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経済的な余裕がある親世代が増える一方、良かれと思った過剰な干渉が原因で子ども世代と断絶するケースも。なぜ「良かれと思ってした援助」が拒絶されたのか。ある親子の事例から、現代の親子間における適切な距離感と支援のあり方を考えます。

「孫のため」が始まりだった

「もう二度と連絡してくるな!」

東京都在住、田中誠さん(73歳・仮名)、美智子さん夫婦。年金は月32万円(手取り27万円)、金融資産は預貯金2,800万円含め、4,000万円ほど。

負債らしい負債もなく、年金だけで生活できる、さらに貯蓄までできるほどの余裕があったため、子ども家族への経済的な支援に対しては、何のためらいもありませんでした。

「今の子たちは、何かとお金がかかる。少しでも助けてあげられたら、という思いでした」

厚生労働省『2025年 国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯の生活意識について「大変苦しい」が27.6%、「やや苦しい」が33.9%に達し、合わせて61.5%と実に6割超が「苦しい」と回答しています。

このように、支援を必要とするほど現役世代が経済的に大変な状況にあるからこそ、親からの自発的な援助には感謝しつつも、どこか複雑な感情を抱くことも珍しくありません。

同じく東京都在住の長男・健太さん(42歳・仮名)。妻・奈緒さん(40歳・仮名)と、中学1年生の長男、小学4年生の長女がいます。共働きで夫婦協力し合いながら子育てをしてきましたが、誠さん夫婦は、孫が生まれてから何かとお金を出してきました。

お食い初め、誕生日、七五三、小学校の入学・卒業--節目節目にはきちんとお金を出す。ランドセル、学習机、習い事の月謝--教育に関することは、さらにお金に糸目をつけませんでした。

「孫に我慢させたくなかったんです。お金があるなら、子どもや孫に使ってあげるのが親として当然だと思っていました」

ところが、問題はお金だけではありませんでした。

「中学受験をさせなさい」

最初は、何気ない一言でした。

「このまま公立でいいの?」

「塾は早いうちから通わせたほうがいい」

教育に投資をする。それが親として子にしてあげられる、最も重要なことだと田中さん夫婦は考えていました。

「長男も中学受験をさせました。そのおかげで一流大学にも行けたし、一流企業にも就職できた。いま、幸せそうなのは、教育に投資してきたからこそなんです」

一方で、奈緒さんは、やんわりと断りました。

「本人がまだ受験したいと言っていないので、今は考えていません」

しかし2人は納得しませんでした。

「本人が決めるって言っても、子どもなんだから。親が道を作ってあげないと」

「私たちは教育に失敗してほしくないだけだ」

執拗に中学受験を勧める親にキレた!

2人の言葉に違和感を覚えた健太さん。子どもの教育に口を出さないよう、釘を刺しました。しかし後日、美智子さんは孫に直接こう話しました。

「中学生になったら、もっと勉強しないとね。おばあちゃんは中学受験したほうがいいと思うよ」

孫は「パパとママに聞いてみる」と答えました。この話を聞いた健太さん、堪忍袋の緒が切れたといいます。

「子どもに言うなんてどうかしてる!」

そんな怒りの言葉に対して、「お金は出すんだから。あなたたちのことを思って言っているのよ」と反論。しかしこの言葉は、火に油を注いだだけでした。

「金を出すことを理由に自分たちの考えを押し付けるな。俺たちは一度も『お金を出して』と頼んだことはない」

誠さんには、意味が分かりませんでした。これまで何も言われなくてもお金を出してきた。孫にもお金を使ってきた。それなのに、なぜ感謝されるどころか、拒絶されるのか。

「だったら、もう何もしてやらない」

思わずそう言った誠さんに、健太さんは「それでいい」と答えました。そんなやりとりがあったあとでも、LINEで中学受験を促したそうです。それに対して、健太さんは「もう二度と連絡してくるな!」というメッセージを送りました。誠さんと美智子さんをブロックしたそうです。

親が良かれと思って孫の教育に過剰に口を挟む行為が、親子関係の致命的な破綻を招く--国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査(2022年)』によると、子どもの「教育・進路を決めるときの相談相手」として「夫」を挙げる妻の割合が87.7%に上るのに対し、「親(祖父母)」を挙げる人はわずか4.2%にとどまります。

データが示すように、現代の夫婦にとって子どもの教育方針は夫婦間のみで決定すべきプライベートな領域。祖父母が踏み込むべきではないといえるでしょう。金銭的支援を口実に介入することは厳に慎み、一歩引いて夫婦の判断を尊重する姿勢が求められています。