色分けがはっきりしてきた。経営者たちは今後どちらのカテゴリーで勝負するかの判断が迫られるはずだ。

「個人店や小規模の運営会社でアルコールなどを安く提供するのは難しいでしょう。低単価で利益を出すには、客数を底上げする十分なキャパシティが必要だからです。必然的に、安売りは大手から中堅チェーンの施策になるはずです」

そう話すのは、都内を中心に複数の居酒屋を展開する企業のオーナーだ。居酒屋の低価格競争は大手・中堅チェーンを中心に激しさを増す可能性が高い。

ビール減税と食品の消費税引き下げで「家飲み」に追い風?

ダークホースになりそうなのが「家飲み」だ。

10月1日の酒税改正で、ビール、発泡酒、第3のビールの税率が一本化された。ビールの税負担が軽くなることで、店頭価格にも値下げ圧力が働く可能性がある。価格を理由に発泡酒や第3のビールを選んでいた人にとって、ビールが選択肢に入りやすくなるだろう。

さらに政府は、来年4月1日から、現在軽減税率が適用されている飲食料品の消費税率を期間限定で8%から1%に引き下げる方針を示している。実施には今後の法案成立が前提となる。なお、ビールなどの酒類はこの減税の対象外だ。

それでも家飲みにとっては追い風になり得る。ビールは酒税改正によって税負担が軽くなり、一緒に購入する総菜やつまみなどは、政府方針通りなら消費税負担が軽減されるからだ。自宅で手軽に総菜とビールを楽しむ、そんなライフスタイルが今以上に広がる可能性もある。

また、スーパーやコンビニ、ディスカウントストアなど各社は総菜に力を入れており、選択肢も広がっている。

宝酒造は「週1回以上お酒を飲む20代1,000人に聞いた飲酒実態調査」を実施しており、お酒を飲むシーンを尋ねている。その回答で最も多かったのが「自宅内で1人飲み」の77.7%、「自宅外で1人飲み」は29.4%(複数回答)だった。

20代に限った調査ではあるものの、自宅での1人飲みが身近な選択肢になっていることがうかがえる。税負担の軽減は、こうした家飲み需要をさらに後押しする可能性がある。

「日高屋」や「幸楽苑」はコストパフォーマンスが強みだ。「串カツ田中」などの居酒屋はエンタメ性を高めて非日常感を演出している。そして家飲みは自分のペースで楽しめる気軽さに、割安感が加わる。

異なる強みを持つ中華料理店、居酒屋、家飲みの間で、ちょい飲み需要を巡る競争が激しくなりそうだ。

取材・文/不破聡   写真/shutterstock