疲れたときにマッサージは逆効果…優しく刺激するだけで「ガチガチに固まった首」がゆるむ"手の中の場所"
※本稿は、松本恒平著・野上徳子監修『体から脳を癒やす すごい自律神経セルフケア』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■長時間のマスクで「脳が酸欠」になる
ここ数年で、マスクをするのが当たり前になりました。感染対策として必要な場面はもちろんありますが、「いつもマスクをつけっぱなし」のリスクについても、知っておく必要があります。
マスク生活が自律神経に与えるダメージは、主に2つあります。
1.脳が「酸欠」になる
マスクをしていると、呼吸はどうしても浅く速くなりがちです。吐いた息の一部を再び吸い込むことで、わずかに二酸化炭素濃度が上がります。
健康な肺であれば、これに対して呼吸量を増やすことで対応できますが、その「頑張って呼吸している」状態そのものが、脳には「ちょっと苦しい」という信号として伝わります。
これが続くと頭痛が起きたり、集中力が落ちたりすることがあり、自律神経は小さな警戒状態のままになってしまいます。
2.「ゴム紐」が平衡感覚を狂わせる
意外と知られていないのが、「耳にかけるゴム紐」の弊害です。耳のまわりには、こめかみを通る側頭筋や、顎の開閉を支える顎関節といったデリケートな部位が集まっています。さらにそのすぐ近くを、顔の感覚を脳に伝える三叉神経や後頭神経が走っています。
マスクのゴム紐で一日中、耳が引っぱられていると、これらの筋肉や神経が継続的に圧迫・刺激されます。
実際の調査では、マスクを長時間使用する人の9割以上が、こめかみ・頬・耳のまわりの筋肉に痛みを感じたと報告しており、着用後1時間以内に痛みが出始めるケースも少なくありません。
■あなたの脳はもっと酸素を欲しがっている
三叉神経は、自律神経系とも密接に結びついている神経です。耳元での小さな圧迫が、顔の筋肉の緊張、頭痛、そして自律神経の「警戒モード」を、1日中じわじわと刺激し続けている--これが、ゴム紐のもう一つの隠れた弊害です。

その結果、「なんとなくフワフワする(めまい)」「まっすぐ立っているだけなのに疲れる」「頭が締めつけられるように痛い」といった謎の不調を引き起こすのです。
もちろん、TPOに合わせてマスクは必要ですが、「誰もいない屋外では外して、深呼吸をする」「帰宅したらすぐに外して、耳をやさしくマッサージする(耳引っぱり)」これだけでも、脳の疲れはまったく違ってきます。
あなたの脳は、新鮮な空気を欲しがっています。1日のうち数分でもいいので、マスクを外して、脳にたっぷりと酸素のご褒美をあげてください。
■「スマホ酸欠」が急増している
「手は突き出た脳である」これは哲学者のカントの言葉ですが、医学的にも非常に正しい表現です。脳の中には、体の各部位に対応する地図があります。
「脳の中の小人」という有名な図があり、手と口(舌)が大きく描かれています。手の中でも指、特に「親指」が占める領域が、異常なほど大きくなっています。これはつまり、「手や指の状態は、そのまま脳の状態を映し出している」ということです。
手が疲れていれば脳も疲れているし、逆に手を癒やすことで、脳の広い範囲を癒やすことができるのです。
■親指の付け根を押して「痛い」なら注意
現代人の脳がかつてないほど疲労している最大の原因の1つは、間違いなく「スマホ」です。私たちは毎日、スマホの画面を数えきれないほどスワイプし、フリックし、タップしています。このとき、最も酷使されているのが「親指の付け根(母指球(ぼしきゅう))」です。
自分の手のひらを見てください。親指の付け根のふっくらした部分、そこを押してみると「痛い!」と感じませんか? もしカチカチに固まっていたり、押すと激痛が走ったりするなら、あなたの首もガチガチに固まっているはずです。
筋膜の視点から見ると、親指の付け根は「腕~肩~首~頭」へと1本のラインでつながっています。ですから親指の付け根の筋肉(母指球筋)が固まると、手首や腕の筋膜を引っぱり、それが肩こりや首こりに直結します。
また、東洋医学では、親指は「呼吸器」に関連しています。つまり、親指の付け根がパンパンに張っているときは、首がガチガチに固まって呼吸が浅くなっています。結果として脳に十分な酸素が届きにくくなり、脳がギュッと締めつけられるような脳過労とリンクしているのです。
■手の「グーパー運動」は逆効果である
脳の健康維持や老化防止に、「ボールを握ったり、指をグーパーしたりするのが効果的」といわれることがあります。
確かに、指を動かすこと自体は脳の活性化によいのですが、現代人の私たち、特にデスクワークやスマホを多用する人にとっては、「強く握る運動」は逆効果になることが多いです。
なぜなら、私たちは日常生活ですでにいろいろなものを「握りすぎて」いるからです。スマホを握り、マウスを握り、つり革を握り、ストレスで手を握りしめ……。屈筋(くっきん)(曲げる筋肉)ばかりを使いすぎて、腕の内側が縮こまり、猫背を助長させてしまっています。
そんな状態でさらに筋トレのようにグーパー運動をしてしまえば、筋肉はより硬くなり、自律神経の緊張(交感神経)を煽ってしまいます。今、私に必要なのは「鍛える」ことではなく、「ゆるめる」「血流をめぐらせる」ことです。
■脳がとろける「親指エッジ刺激」
そこで私が提案したいのが、道具もいらず、いつでもどこでもできる「親指エッジ刺激」です。ポイントは「絶対に強くやらないこと」。「マッサージ」というよりは、「脳への言号入力」に近い繊細なケアです。

