80キロを走り抜いた星野真里

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 今年の日本テレビ「24時間テレビ」の平均世帯視聴率は10・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)で、全49回中41位タイ。平均個人視聴率は6・4%で、集計が始まった1997年以降の全30回中28位という結果に。これを専門家はどう見たか--。

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 8月29日午後6時30分、番組は総合司会を務める内村光良の言葉で始まった。

「内村光良です。また今年ですね、またしても私の故郷・熊本が地震に遭い、今も多くの人が苦しい思いをしていらっしゃいます。そして連続する豪雨、本当に不安で日々を過ごしていらっしゃる方も多いと思います。思いがけない事故や病気、本当に一日一日を大事に踏ん張って、頑張ってですね、なんとか元気になって、そう願っております。家族や仲間と共に」

80キロを走り抜いた星野真里

 第49回を迎えた今年の「24時間テレビ」のテーマは「わたしの家族の話~あなたは誰を思う?」だった。番組を見たメディア文化評論家の碓井広義氏は言う。

「オープニングでウッチャンが語ったように、今年は熊本地震を大きく取り上げるものと思っていましたが、能登や福島のコーナー企画はあっても、熊本についてはそうでもなかった。ちょくちょく熊本地震の緊急募金の呼びかけがあったのと、メジャーリーガー・村上宗隆選手による故郷・熊本に向けたメッセージが放送された程度でしたね」

 熊本地震は7月に起きたばかりだから、被災地には迷惑をかけられないという配慮があったかも知れない。だが、現地に行かなくても何か方法はあったのではないか。

「翌日早朝には福井県にレベル5の大雨特別警報が出されましたが、速報が字幕で流れた程度。もちろん番組の間に放送される短時間のニュースでは報じられましたが、『24時間テレビ』がタイムテーブルを変更することはありませんでした。生放送、しかもチャリティー番組としての強みを活かせていなかったと思います」(碓井氏)

 ちなみにウラのNHKでは、警報が出された4時半から午前中は、ほぼこのニュースを流し続けていた。

チャリティー事業として無視できぬ番組

「視聴率を見ても、やはり大型感動テレビ番組としての全体的なパワーは低下していると思います。しかし、星野真里さんがチャリティーランナーを務めたマラソンのゴールでは、瞬間最高視聴率となった20%に達しました。かつてなら35~40%に匹敵する数字です。つまり、全体を視聴する視聴者は減っている一方で、感動的な瞬間は切り取って見たい視聴者は存在する、そんな二重構造を表していると思います」(碓井氏)

 番組終了時点の募金総額は7億2560万円。そのうちチャリティーランナーを務めた星野の「できた!を増やす子ども募金」は3億8054万8400円だった。一方、昨年はチャリティーランナーを務めた横山裕の「マラソン子ども支援募金」が番組終了時点で7億40万8600円。そして募金総額は史上最高の20億1332万6946円を記録した。

「昨年からは半減したとはいえ、この金額を2日間で集めたわけです。しかも、昨年までの48年間で469億3057万円もの寄附金を集めた実績がある。もはや単なるエンターテインメント番組としての評価だけでは測れず、巨大なチャリティー事業であり、番組は募金という社会活動を実現するためのプラットフォームと化しています。日本テレビにとって『24時間テレビ』は、メディアとしての存在感が低下する中で、テレビには人や社会を動かす力があることを証明する武器ともなっていると思います」(同)

 では、エンターテインメント番組としての「24時間テレビ」はどうだったのだろう。

「まず、往年の名物企画『突撃!隣の晩ごはん』を復活させ初日に放送した『家族に内緒!いきなり隣の晩ごはん』、さらに翌日にも放送した『隣の昼ごはん』は企画意図が分かりませんでした。リスペクトもないならやらなくてもよかったと思います」(同)

グタグタだった「隣の晩ごはん」

 元祖の「隣の晩ごはん」は、落語家のヨネスケが巨大なしゃもじを持って夕飯時の一般家庭にアポなしで飛び込み、あわてふためく姿や自慢料理などを映し出すという企画だ。だが、今回は家族の一人が事前に応募するというものだった。

「初日の『晩ごはん』は宮川大輔とアンタッチャブル・山崎弘也が担当で、2日後に解体されるという4世代にわたる大家族が集結するお宅にお邪魔しました。しかし、80年代に人気だった企画ですから、今の子どもたちは知りません。彼らは宮川とザキヤマが持ち込んだ巨大なスプーンで遊びはじめ、グダグダのまま中継は終了しました」(碓井氏)

 翌日の「昼ごはん」は宮川と内村、SixTONESのジェシーが担当したが、こちらも数日後に家を解体するという家族だった。

「事前に募集したにもかかわらず、似たような家族を選んでしまいました。作り手のレベルが知れます」(同)

「24時間テレビドミノチャレンジ!」では芸人を使いすぎという。

「小学生親子3000人が作った巨大ドミノですから、ドミノだけで楽しめます。にもかかわらず、体中を真っ赤に染めたオードリー・春日俊彰が体を滑らしてドミノを倒すなど、ところどころに芸人が出てくる必要があったのか……」(同)

 逆に楽しめたのは「石原家4兄弟がゆかりの地を巡る旅」や「中村玉緒 勝新太郎 ちょっと不思議な夫婦の物語」だったという。

第50回を前に

「今年のテーマは家族でしたから、重くなりがちな構成の中でこれらの企画はほどよいスパイスとなっていました。特に玉緒さんと勝新さんの物語は、ナレーションに勝新さんの付き人だった松平健を起用したのがいい演出だったと思います。見ていて元気をもらえる企画でしたね。『24時間テレビ』の家族は、障害を持つ家族ばかりでなくてもいいと思います」(碓井氏)

 勝新は最期、病に倒れたが、“お涙頂戴”にはなっていなかった。

「“感動の押し売り”に対する拒否反応が強まっているのだと思います。もちろん視聴者は、困っている人を助けること自体を否定しているのではありません。病気や障害を抱えた人の映像で安易に感動へと結びつけようとする、そんなテレビ的な手法は必要なのかという本質的な問いがあるのです」(同)

 そして2023年に発覚した系列地方局員による募金の着服事件も尾を引いているという。

「お金を扱う側の信用が曖昧なまま、募金活動が継続されています。日テレ側は忘れたいかもしれませんが、視聴者は憶えていますから」(同)

 今回のチャリティーマラソンのゴール直前、寄附金の着服に抗議するプラカードを持った男が乱入したのもそうした現れだろう。無論、誉められた行動ではないが……。

「そのマラソンもゴール時は数字が稼げるものの、チャリティーマラソンという企画自体が時代とズレてきているのではないでしょうか。幸い今年は酷暑の中を走ることにはなりませんでしたが、ランナーが苦しむ姿を見て感動し募金するという構図が、なぜチャリティーなのか?--そのような価値観の変化から乖離しているように思います」(同)

 来年、「24時間テレビ」は50回目を迎える。

「大きな節目であり、区切りの年です。“24時間生放送”という1978年にスタートした長寿番組のコンセプトを、ゼロベースで再検討してもいい時期だと思います。視聴者はチャリティーそのものを否定しているわけではありません。旧来のテレビ的な手法で感動を仕立てるのではなく、募金や福祉を願う気持ちにどう応えるか、真摯に考える必要があると思います」(同)

デイリー新潮編集部