【RIZIN】朝倉未来に憧れ、青木真也に学ぶ20歳の超新星 髙阪剛は規格外の成長スピードを絶賛
髙阪剛インタビュー 前編
8月11日の「RIZIN.54」で元王者クレベル・コイケを3-0の判定で完封し、フェザー級のトップ戦線へ躍り出た20歳の秋元強真(あきもと・きょうま)。朝倉未来に憧れ、「JAPAN TOP TEAM」(JTT)に所属しながら青木真也のもとで組み技を磨く新星の急成長は、日本のMMA界に大きな衝撃を与えた。
16歳でプロデビューし、戦績は13勝1敗。進化が止まらない20歳の新星について、元UFCファイターでRIZIN解説者の髙阪剛氏に聞いた。

RIZINのフェザー級でトップ戦線へと駆け上がった20歳の秋元 photo by 東京スポーツ/アフロ
──秋元強真選手は青木選手のもとで組み技を学んでいますが、クレベル戦をどう見ましたか?
「もともと高い才能がある選手ですが、特にすごいと思うのは、自分の強みを出すための試合の作り方です。距離設定もそうですし、最初のプレッシャーのかけ方もそう。相手が誰であっても、試合が始まったあとに『どうすれば自分が生きるのか』を察知する能力がすごく高いと思います。いわゆる"試合勘"のようなものもあると思いますが、それだけで片づけられないものを感じるんですよね」
──6歳から中学卒業まではクラブチームでサッカーをやっていて、高校には進学せずMMAの世界へ。16歳でプロデビューして現在は20歳ですから、成長スピードがかなり速いですね。
「そう思います。MMAは、単純に早く始めればいい競技ではないんですよ。MMAという競技を理解することがものすごく重要ですから。普通はそこにたどり着くまで、かなりの年月がかかります。20代後半から30代にかけてチャンピオンになる選手が多いのも、そういうところがあると思うんですよね。技術だけじゃなくて、人間としての成熟も必要になる競技なので。
もともとあった才能が、格闘技を始めたことで覚醒したのかどうかはわかりません。もちろん経験によって得たものもあるでしょうけど、それだけでは説明できない。極端に言えば、普通の選手が15年以上かけて積み重ね、20代後半でようやく到達するようなところへ、彼は数年で来てしまっている。そう見えますね」
【強くなるための道が見えている】──秋元選手はクレベル戦でもそうでしたが、プレッシャーをかけて相手を後退させる場面が多い印象です。あれは、組みになっても大丈夫という自信があるからでしょうか?
「そうだと思います。実際のところはわからないですけど、その自信をさらに引き出したのは、青木との練習じゃないかな、と自分は見ています」
──朝倉選手に憧れてJTTに入り、組み技を青木選手のところへ学びにいく。強くなるために環境や人を柔軟に選んでいますね。
「強くなるための道が見えているんじゃないでしょうか。道が見えていないと迷走してしまいますが、彼にはそれが見えているから中央突破できる。本人のなかに『なんでこんなことをやるんだろう?』という迷いがないんでしょう。『これは自分に必要だ』と思えばやる。しかも、それにちゃんと興味を持って取り組める。そこも、成長の速さにつながっているんじゃないですかね」
──秋元選手は高校生(自由ヶ丘学園レスリング部)を相手にレスリングも練習しているそうです。大学生などを相手にしたほうがいいのでは、という声もあるようですが......。
「これも想像ですが、今の秋元が大学トップクラスのレスラーとガンガンやったら、"やられないための練習"になってしまう可能性がある。自分から攻撃する力を伸ばす時間も重要ですから、高校生を相手に選んだのかもしれませんね。
まだ20歳だからできることでもあると思います。たとえば、30歳前後になってから『高校生とレスリングをやりたい』と思っても、『じゃあ、どこへ行けばいいんだ』『どうお願いすればいいんだ』となってしまう。でも20歳なら、受け入れる側にもそれほど違和感がないですよね。若さがいい方向に作用している部分もあると思いますね」
──成長の方法に関して、型にこだわらない選手ですね。
「そういうやり方、すごく好きですね。自分もどちらかというと同じタイプだったので。『これが必要だ』と思ったら、とりあえずやってみる。自分がアメリカに行った時なんて、今みたいにインターネットもありませんでしたから、身体ひとつで行ってみるしかなかったですよ」
──髙阪さんは強くなるために必要なものを求めて海を渡りました。秋元選手にも、そういう好奇心を感じますか?
「感じますね。自分も『強くなりたい』『試合で勝ちたい』という目的はありましたけど、それと同じくらい『興味があるから』ということも大きかった。秋元にも『やってみたい』『取り組んでみたい』という好奇心がある。それが成長速度を加速させている要因のひとつだと思います」
──秋元選手はクレベル戦のあと、9月10日の『超RIZIN.5』で行なわれるラジャブアリ・シェイドゥラエフ(現RIZINフェザー級王者)対AJ・マッキーの勝者との対戦を希望していました。髙阪さんはどう考えますか?
「ひとつ言えるのは、どちらかとの試合が組まれたら、秋元はもうひと段階、違うステージで強くなるということ。あのレベルの相手と戦うために取り組む練習の熱量、準備の質もまったく変わるはずです。
勝敗を抜きにして、長い目で見ると、今ぶつかる価値は十分にあると思います。そういう相手と巡り合えるかどうかは、選手にとってものすごく大きいんです。そして、そういう相手を引き寄せているのは秋元本人。あとはタイミングや、本人のコンディション次第だと思います」
(後編:平本蓮のMMA復帰戦について、髙阪剛は「緊張感もある」 超RIZIN.5のもうひとつの注目カードも展望した>>)
【プロフィール】
■髙阪剛(こうさか・つよし)
学生時代は柔道で実績を残し、リングスに入団。リングスでの活躍を機にアメリカに活動の拠点を移し、UFCに参戦を果たす。リングス活動休止後はDEEP、パンクラス、PRIDE、RIZINで世界の強豪たちと鎬を削ってきた。格闘技界随一の理論派として知られ、現役時代から解説・テレビ出演など様々なメディアでも活躍。丁寧な指導と技術・知識量に定評があり、多くのファイターたちを指導してきた。またその活動の幅は格闘技の枠を超え、2006年から東京糸井重里事務所(現・株式会社ほぼ日)にて体操・ストレッチの指導を行っている。2012年から2015年までラグビー日本代表のスポットコーチに就任。現在は、RIZINで活躍する堀江圭功選手や上田幹雄選手らを指導している。
篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