まず、左手の手のひらを出します。右手の親指の「爪の角(エッジ)」を使います。左手の親指の付け根(母指球)の盛り上がっている部分に、右手の親指の爪の角を当てます。
「グリグリ」と押し込むのではなく、皮膚の表面を「クリクリ」とやさしく刺します。強さは「痛気持ちいい」の手前、「あ、触れているな」と感じる程度で十分です。
場所を少しずつずらしながら、硬いところや、心地よいところを探して刺激していきます(反対の手も同様に行ないます)。たったこれだけです。
実は、手の指に向かう神経はすべて「首」からスタートしています。そのため、この親指の付け根をゆっくり丁寧にほぐしてあげると、指先の血流がよくなるだけでなく、神経の根本である「首の筋肉」の緊張までフワッと解けていくのです。
やってみるとわかりますが、親指の付け根が温かくなってくるだけでなく、不思議と頭がスッキリしたり、目の奥の疲れが抜けたりする感覚があるはずです。
■首から腰、骨盤まで自然にゆるむ
「こんなに弱い刺激で本当に効くの?」と思うかもしれませんが、むしろ弱いからこそ効くのです。

強い刺激(マッサージ)は、脳にとっては「攻撃」と認識され、防御反応を引き起こします。しかし、爪の角を使ったような「点」での微細な刺激は、脳の感覚センサーを鋭敏にし、「ここが疲れているんだよ、ゆるんでいいんだよ」という情報をダイレクトに届けます。
親指の付け根が柔らかくなると、連動して首の筋肉(胸鎖乳突筋など)がゆるみ脳への血流が一気に改善します。
さらに人間の体はつながっているため、首のこりがとれると、背中を通して連動している「腰」や「骨盤」まわりの筋肉まで自然とゆるみます。
仕事の合間や、寝る前のリラックスタイムに。「今日も一日、よく働いてくれたね」と自分の親指をいたわるように、クリクリと刺激してあげてください。
自分1人で行なうのも手軽でよいですが、2人で行なうのもおすすめです。お互いに指のマッサージをし合うことで、自律神経にもプラスの反応が出やすくなります。そのやさしさが、過熱した脳をクールダウンさせる最高の薬になります。
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松本 恒平(まつもと・こうへい)
整体師
柔道整復師、カイロプラクターB.C.Sc.、オステオパスD.O。1980年生まれ。京都産業大学卒業。吉本興業に5年間在籍。同期生はジャルジャル、銀シャリなど。椎間板ヘルニアを患い歩けなくなり、整体で改善したことで治療家の道に入り、整体院ボディーケア松本を開院。独自の癒楽心体療法を開発、セルフケアのアプローチが評判に。特に、血液、リンパ液に次ぐ「第3の体液」と呼ばれる脳脊髄液に注目、免疫を高めるメソッドとして確立。さまざまな体の不調に大きな治療効果を上げている。多数の著名クライアントからの信頼も厚い。元関西医療大学準研究員、日本統合手技協会代表理事。
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野上 徳子(のがみ・とくこ)
内科医・心理カウンセラー
久留米大学医学部卒業後、岡山大学第一内科に入局。複数の病院勤務を経て、現在は松山市内の病院で内科診療に携わる。内科医として30年、のべ9万人以上の患者を診療。高血圧、糖尿病、胃腸症状、不眠、動悸、慢性疲労など、さまざまな心身の不調に向き合う中で、症状の背景にあるストレス、思考習慣、生活習慣、心と体のつながりに着目。産業医として働く人の健康管理にも携わり、薬物療法に加え、心身両面から健康を支える医療のあり方を探究している。トランスフォーメーショナル・コーチ、米国NLP協会マスタープラクティショナーとしても活動。
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(整体師 松本 恒平、内科医・心理カウンセラー 野上 徳子)
